ちびくまスケッチ(2004年11月)


11/1

音楽会の練習が始まって2週間が経ちました。私たちの住む市では、毎年市内の全小学校の4年生が一堂に集まる、「連合音楽会」があります。音楽の先生にとっては、ある種学校対抗の音楽コンクール(順位がつけられるわけではありませんが)のようなものなので、自然に4年生の指導には特に熱が入ります。

音楽専科の先生は、今年他の学校から転勤してこられたばかりですし、前任校でも厳しい指導で有名だったということなので、ちびくまがついていけるかどうか密かに心配していたのですが、学校での練習ではちびくまも頑張っているようです。そのストレスゆえに、家での生活が大きく荒れる、ということも今のところ見られません。

でも、そろそろ疲れてきたのかな、と思うようになりました。「おかあさん、抱っこして」という要求が非常に増えてきたのです。ちょうど、小学校に入学したばかりの頃、学校から帰宅するとあとはずっと抱っこをせがんでいた時期がありましたが、それほどではないにしろ、ここ数年なかったほど、私にそばにいて欲しい、抱っこして欲しい、という感じになってきました。

連絡帳にそのことを書くと、障担からは「学校ではむしろ様々な面でとてもしっかりしてきた、と感じていますが、お家でしっかり充電している分、学校で頑張れるんでしょうね」とのお返事。

まあ、ちびくまの甘えをしっかり受け止めていくのは、母だからできるお仕事かもしれません。先生もわかっていてくれることですし、家では少しのんびりペースで暮らしていこうかな、と思っています。

11/6

夕食の時のこと。ちびくまが「ごはん(おかわり)ちょうだい」と言って茶碗を差し出しました。ところがちょうど私は台所で鍋を火にかけていて、手が離せなかったのです。それを見て、夫がひょいと立ち上がってちびくまの茶碗にご飯をよそってくれました。

ところが、ちびくま「うわああああ!」と大パニック、大泣き。
ちびくまの中ではどうやら「ご飯はお母さんがよそってくれるもの」ということになっていたようです。それを「勝手に」父がやってしまったので、彼の秩序が崩れてしまったということらしいのです。日頃帰りの遅い夫がちびくまの食事に手を貸す事はめったにないので、私も今まで気がつかなかったのでした。

「お父さんが入れたらだめなの?」と本人に尋ねると、泣きじゃくりながら「だめなの〜!」…やっぱり。もちろん、こういうときに、「お父さんが入れてもお母さんが入れても、同じご飯でしょう」なんて説得は、全く無駄なのです。彼にとっては「同じご飯」ではないのだから。

しかたがないので、本人が見ている前で、父親がよそったご飯を取り除き、私が改めておかわりをよそうことで、納得していただきました。(笑)
さっきまで泣き喚いていたのは誰だったの、というくらいあっさりと立ち直ったちびくま、にっこり笑って、「おかあさんのいれたごはん、おいしいね」ですって。(^_^;)


11/8

今年の音楽会、ちびくまたち4年生の演目は、二部合唱とリコーダーの二重奏と合奏の3曲。今日、学校で合奏の楽器を決めました。

ちびくまは、なんとオルガン担当。毎週通っている教育大学でのセラピーにキーボードの練習が含まれていて、ちびくまも自信を持っていることを知っている障担が、障級でちびくまにオルガンを練習させて、音楽の先生にテストしてもらったところ、OKの返事がもらえたのでした。

他のオルガン担当と同じように「テストを受けて」オルガンに決まった、ということは、ちびくまのプライドをいたく刺激したようで、練習に対して、これまで以上に熱心にとりくむようになったそうです。

決して「できること」が多いわけではないちびくまですが、モチベーションのベクトルが対象にぴったり合った時の伸び方は、目を見張るようなものがあります。「みるみる上手になるので、こちらがびっくりしました」とは障担のコメントでしたが、先生、あなたが上手に火をつけてくれたのですわ(笑)。

ところで、今日は、ちびくま、歯科デビューの日でもありました。私が現在かかっている歯医者さん、特に障碍のある子を診ておられるわけではないのですが、なんとなーく、ちびくまと相性が良さそうかも、と感じて、障碍のことを話して診てもらえないかと相談したところ、偶然にも、今回の学校での検診でちびくまを担当されていて、「たぶん大丈夫でしょう。一度連れていらっしゃい」と気持ちよく言っていただけたのでした。

ちびくまは緊張でがちがちでしたが、治療椅子の横のモニターには大好きな電車のビデオを映してもらい、ちょっとリラックス。母の予想通り、ドクターの穏やかな話し方の指示に素直に従って、泣く事も暴れる事もなく、無事口の中を見てもらえました。

