ChildFindのしくみ

ここでは、実際にちびくまが障害児教育を受けるに至るまでの手続きをご紹介します。

School Districtへの申込

Multidisciplinary Evaluation(総合発達検査)

Recommendation(検査結果の告知と今後の方針提案)

IEP(Individual Education Plan)の作成

スクールディストリクトへの申込

人には勧めながら(笑)自分では電話をする勇気がなかった私は、担当のschooldistrictのホームページを探し出し、そこに書いてあるメールアドレス宛てにメールを送りました。内容は「子供の発達が遅れて心配している。特に言語面と社会面が遅れている。必要なら検査や訓練を受けたいと思っているがどうしたらいいか」ということでした。

2日後に担当者から電話が入りました。彼女の説明では、近くの小学校で専門家チームによる発達検査が無料で受けられ、その結果必要と判断されれば、必要な訓練は無料で受けられる、まずは問診表を送付するので記入して送り返して欲しい、返送され次第、検査の日取りを決める電話をする、ということでした。

翌日、すぐ問診表が送られてきました。妊娠期間、妊娠中の異常の有無、出生時の状況から始まって、これまでの発達歴、既往症、アレルギーの有無、何ができて何ができないか、ある状況におかれたときにちびくまがとる行動などについて、かなり詳細にわたる質問票でした。母子手帳がなかったら記入が難しかったかもしれません。改めてちびくまのこれまでを振り返る良い機会でした。また、ちびくまの語彙をしらべるためのマッカーサー式質問票というのが同封されていたのですが、どこでどうして手に入れたのか、なんと日本語版が送られてきて、担当者サイドの気配りが感じられました。

問診票を返送後、担当の方から再度電話があり、検査日が9月25日に決定しました。日本語の通訳が必要かどうかをきかれたので、お願いします、と言っておきました。

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Multidisciplinary Evaluation(発達検査)

検査はまず、School District嘱託のaudiologist(聴覚検査士)のオフィスでの聴覚検査から始まりました。ちびくまは「音が聞こえたら手を挙げる」というような指示には従えないので、幼児向きの検査法が取られました。検査ブース内のスピーカから音が出て、子供が音のする方を見ると、おもちゃ(シンバルを持った熊)が動き出す、というものでした。このおもちゃは、「音のする方を見たご褒美」ということらしいのですが、ちびくまは最初の検査でこのおもちゃが動くのを見た途端、大パニックを起こし、何とがブースから脱出しようと大暴れを始めました。床にひっくり返るわ、泣き出すわで結局検査は継続不能に…。ただ、最初にきちんと反応したこと、これまでの健診等で耳の聞こえが問題になったことがないこと、普段から小さな音にも敏感に反応し、テレビやCDなどに合わせて歌をうたったりすることから、聴覚には問題がないのではないか、との判断になりました。

次に、場所をW小学校に移しての総合発達検査となりました。Multidisciplinary Evaluationとは、専門分野を異にする複数の専門家がチームとなって対象児童を検査し、その総合結果によってその子の持つ障害や必要なサービス、逆に教育に利用できる得意分野や長所などを探しだすという検査の仕方です。ちびくまの場合は先に提出してあった問診票の結果から、心身障害に詳しいスクールナース、心理学者、SLP(speech-language pathologist;言語療法士)、OT(occupational therapist;作業療法士)というメンバーで構成されていました。

場所は小学校内の(!)運動療法室で、OTがちびくまとおもちゃで遊びながら、感覚や運動機能などをチェックし、他の検査官はその様子を観察する傍ら、あらかじめ用意してある質問表を使って、両親から聞き取り調査を同時に行う、といったやり方でした。質問は心理学者のS先生が代表して行い、他のスタッフがメモをとっていました。通訳の方はお願いしてあったものの、あまりに質問が多岐詳細に亘っていたうえ、ひとつひとつの質問が簡単にイエス・ノーで答えられる感じではなかったため(例えば「お子さんはあなたに愛情をどのように表現しますか?」とか「自分の考えがあなたにうまく伝わらないとき、お子さんはどのように反応しますか?あなたはどのように反応しますか?」など)、通訳を介して言うのがもどかしくなり、ほとんどは英語で直接応答しました。うまく伝わったか心配でしたが、結果が予想どおりだったところを見ると、一応わかってもらえたのでしょう。英語をしっかり勉強しておいてヨカッタ、と思いました。Evaluationのときに通訳をつけてもらうのは権利として保証されているようですが、事情が許せば、その子供のことを良く知っている人にお願いするのがいいかもしれません。

時間としては2時間ちょっと、メンバーはみんなフレンドリーで、検査をしてやるぞ、というような威圧感は全く感じませんでした。OTが思わず、といった感じで口にした“Oh, he is so cute!"の言葉に、親ばか夫婦はすっかり嬉しくなってしまいました。何より良かったのは、ちびくまが検査の間中ご機嫌で、知らないお姉さんやおじさんがおもちゃのいっぱいある部屋で一緒に遊んでくれた、という感じで過ごせたことです。最後に数が1から100まで書いてあるボードを見つけ、1から順に読み上げ始めました。100まですらすらと読み上げたときには、さすがの検査官たちも“Good job!"と拍手をしてくれ、大得意のちびくまでした。

