| ここではちびくまの通うプリクスールクラスについてご紹介します。
ちびくまの通う幼稚園は市内のW小学校の中にあります。本当は我が家はW小の校区ではないので越境になりますが、養護教育のできる公立幼稚園は限られている為、自宅から一番近く、かつ適切な教育が受けられる学校に入る仕組になっているそうです。中には1時間近くかけて通っている子供もいるそうですが、ちびくまの場合はすぐ隣の校区なので車で10分くらいです。プリスクールの子供は障害のあるなしにかかわらず、スクールバスで自宅前まで送迎してもらえることになっています。ちびくまは午前中通う日系プリスクールとの兼ね合いもあり、往路は私が車で送り、帰りはスクールバスという選択をしています。 W小学校では、各クラスを「○年○組」とか「○○学級」ではなく、教室番号で表しています。「403号」とか「504号」という具合です。ちびくまの通うプリスクールクラスには「おひさまの部屋」という名前がついています。 制度上は養護幼稚園ですが、隔離されたものではなく、W小学校に合計5学級設けられているプリスクールクラスに、普通の子供と一緒に通っています。ただ普通の幼稚園と違うのは、先生が障害児保育の専門家であることと、助手がついていて、大人1人あたりの子供の数が普通の幼稚園よりずっと少なくなっていることです。(例えば4才児の場合、普通の幼稚園なら先生1人に子供15〜20人が普通ですが、ここでは1対4ぐらいの比率になっています。)年齢別ではなく、下は3才児から上は5才児までの縦割りクラスです。 「おひさまの部屋」の子供は全部で11人、うちちびくまを含む3人が自閉症児です。私は自閉症児の親なのでこれを知っていますが、プライバシー保護のため、普通児(英語ではtypically-developing-children)の親には、、クラスには障害児もいる、というだけの説明のようです。ひょっとしたら他の心身障害を持っている子もいるのかもしれませんが、同様に私には知らされていません。 アメリカと一口に言っても広いので色々ですが、私たちの住んでいるあたりでは、障害を持つ子と持たない子を同じ教室で教育すること(統合教育;InclusionとかIntegrationという言葉が使われる)は、双方にとって多大なメリットがある、と考えられていて、幼稚園から高校にいたるまで、できる限り地区の普通校、普通教室に通えるようにされています。日本だと普通児の父兄から苦情が出そうな気がしますが、勉強ができるだけでは駄目で、弱いものをいたわったり、困っている人をたすけたり、地域社会に貢献したり、という行動が日常とれる生徒でないといわゆるエリート大学には入れない、という、アメリカ独特のシステムが貢献しているようです。日本でも是非見習って欲しいシステムではあります。 始めのうちこそ、子供たちは言葉も通じず訳のわからない行動をとるちびくまを遠巻きにしていましたが、いつのまにかちびくまのありのままを受け容れ、教室の移動に手を貸し、ゲームに巻き込み、先生の真似をしてちびくまにいろいろな言葉を教えようとしてくれます。日本のように、障害児を別クラスに入れておいて、限られた時間の「交流」をしているだけでは、ここまで密な関係はできないのではないかと思います。まして別の学校に行かせて、「障害のある人を思いやりましょう」と教科書で教えているだけでは本当の思いやりなど、できなくて当然でしょう。 ちびくまのほうでも誰が自分に良くしてくれるのかちゃんとわかっていて、そういう子が手を繋ぎにくると、視線は合わないながらもにっこりしてその子の名を呼びます。家で1人で遊んでいるときも、しょっちゅう「おひさまの部屋」の子供たちの名前を口にするのです。丸2年お世話になっている日系プリスクールの子供の名前を一度も口にしたことがないのを考えると、対照的です。日系プリスクールに特に問題があるという訳ではないのですが、結局は他の子供たちとの関わり方の密度が反映されているのでしょう。 カリキュラム自体は幼稚園とは思えないほどアカデミックです。1〜2週間ごとにテーマが決まっていて、そのテーマに沿った絵本や歌、工作やお絵描き、観察や実験をやっています。テーマは自然科学が中心で、たとえば「鳥の生活」「昆虫」「植物」「お天気」「虹と色のしくみ」「海辺の生き物」「昼と夜の世界」「地球と宇宙」といった具合です。その他に、それぞれ専門の先生がつく「絵本の読み聞かせ」「アート」「体育」、運動療法室での運動機能訓練(普通児も含む)があります。障害のある子のみを対象としたカウンセリングや作業療法、言語訓練といったセラピーも、特に個室で行う必要がない限り、教室にセラピストが来て一緒に遊ぶという形で行われています。 さらに、障害の有無にかかわらず、個々の子供の弱い分野を補い、強い分野を伸ばすために、先生や助手と1対1、または小人数で個別の課題に取り組む時間も確保されています。例えば、文字や数字は完璧だけれど、他の子供と遊ぶことができないちびくまと、言語発達や社会性は普通だけれどまだ字が読めない子供を2人組にして、2人で協力して文字や数字でできたパズルやゲームをやらせる、というような取り組みです。 それにおやつの時間と外遊びが加わって、一日2時間半のセッションは盛り沢山。子供たちはたいてい疲れきって、帰りのスクールバスの中でぐうぐう寝ています。
「おひさまの部屋」の子供たちはとても優しく、目の生き生きした子供に育っています。学校で皆と会ったとたん、「もうここではあんたには用はない」とばかりに、「おかさん、ばいばーい」とにっこり手を振るちびくまに、嬉しいやら寂しいやらの毎日なのです。
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