いっしょにねんね〜かわいいちびくま〜

Hyperlexiaを単なる現象として見るか、自閉性障害の独立したサブタイプとして見るか、自閉症と似て異なる発達障害として見るかについては、見解の分かれるところです。私個人としては、ちびくまを見る限り、中枢神経障害によるコミュニケーション障害がある、という意味で自閉性障害の圏内ではあるが、狭義の自閉症(おそらく日本で「自閉症」とはこのこと)とは異なる存在なのではないか、という気がしています。

「ちびくまは(そして他の多くのハイパーレクシア児も)狭義の自閉症ではない」とする論拠で一番にあげられるのが、他人、特に大人との関わりかたが、狭義の自閉症児と量的質的にかなり違うということです。自閉症児は一般に外界の人間に対して表面的には非常に無関心です(本当に関心がないわけではなく、実は普通の子以上に敏感で繊細な子が多いのですが)が、ちびくまの場合は、ひとなつっこく、甘えたで、特に自分に関わってくれる人には、とびきりの笑顔とたっぷりの愛情でお返しをします。たいてい誰にでもニコニコ笑顔を振りまく、ハッピーな子供で、スクールバスの運転手さんたちの間でも「ハッピーガイ」「スマイリング・ボーイ」のニックネームを頂戴しているほどです。

また、「人に誉められたい」「認められたい」という気持ちが普通の子同様強いため、自分が得意なことは、人にやってみせよう、と一生懸命になりますから、その分関係がとりやすいのは確かです。親との関係がうまくとれない自閉症児の場合、親御さんの心理的負担は大変なものですが、その点、ちびくまは初心者向きといえるでしょう。

ここで断っておかねばならないのは、自閉症(狭義の自閉症児も含めて)の子供は、感情を持たないとか表さないと思っているかたが多いのですが、そうではない、ということです。自閉症児も、笑い、泣き、怒ります。親や可愛がってくれる人には愛情も感じています。ただ、その表現のしかたが社会的に妥当ではないので、自閉症について正しい理解がなければ、奇異に思えたり、不快に思えたりするということなのです。

これは文化の違いに喩えると理解しやすいのではないかと思います。欧米では特別な関係がない相手とでも抱き合ったり、頬にキスをすることがよくありますが、たいていの日本人にとって、これを突然されると、あまり気持ちのいいものではないのではないでしょうか。ですが、当然相手にしてみれば、あなたに嫌な気持ちにさせようとしているわけではなく、日本では特別な関係にない大人同士が身体的接触をする社会的習慣がない、ということを知らないに過ぎません。

自閉症児というのは、自分にしか通用しない社会規範をもっているようなもので、まわりからみれば笑うべきでないときに笑ったり、泣くべきではないときに泣いたり、体に触れるべきではない相手の体に触れたりするわけです。

これがちびくまの場合は、より、一般の人に受け容れられやすい形、つまり、「普通の子」らしい形で現れている、ということです。ちびくまは若い美女、中年男性とお年寄りが大好きで、これらの人には飛び切りの笑顔で接しますので、特に可愛がってもらえるようです。

反対に、子供同士の関係はほとんど取れません。よその子が持っている玩具が欲しくて近寄っていくことはあっても、「一緒に遊ぶ」ために近寄っていくことはまずありません。日系プリスクールのほうでは特にそれが顕著で、できるだけ他の子供との接触を避けているようですし、他の子供を名前のある人間として意識している気配もありません。養護幼稚園の方では先生の根気強い働きかけが効いているのか、他の子供に近くに来られても平気ですし、他の子供の名前もちゃんと認識しており、手をつないだり、顔を覗き込んだりしていることがあります。

自閉症の子供たちは、一見全く普通であることが多く、それでもじっと見ているとなんだかおかしいな、という感じがしてくるものなのですが、ちびくまの場合はこの「普通の子供に見える」度合いが非常に高いのです。年相応の会話は勿論不可能ですが、人との関係がある程度とれ、簡単な挨拶ができ、字が読め、数が数えられる訳ですから、余程きちんと知識のある人が見ないと、障害があるのではなく、ただ躾が悪く、わがままで聞き分けがない子供にしか見えません。自閉症児がたいていそうであるように、ひとつの事に集中できる時間が非常に短い(その割に自分が気に入るとものすごく長い間同じ事をやっていたりします)のですが、これもただ落ち着きがないように見えます。このせいで随分損をしているな(世間の目が厳しい)、と思うことがよくあり、「この子は障害児です。親の躾が悪いのではありません」と背中に書いておきたいな、と思ってしまいます(笑)。

反対に得をしたな、と思うこともあります。ちびくまには、所有の概念が理解できていませんから、おもちゃをねだられるということが殆どありません。どうしても気に入ったおもちゃを手から離そうとしないことが年に1〜2度ある程度で、それ以外の場合は、納得するまで触らせてやれば(アメリカのおもちゃ屋さんでは実際に触って遊べるようになっているところが多い)、それで気が済みます。また、「戦う」という観念がありませんし、「ごっこ遊び」をするだけの想像力がありませんので、私が苦手な、スーパーヒーローごっこや、戦いごっことは全く無縁なのです。いまだに「ピーターラビット」や「コロちゃん」といった私の好きなメルヘンアニメの世界で生きてくれています。嫌な事に抵抗することはあっても、他人を攻撃する手段として暴力を使うことはまずありません。

それに甘えたで、時折、特に訳もないのに「だっこして」といいながら膝によじ登ってきます。椅子に座って用事をしていると、背中にペッタリ張りついてきたり、絵本を「これよんで」と言いながら持ってきたり…。眠くなると、「いっしょにねんね」といって添い寝をせがみます。4才半になっても、まだ1才の赤ちゃんのようなのです。もちろん、発達が遅れているからなのですが、私としては、大変な反面、普通は3才までと言われる可愛い盛りを、普通のお母さんより長く楽しませてもらっているような気もしています。「おたくは大変ねぇ」と優越感に浸るように言われてムッとした時には、「でもその分うちの子ってお宅の子みたいにこまっしゃくれてなくて可愛いも〜ん♪」と心の中で言い返してすっきりしていたりするのです(笑)。


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