そうじきこわい〜こまったちびくま〜

ちびくまが今この世で一番怖いもの、それは「掃除機」と「しまじろう(べネッセの幼児教育プログラムのマスコット)」です。悪いことをしているときに、「そんな事をしているとしまじろうが出てくるよ」と言うだけで、顔が恐怖に歪み、「しまじろう、ないない。しまじろう、ないない」と半泣きになりながら哀願してきます。

「しまじろう」がなぜそんなに怖いのかは謎ですが(「普通の子なら平気なものに対して恐怖感を抱いている」というのはHyperlexiaの基本的特徴のひとつに挙げられています)、掃除機のほうは、どうもそのハイピッチなモーター音が原因のようです。ONになっていなくても、存在自体が恐怖心を煽るようで、例えば日系プリスクールの教室に掃除機があったりすると、そこで凍ってしまい、「そうじき、ないない。そうじき、ないない」という哀願が始まります。我が家の掃除機はちびくま在宅時には触れることさえできず、また、いつも同じ場所に片づけておく必要があります。違う場所に置いておこうものなら、ちびくまの「そうじき、ないない」が始まるのです。

それ以外には換気扇、ヘアドライヤー、芝刈り機といった音を非常に嫌がります。音の大小は対して問題にならないようで、たとえば毛玉取り器のような、静かなモーター音にも耳を押さえて不快感を訴えます。自閉症の子供には同じようにモーター音を嫌がる子が大変多いようです。これは、自閉症児の聴覚プロセス系統に異常があり、普通の人には何でもない音が、非常に不快な音に聞こえるため、と説明されています。他に、蛍光燈を嫌がるとか、反対に蛍光燈をじっと見つめている、という視覚バージョンも報告されています。

味覚、触覚、平衡感覚においても、過敏であったり、過度に鈍感であったり、ということがあるようです。味覚の異常は偏食や異食、触覚や平衡感覚の異常は自閉症児によく見られる単純反復運動の原因と考えられているようです。

ちびくまの場合は偏食がすごいです。大好物はカレーライスとマーボー豆腐。ちびくまは味覚が鈍く、ハッキリした味のものを好んでいるのではないかと推測しています。他には、米飯、麺類が好きですが、おかずの類は卵焼きと餃子とチキンナゲットとトマトしか食べません。幼稚園で出されるおやつにもめったに手をつけません。 一時はポテトチップスやおせんべい、クラッカーといったカリカリなものしか食べないという時期がありました。これも食べ物のテクスチャーに対するこだわりが関係しているようです。そのわりに、石やティッシュ、輪ゴムなどは何度叱っても口に入れてしまいます。

自己刺激のための反復運動とは手をひらひらさせるとか、ぐらぐらゆれているとか、ぴょんぴょん飛び跳ねる、という単純な行動を意味もなく続けることで、ちびくまの場合は飛び跳ねる行動がとても気持ちいいらしく、特に2〜3才の間は暇さえあればぴょんぴょん跳んでおり、おかげで我が家はアパートの2階を追い出されてしまいました。今はだいぶマシになっていますが、それでも普通の4才児に比べると、かなりしょっちゅう跳んでいます。自閉症児は一般にトランポリンが好きだと言われていますが、ちびくまもその1人です。

自閉の子供の中には毎日同じ服を着たがる子もいるようです。ちびくまはそこまではいきませんが、新しい洋服、靴等には激しく抵抗します。洋服は一度洗ってから着せるとだいぶ良いようです。アトピーっ子であることもあり、ちびくまにはコットンのものしか着せていませんが、化繊やウールなどを大変に嫌がる自閉症児は多いそうです。これは触覚の障害に関係していると考えられています。この感覚を米国では最も有名な自閉症者の1人、テンプル・グランディン博士は「新しい服を着ると、まるで肌にサンドペーパーをかけられているようで、不快でしかたがない」というふうに記述しています。

ちびくまの場合、靴だけは新しい物を買っても絶対に履こうとしませんので、一度も履くことのないまま、お蔵入りした靴が何足もあります。最近は親もお利口になって、同じデザインでサイズの違う靴を何足も買ってストックしてあります。

人込みに出かけることも大変嫌います。アメリカならでは、という大型ショッピングモールなどにでかけると、耳を両手で覆って、「おうちにかえろう!」と叫ぶのです。滅多に場面に応じた発言がないだけに、「血の叫び」という感じがします。もう少し規模の小さなモールやスーパーでも、物の多さやあふれる広告など、視覚刺激が強すぎて興奮してしまうようで、走り回ったり、奇声を発したり、床にひっくり返ったりと、「誰がみてもおかしい子供」に変身してしまうのです。