結局、奥から2本目の乳歯に虫歯が見つかったのですが、もうその手前の歯が抜けていて、後1年ほどで抜けるかもしれないことと、やはりちびくまの口内過敏と聴覚過敏とを考えると、トラウマを与えずに削る治療をすることはちょっと難しいのでは、ということで、進行止めを数回に分けて塗ってもらって様子を見ることになりました。

当人は「ちびくまくん、はいしゃさんにいってもなかなかったよ。大きなお口をあけてみてもらったの。えらかったよ」とご満悦。でも、とっても疲れたのでしょう。家につくなり、爆睡してしまいました。


11/10

明日はいよいよ連合音楽会本番。今日は午後から障担がちびくまたちを会場の下見に連れて行ってくれ、舞台の立ち位置まで確認させてくれました。ちょっとしたことですが、親が要求しなくてもこうしたひと手間をかけてくれるのは、毎年自閉の子どもをこうした行事に参加させている学校ならではで、ありがたいことだと思います。

最後の仕上げとばかりに、ここ数日は1日何時間もたちっぱなしでの練習が続いています。さすがにちびくまも疲れがピークに達してきたようで、帰宅後は「きょうはつかれちゃった」とごろごろしていることが増えました。

でも、これまでずっとできなかったリコーダーの指使いができるようになったり、長時間の練習でも頑張って周りの子と一緒に参加したり、とちびくまなりの成長、成果も出てきているようです。

なんとかこの頑張りがいい感じの実を結んで欲しいものです。


11/11

今日は連合音楽会本番。市民会館に、いろいろな学校の子どもが一堂に集うので、どうかな〜、と思っていましたが、昨日の下見の効果もあってか、終始落ち着いて行動でき、本番もバッチリだったそうです。

春に他校に転任された音楽の先生や、地元のF小の障担や交流級の子供たちにも声をかけてもらい、嬉しそうだった、とのこと。

まあ、これで1つ大きな行事が片付きました。あとは20日の学校での音楽会まで、もうひと頑張りというところです。

11/15

ちびくま、2回目の歯科受診でした。前回全く怖い目に合わなかったので余裕が出来たのか、今回はだいぶリラックスした様子。

スムーズに診察台にのって、口を開け、進行止めを塗ってもらって、処置終了となりました。「ちびくまくんは、これで終わりました」と受付でにこやかに言ってもらったちびくま、珍しく大きな声で「ありがとうございましたー!」と叫ぶなり、一目散に外へ。「もう完全に『終了』モードですね」と受付の人の笑いを誘っていました。

帰宅後は「ちびくまくんは、はいしゃさんがおわったの。もういかなくていいのよ」ときっぱり宣言。また歯医者通いにならないように、歯みがきをがんばらなくては(笑)。

11/17

今日は音楽会の通し練習の日でした。
「リコーダー、オルガンの演奏もばっちりですし、途中での移動も全て自分でできていて、介助がついていないといけないところはありません」と障担が断言してしまうくらいの出来だそう。
「本番をお楽しみに!」と言っていただきました。

夜、おもちゃのカタログをじーっと眺めていたちびくま。
「ちびくまくん、音楽会の練習を頑張っているし、もうすぐお誕生日だし、クリスマスもあるから、欲しいものがあったら、お父さんにお願いしていいよ」と言うと、少し考えてから、父のところにカタログを持っていき、
「おとうさん、ちびくまくんは、クリスマスにこれをもらいます」(笑)

これまでなら、「どれが欲しいの?」と水を向けても「いい。いらない」と言うばかりだったので、ちびくまが自らプレゼントをねだったなんて、これがはじめてかもしれないです。

夫は「そうかそうか。お父さんが買ってやるぞ。楽しみにしてろ」と相好を崩しておりました。

11/20

いよいよ音楽会当日。
ちびくま、朝から「きょうは、おとうさんとおかあさんにえんそうをきいてもらうんだね」と何度も確認しながら出かけていきました。

1年生のころは、舞台に上がる前からちびくまがどこにいるかすぐわかるくらい目立っていたのに、今年はもう、どこにいるのか少し探すほどになってしまいました。

リコーダー奏は、時々指づかいに集中しすぎて口が離れたりしていましたが、指づかいはバッチリ。合唱は、小さく口を開けてかすかに歌っていたようです。合奏では、オルガンのパートを一生懸命弾いていました。
演奏が終わった瞬間の笑顔から察するに、本人にとっても満足のいく出来だったようです。