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心理学者の再検査

しかし、肝心の検査のほうは、というと、ちびくまが口頭での指示にほとんど従えなかった為、標準テストはまったく判定不能、という状態でした。そこで、日を改めて今度は心理学者と1対1で検査をしたい、という申し入れがあり、2日後にもう一度W小学校へ出向きました。

場所は小学校内にある彼のオフィスで、ということで、かれが小学校に常駐する心理カウンセラーであることがわかりました。

さて、今回は心理学者のS先生とちびくまが小さな机をはさんで向かい合って座り、S先生が出す課題にちびくまが答える、というやり方ですすめられました。言葉での指示には従えないので、先生がお手本を見せ(同じ色のものを選ぶ、積み木である形を作って見せる、など)それをちびくまが真似る、という方法です。ちびくまはじっと座っていられなくて、何度も席を立ってしまうのですが、なんとか少しテストらしいことができました。

その後、ちびくまがいつも家で遊んでいるおもちゃでの遊び方を見てもらう、ということで、持参したおもちゃを出しました。木製の簡単なパズルと、プラスチック製の文字・数字です。ちびくまは慣れたおもちゃということもあり、あっという間にパズルをしあげ、文字をつかって、英単語を作りはじめました。S先生が2桁、3桁の数字を作って見せると、ちびくまは躊躇なく英語で読み上げ、とても得意そうでした。

ではこれで、というところになって、S先生に「お母さんはお子さんがHyperlexiaではないかと考えている、とご主人から聞きましたが、どこでHyperlexiaを知ったのですか?」と訊ねられました。実は「こういう障害ではないかと考えている」というと、親の先入観として嫌がられるのではないか、と思い、私はできるだけ観察的内容のみを答えるようにしていたので、ちょっとビックリしました。「インターネットで情報検索していて偶然みつけました。その説明があまり息子のことをピッタリ言い表しているので、そうではないか、と思ったのです。ですが、検査官の皆さんのご意見は、できるだけ先入観を持たずに受け容れたいと思っていますから」と答えました。

すると、S先生は「まだ他のメンバーと結果について話し合っていないので、あくまで個人的見解ですが」と前置きして、「お母さんの考えは正しいのではないかと思っています」と言い、書棚からいくつか専門書を取り出しました。「ハイパーレクシア協会の立場は、Hyperlexiaは自閉症に似ているが別の症候群であるということですが、私もこの立場を支持しています。他には、自閉症の1タイプとしてとらえる見方、単に自閉症の子供に見られる特殊な能力の一種であり、それに症名をつけるべきではない、といった意見もあります。Hyperlexiaはまだ正式に医学界で認識された症名ではないのです。ただ、私たちは実際に現場で毎年Hyperlexiaの子供たちに出会っています」ああ、やっぱりそうだったんだ、今気がついて良かった、という気がしました。

時間的には1時間半ほどでしたが、ちびくまは終始ご機嫌でS先生が大好きになったようでした。私も、S先生の専門家気取り(アメリカでは“Psychologist”(心理学者)と名乗れるのは心理学博士号の所持者のみ)の無い、フランクな態度と丁寧な説明にはとても好感を持ちました。

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Recommendation(検査結果と今後の方針)

最初の検査から1週間後の10月2日、同じくW小学校で、Recommendationをする、と検査の時に言われていました。Recommendationという意味があまりよくわかっていなかったのですが、要は検査結果を親に告知し、今後どうするかについて専門家チームの提案を伝える、という機会だったようです。

まず、OTから「スプーンやクレヨンが持てない、などの問題もありますが、他の身体機能についてはやや遅れている程度で特に大きな問題はないと思います」という説明があったあと、SLPから(当日S先生は欠席)心理面と言語面の検査結果について説明がありました。ちびくまは言語面では1歳3ヶ月から1歳6ヶ月レベル、社会性も1歳3ヶ月レベル、身辺自立は1歳半レベルで、かなり発達が遅れていること、しかし、知能検査でのパフォーマンス、(スコア自体は2歳レベル)文字や数字当のパターン認識力から判断して、知能的には標準レベルかそれ以上であると考えられること、現在使われている精神科の診断基準(DSM−W)ではPDD―NOS(他に区分されない広汎性発達障害)にあたるということでした。「このチームの意見を言わせていただくと、お子さんはあなたのお考えどおり、Hyperlexiaに間違いないと思われます。今後の方針ですが、この小学校に併設されている養護幼稚園(Developmental Preschool)への通園をお勧めします」と言われました。

「日本語幼稚園のほうは辞めろということなのでしょうか」と聞くと、「お子さんの障害の内容からいって、障害児保育の知識のない先生では適切な対応が期待できないのです。言語や文化的な理由ということなら、両方に通う、というオプションも考えられますが」とのことで、どうも「養護幼稚園に通わない」という選択肢は用意されていないような感じです。でも、今まで日本語だけで生活してきて、いきなり現地校それも養護幼稚園というのはあんまり極端な気がして、あまり気が進みませんでした。