こういうちびくまの姿に遭遇すると、精神的にも身体的にもがっくりきますので、最近は買い物はちびくまが学校に行っている間にひとりで行くか、通販ですませることにしています。遊園地、動物園などもちびくまは全く喜びません。

また、環境が変わることを極端に嫌います。部屋の模様替えなどしようものなら、泣き叫びながらもとの位置に戻そうとします。学校に行っている間に散らかったおもちゃを片づけておくと、帰ってくるなり「なんだこれは」とでも言いたげに憤慨しながら、元どおりに散らかしはじめます。おもちゃだけでなく、新聞・雑誌・書籍の類なども床一面に散らばった状態にしておかないと落着かないようで、我が家はいつでも足の踏み場もない状態です。ちびくまパパは「生まれてから一度もきちんと片付いた家に住んだことがないからじゃないのか?」などと珍しくスルドイ指摘をしてきます(笑)が、いつもきちんと片付いていないと気が済まないタイプだったら、ちびくまのような子供には耐えられないじゃないの、と自分を正当化しているズルい母(^^;; 。でも、万が一私の身に何かあって、よその人が留守中の家に入ってきたら、この家では一体どういう生活をしていたのか、と良識を疑われるに違いありません。自分の名誉のためにも、外では絶対に死ぬ訳にはいきません(笑)。

環境にこだわりがあるため、旅行もまず不可能です。一度、オレゴン州ポートランド(車で片道3時間程度)まで行ったことがありますが、車の中でこそご機嫌だったものの、ホテルに入るなり「おうちにかえろう!」と泣きはじめ、ずっとドアのところで「あけてー」「おうちかえるー」と泣いていました。(日本語のわかる人が近くにいなくて良かった(^^;; )食事もホテルのレストランに入るのは泣いて抵抗し、結局3食ともショッピングモールのフードコートでエセ日本食を食べる羽目になりました。オレゴン州はセールスタックスがないため、買い物天国と言われていますが、ちびくまが一緒では店に入ることさえできず、路面電車で市内を一周したのと、郊外の公園で遊んだ以外は観光らしきことさえできなかったのでした(涙)。

これらの同一性へのこだわり、というのは自閉症児には多かれ少なかれ見られるものですが、こだわりが強いというのは、それだけ知能が高く、自分が置かれた環境を正しく認識しているため、と見る説もあります。

それから、何かを他のものに見立てて遊ぶ、といった想像力も欠けていることが多く、ごっこ遊びができません。また、「セオリー・オブ・マインド」といって、他人が自分とは違う考えを持っているとか、違う感じ方をしているということが理解できないため、自分が何かをしたいときには、他人もそうだと思ってしまっているし、自分にわかることは他人もわかっている、自分に見えるものは他人にも見えている、と思ってしまいますので、知らない人には「わがまま」「自己中心」と映りがちです。

例えば、ちびくまが絵本を見ながら、その絵を指差したとします。私からはそれが見えないにもかかわらず、ちびくまにはそのことが理解できないので、期待した反応がないと怒ってしまいます。養護幼稚園でやったことでも同様で、自分が知っている歌は私も知っている、自分が見た物は私も見ていると思っているため、こちらがうまく対応できないと、怒ったり泣いたり大変なことになります。そのため、私はしょっちゅうクラス見学をさせてもらって、先生が今何をやっているのか情報を仕入れに行っています(笑)。

自閉症の子供は表面的には究極の自分勝手のようなものです。例えば小さい子が他の子を叩いたとすると普通は「そんなことをしたらお友達が痛いでしょう」「泣いちゃったでしょう」と言って叱ったりします。ですが、「他人が痛い思いをする」=「悪い」という公式は自閉症児には理解できないのです。自閉の子には理屈抜きで「人を叩いてはいけない」ことを繰り返し教えるしかありません。先生が「そんなことをする子は先生嫌いですよ」と言っているのを聞いたことがありますが、「悪いことをすると先生に嫌われる」=「嫌われないようにいい子にする」という公式も、同様に成り立ちません。良くてせいぜい「先生はあなたが嫌い」というメッセージになる程度でしょう。このあたりは、特に自閉性障害を持つ子に関わる先生方にはしっておいていただきたいことです。


「ちびくまの不思議な世界」目次へ戻るいっしょにねんね〜かわいいちびくま〜へ