「ちびくまくん、おんがくかい、すごくがんばった。じょうずにできた」の言葉どおり、私たちもびっくりするくらい、「ふつう」な我が子でした。ちょっと頑張りすぎじゃないの?そんなに頑張らなくてもいいんだよ、と少し切なくなるほどに。

11/22

今日は月曜ですが、音楽会の代休で学校はお休み。
ちびくまには、長い間練習を頑張ってきたご褒美に、新しくできたファミレスでお昼ご飯を食べようね、と約束していました。

朝から「おかあさんと2人で***でおひるごはんをたべるんだね」と楽しみにしていたちびくまだったのですが、いざ店につくと、耳を塞いでフリーズしてしまいました。昼食時のファミレスの喧騒と、BGMの組み合わせが耐えられなかったようです。自宅や学校でこういう場面に出くわす事はめったにないので、こういうことがあると、ああ、やっぱりこの子は感覚が随分違うんだな、と見直す機会になります。

「このお店で食べる?それともやめて、他のお店にする?」と尋ねると「やめとく。ほかのおみせにする」ときっぱり。結局、ちびくまが「ここにする」と選んだのは、セルフサービスのうどんのお店だったのでした。

カレーうどんを一杯食べて、駅前でバスを見て、「おんがくかいをすごくがんばったから、レストランでカレーうどんをたべた」とご満悦のちびくま。あんなに頑張ったのに、安上がりでごめんよ、と心の中で手を合わせた母だったのでした。

11/23

昨日まで元気そのものだったちびくま、今朝がたから急に咳をし始めたな〜、と思っていたら、昼過ぎには咳き込んだ拍子に吐いてしまい、その後断続的に何度も嘔吐を繰り返しはじめました。吐き気のため、みるみるうちにぐったりしてきたのを見て、これはいけない、と休日診療の小児科へ連れていき、吐きどめの座薬を処方してもらいました。

熱は微熱程度、お腹の風邪でしょう、とのことですが、さすがに笑顔も出ないほど生気のない我が子の姿は何度見ても慣れるということがありません。
ぐったりと力なく眠ったちびくまの手を握って、おでこをくっつけて添い寝をしていると、ちびくまがもっと強く抱いていて、というように、私の腕を自分の体に巻きつけます。その仕草が、またなんともいとおしく、可愛く思えてしまうのでした。

早く元気になってね。

11/24

座薬を入れて吐き気はおさまり、熱も下がったのですが、さすがに丸1日何も食べていないので、今日は学校をお休みしました。

今日はいつものかかりつけの小児科に行くか、それとも昨日診て貰った遠くの小児科に行くか、と本人に尋ねると、「○○○クリニック(昨日行った小児科)に行きます!」と即答。かかりつけの先生もちびくまに色々と配慮をしてくれる、親切な女医さんなのですが、昨日診てもらった先生も、顔や体型や話し方が、ちびくまの好きそうなタイプだと思っていたら、やはりあたりだったようです。

やはり少し風邪の症状が見られるということで、今度は風邪薬をもらって帰ってきました。医院を出ると、隣接する幼稚園から通園バスが出発するところでした。このバス、私たちの家の近くも走っているのですが、うさぎ型とカメ型の2台があって、ちびくまの大のお気に入りなのです。
もちろん、ちびくまは大喜び。満面の笑顔で中を覗き込むちびくまに、運転手さんが「にいちゃんもいっしょに乗るか〜?」と話かけるほど。

思いっきり元気に「ばいばーい!」と手をふり、「おかあさん、○○○クリニックにいって、おなかもしもしして、おくちあーんして、おくすりをもらって、うさぎさんとかめさんのバスをみたね」とすっかりご機嫌なちびくま。
夕食からは食欲も回復してきました。明日はもう大丈夫かも。

11/25 

熱も下がり、食欲も戻って、今日から登校、と思っていたのですが、当の本人は朝から「まだしんどい。学校にいきたくないです」と言い張ります。まあ、普段なら朝起こしても起きない時に「じゃあ、学校はお休みする?」と訊くと「おやすみしない〜!」と慌てて布団を飛び出してくるような子なので、あまり心配しないで、もう1日ゆっくりさせて様子を見ることにしました。

でも、朝から食欲もりもり、ぴょんぴょん跳ね回ってパソコンをしている様子は、どう見ても体の方は完全に回復しているようです。それで、「がっこうにいくのはしんどい」のは本当だけど、それは心理的なもののほうなのではないか、と思い当たりました。

