すうじだいすき〜おりこうちびくま〜


ちびくまを良く知る人に、ちびくまの特徴を一つ挙げて、と言ったら、必ず出るであろう答えが、文字と数字が大好き、ということでしょう。実際私の友人にはちびくまを「数字フェチ」と呼んでいた人がいます。(^^;;

かなり早い時期から、ちびくまは文字や数字に非常に強い興味を示していました。私がそれに気づいたのは2才の誕生日前後からですが、今になって思い返してみると、1才になるやならずやでその傾向は出ていた気がします。絵本をかなり長い時間じっと見つめていたり(その頃は絵に惹かれているのだと思い「まあなんという集中力」と感心していたものです)、積み重ねコップのおもちゃをいちいちひっくり返して裏の数字を確認していたり(おばあちゃんと「まるで数字読んでるみたいでおかしいねー」と笑って見ていました)、セサミストリートのアルファベットや数字のコーナーに狂喜乱舞してみたり(テンポが速いのが面白いのだと思っていました)…。

とにかく数字や文字のついたものを持たせておくと機嫌が良いのです。カレンダー、電卓、辞書、電話帳…。おもちゃもいわゆる教育玩具系が大好き。とくに3才の誕生日に買い与えたプラスチック製のアルファベットと数字のセットは、ちびくまが珍しくどうしても手を離そうとしなかったおもちゃの一つです。(これ以前にはフリーマーケットで見つけた大型の消防車、以降は数字の絵本があっただけです)そして今ではちびくまの生活に欠くことのできないおもちゃ兼コミュニケーションツールになっています。

これを買い与えてから、ちびくまは目にする英単語を綴って遊ぶようになりました。数字も3桁、4桁…。文字が足りないとそこは空けておいて、自分で「エー(A)」「さん(3)」などと言って補充しています。各文字1つずつではとても足りないので、もう1セット買ってやりました。するとどうでしょう。リビングの床に“NORTHWEST”“GOODBYE”などと並べてあるのです。何時の間にか3桁、4桁の数字も英語できちんと読み上げるようになっていました。それで、もう少し大きくなったらひらがなの勉強用に、と思って日本から持ってきてあったひらがなのマグネットを出してやると、こんどはそれで「げんきにおはよう」「おわり」「ごちそうさま」などと書き始めました。2才半くらいのときに、すでにこの子はひらがなをマスターしているらしい、というのはなんとなくわかっていたのですが、ある程度の長さのあることばを読み書きする力がそだっていることはこれではっきりしました。

普通の子供が言葉を覚える時は、まわりの大人が喋っている言葉を少しずつ真似しながら、覚えた単語を今度は組み合わせ直して、語彙や表現を増やしていくのだと思うのですが、ちびくまのスタイルはこれとは明らかに違っています。まず、視覚的裏付けがとても重要な役割をします。耳から聞こえた音と、目にみえる情報、たとえば絵、写真、文字などが結びつかないと彼の語彙としては定着しないようなのです。反対に一度定着した語彙は、コンピュータのデータベースのように整理されて、情報が出てきます。たとえば、ちびくまに三角形を見せます。すると、「さんかく、チョライアンゴー(triangle)、T-R-I-A-N-G-L-E」という答えがでてくるのです。彼の英語の語彙がスペリングで記憶されていることが、良く解る例です。

それから、言葉は文章のまま丸ごと記憶されていて、それを各要素に分解して使うことができません。英語では「ゲシュタルト・ラーニング」と呼ぶようです。たとえば、ちびくまがよく使う、「おかさん(おかあさん)、ジュース、ちょうだい」という表現ですが、これが「おとさん(おとうさん)」になったり、「ぎゅうにゅう」になったりすることはありません。「おかさん、ジュース、ちょうだい」彼にとってはこれが文章の最小単位なのです。養護幼稚園に行くと、ちびくまは「ハーイ、ミス・ローラ」「ハーイ、ジョニー」というように、先生やクラスメート1人1人の名を呼んで挨拶ができますが、初対面の人に会うと、なんと言っていいのかわからないようで、自分の知っている人で印象が近い人の名を適当に使ったり、「ハーイ」だけでごまかしたり、完全無視したりします。。

絵本やビデオの台詞もほとんど丸暗記してしまっています。ちびくまの大好きな遊びの一つに「大人に自分の真似をさせる」というのがあり、自分が暗記していることを「“○○”ゆって(言って)」とこちらにも言うように要求してきます。これが「“book”ゆって」「“28”ゆって」くらいのときはいいのですが、時々、「おかさん、“Zebras have black stripes and hooves" ゆって」「”1-800-○○○−△△△△“(TV等でずーっと前に見た電話番号)ゆって」とくると、こちらは頭を抱えてしまいます。ちびくまの発音はまだとても不明瞭でわかりにくいのですが、こちらが適当なことをいうと怒り出し、正確に言えた時にはとても喜びますので、彼の頭の中ではあるべき音声が正しく認識されていることがよくわかります。面白いことに、言語の発達に問題があっても、音の認識自体はきちんとバイリンガルになっているようで、英語の発音にはとても厳しく、親が発音をまちがえると、(母音やTHの音、LとRの違いなど)ぷんすか怒りながら訂正してくるのです。

HYPERLEXIAの特徴として、5才以前に特に教えることなく、単語や文章を読むことを覚える、というのがあるのですが、確かに、文字や数字の読み方の吸収の度合いは、他の情報の吸収の度合いと比べると、ものすごい差があるようです。今やちびくまはバンバン英単語を覚え(絵本、ビデオの字幕、幼稚園の掲示などかたっぱしから覚えてしまう)、3桁、4桁の数字を英語で正しく(アメリカ人式に)読み(2700をアメリカ人は“twenty-seven hundred"と読むということを一体何人の日本人が知っていることでしょう?)、発音はむちゃくちゃながら、一冊の絵本を1人で音読することが(暗唱という方が近いかも知れません(^^;;)できます。

もうひとつのHYPERLEXIAの特徴として、文字や数字の認知が優れている一方で、言われていることが理解できず、話すこともできない、という極端な言語発達遅滞を伴っていることがあげられています。ちびくまも、日本語でも英語でも言われていることはほとんど理解できないようです。ただ、記憶力が優れているので、「○○と言われたら、こうしなければいけない」という公式のようなものができていて、繰り返し聞く、シンプルな指示にはかなり正確に従えるようになってきました。たとえば、「すわって」「てをあらって」などです。ただ、物事を説明するとか、言い聞かせる、ということになると、1才児に理屈でわからせようとするようなもので、まるで手応えがありません。日系幼稚園では、先生が号令のように、「じゃー、これから○○しますよー」と声をかけていますが、このような声のかけ方ではちびくまの耳は通り過ぎてしまいます。ちびくまに聞かせるには目と目を合わせて(そうでないと自分もその対象になっているということが理解できない)、短くはっきりした言葉で話しかけないとだめなようです。こうしたアプローチの仕方は、自閉症に対するものとかなり共通するものがあります。

表出言語のほうも、相変わらず遅れが目立ちます。普通の子なら、まず1語から始まり、2語文、3語文…という具合に進化していくのでしょうが、ちびくまの場合は、物の名前を言っているだけの1語と、5つ以上の語からなるフルセンテンスが混在しています。言葉の使い方も、自分の欲求を満たす(「ジュースちょうだい」「おなかすいた」)など)という最も基本的な段階が多いようで、それに若干他人の注意を引く、自分の興味あるものを他人に示す、という次の段階が加わってきている、といったところです。自他の感情や周囲の状況を言葉で表す、といったところまではなかなか難しいようです。



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