それを察したのか、SLP(兼コーディネータ)は「今丁度クラスをやっていますから、見学していかれてはいかがですか?そのうえでここでは不適当だと考えられるなら、もう一度お話の機会を持ちましょう」と提案してきました。そこまで言われて断る理由もないので、とりあえずクラス見学をさせてもらうことにしました。

Developmental PreschoolはW小学校の1教室を使っています。SLPのDさんに付き添われて教室へ行くと、先生と4人の子供たちが外遊びから帰ってきたところでした。「今日は金曜なので、自閉症の子供のための特別プログラムをやっているんです。月曜から木曜まではこれに健常児が加わってもう少し賑やかです。お子さんは自閉症ではない(作者注:この学区ではHyperlexiaは自閉症ではなく、「発達遅滞」の1種であるとの立場をとっているため)ので、健常児同様月〜木の通園になります」との説明でした。

自閉症と言われましたが、私の先入観に反して、皆笑顔の可愛い、一見全く普通の子供たちで、先生はとても優しくかつ厳しく、子供たちを指導しているように見えました。教室は日当たりがよく、おもちゃや教具がきちんと片づけられ、小さなキッチンや洗面所、トイレまですべて教室内にあります。工作コーナーの片隅には2台のMacが鎮座ましまして、さすがアメリカ、という感じでした。

子供たちを帰宅のスクールバスに乗せたあと、先生は教室に戻ってきて教室内にある様々な小道具の意味を丁寧に説明してくれました。ちびくまはいっぱいあるおもちゃに夢中になって遊んでいます。クラスは健常児を交えた統合学級だが、指導する先生は障害児保育の専門家で、それにトレーニングをうけた助手(エイド)が2名つくこと、クラスにはもう1人日本人の男の子(健常児)がおり、とても良い子なのでいいお手本になること、担任の保育の他にセラピストによる専門訓練も教室内外で受けられること、など、私の不安をひとつひとつほぐすように丁寧に説明が続けられました。なによりいいなと思ったのは、先生自身が障害児をもつお母さんであること、日本語が少しできること、剣道や日本語を習っていて、日本の文化を高く評価し、尊重する姿勢が感じられたことです。

「私はもう20年近くこの仕事をしていますが、Hyperlexiaという概念があるのは去年初めて知りました。お母さん今まで1人で大変だったでしょう。私自身も障害を持つ子供がいますので、とてもよくわかります。これからは私たちがついていますから。お子さんが障害に負けずに幸せに暮らせる大人になるように、一緒に頑張って行きましょう」という先生の言葉に、肩に乗っていた重いものがすうっと溶けていくように感じました。先ほどまでの迷いも忘れ、言葉が口をついて出ました。「ここにこれて本当に良かった。やっと息子のための場所が見つかりました。宜しくお願いします」

後日になって書類を読み返して気づいたことですが、Recommendationの内容にどうしても納得が行かない場合、保護者は公費負担で別の任意の検査機関による再検査を請求することができます。この再検査の結果はSchool Districtは必ず考慮に入れなければなりません。それでも双方の主張が一致しない場合は、調停を申し立てることができます。

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IEPミーティング(個別指導プランの作成)

さて、ちびくまを受け容れてもらうにあたり、IEP(=Individual Education Plan)を作成してもらわなければなりません。地区によってもこの担当者はいろいろ違うようですが、ちびくまの場合は担任の先生と、直接指導にあたるOTとSLPがそれぞれの専門域についてEvaluationの結果をもとに作成する、ということでした。ただ、担任の先生からは「お子さんの様子をもっとよく観察してから書きたいので、一度保育時間内に来てください」と言われ、日を改めて丸一日親子でビジター参加しました。

IEPミーティングの当日はそれぞれの担当者と親が一堂に会して、子供の発達の現状と長期短期の到達目標について話し合います。原案は学校側から提示されますが、親は納得いかなければ書き直しを要求する権利もあります。また親の母国語が英語ではなく、理解が十分にできないと思われる場合は、学校側が、資料の翻訳、通訳の同席などを手配しなければならないと法律で定められています。移民の国ならではですが、日本でもこういう制度は必要かもしれないな、と思いました。

ちびくまのIEPは、先生の作成分は@トイレでおしっこができるようになるA2、3回のやりとりのある会話ができるようになるB簡単な指示で手を洗う、おもちゃを片づけるなどの日常の動作ができるようになる、OTの作成分は@クレヨンや鋏を持てるようになるAそれを使ってお絵描きや工作など、園での活動に参加できるようになる、SLPの作成分は@1ヶ月15語の割合でボキャブラリーを増やすA2語文、3語文が使えるようになる、とありました。特に異議もないのでその場で承諾のサインをすると、「いつから来ますか?」と訊ねられました。「ここまで来た以上、一日でも早い方がいいです」と答えると、「では明日からいらっしゃい」とのこと、今まで法律に則した手続きが必要だった為、時間がかかりましたが、それを超えると、アメリカのイージーゴーイングが顔を出した訳です。

こうして、翌日からちびくまは養護幼稚園に通うことになりました。

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