昔の、言葉もほとんどしゃべらなくて、障級以外では表情も硬く、耳ふさぎをしたり、独り言を言ったり、と「いかにも自閉症」だった頃には、誰も彼に無理な頑張りを強いる事はなかったのですが、今のように、本人が自ら「みんなと同じように」と頑張るようになってしまうと、傍目には「きちんとできているのだから、あまり特別扱いしないほうがいい」となってしまうようなのです。それどころか、「ここまでできているのだから、もうちょっと頑張れるのではないか」という先生の「欲」まで刺激してしまいます。

もちろん、障担や介助の先生は彼が「今でも交流に行く時は、障級に居る時よりずっと頑張っている事」を理解してくれていますが、「ありのまま」のちびくまと日頃接する機会の少ない交流や専科の先生には、どうしても「あまり過保護にすると伸びないのではないか」と感じられるようです。「高機能」とはいえないちびくまですが、こういうところは、やはり周囲に高機能自閉症と同じ知識や配慮を求めないといけないのです。

本人が周りを意識し、頑張りがきくようになった分、そうでなかった頃とはまた別の配慮が必要になってきたのかもしれません。

11/26

今朝も「学校にいくのはしんどいです。おやすみしたい。行きたくない」と言い張るちびくま。でも、体の方はもう完全に回復しているし、母もそうそうパートの仕事を休み続けるわけにはいきません。

そこで、「ちびくまくんは、なんのお勉強がしんどいのかな。しんどい時間はお休みにして下さい、って、連絡帳に書いておいてあげるよ」と訊いてみると、ちびくまは、「こくごとさんすうと、としょと、きゅうしょくと、かいものがくしゅうはやりたい。ずこうとマラソンがいやなの」

ははあ、と思いました。マラソンというのは、来月上旬のマラソン大会のための練習。今日が今年初の練習の日なのです。そして、絵を描いたり、工作をしたり、という創作・製作系の課題が苦手なちびくま、2時間連続の図工があまり嬉しくないのは想像に難くありません。

そこで、その旨を連絡帳に書いて、「体の疲れというより、2学期になってからずっと交流の子供たちにペースを合わせて頑張ってきたことへの、心理的息切れのように思います」と伝え、本人には「どうしてもしんどかったら、お母さんが迎えに行ってあげるから、K先生に電話してもらいなさい」と言い聞かせて送り出しました。ちびくまは、「すこししんどいけど、がんばってきます」と言って送迎バスに乗り込み、結局6時間目が終了して私が迎えに行くまで、学校で過ごすことができました。

障担からは「今学期本当によく頑張っていますから、音楽会が終わってほっとした途端に、どっと心身の疲れが出た、というところなのかもしれませんね。今日から、少し交流を減らし気味にして、のんびりペースを心がけてみます」とのお返事でした。

それが通じたのかどうか、夜、「しんどかったら、また来週お休みしてもいいよ」と言ってみると、「もうおやすみしない!しんどいのなおった!」と宣言しておりました。良かった良かった。

11/30

今日は、地元F小の全校おたのしみ集会に招かれています。
昨年も同じ内容のものがあったのですが、全く「お客さん」扱いだったために、ちびくまはかえって何をしていいかわからなくて、混乱するばかりだったので、今年はきちんと時間を決めて仕事の割り当てもしてもらいました。

そのせいか、今年は自分の持ち場をしっかり守って、それなりに充実した時間が過ごせたようです。が、その後「自由に遊んでいい時間」になると、ひととおり見てまわった後は、「もう結構」という感じになってしまい、早々にM小に引き上げることになりました。「どうぞご自由に」というのが自閉の子にとってはありがたくない、というのは、なかなか実感としてわかってもらいにくいことのような気がします。

M小に帰ったちびくまを待っていたのは、音楽のリコーダーテスト。「オルガンが上手なのはわかっているから、リコーダーも聞かせて」と音楽の先生におだてられて、頑張ってきちんと吹けたそうで、「とても上手に吹けたそうなので、お家でも誉めてあげてください」と連絡帳に書いてありました。

そこで、「ちびくまくん、リコーダーとっても上手だったんだって?えらかったね」と話し掛けると、ちびくまは何故か憮然とした顔で「おんがくかいはおわった!」

どうも「リコーダーの練習を頑張ったのは音楽会のためだったのに、もう音楽会が終わった今、なぜまたテストをされないといけないのか」ということのようです。ごもっとも(笑)

でも、納得はできなくても、先生がそういい、皆がやっているのなら、自分もやろう、という気持ちが出てきたところが、彼の進歩でもあり、これから私たち周りの者が気をつけなければならない点とも言えそうです。




ちびくまファミリーのホームページへ戻る「ちびくまスケッチ」目次へ戻る