私は思ったことをその場で言葉にすることができない。
思うことがたくさん在りすぎて、単語が大量にわき上がり文章にならない。
ダイビングで知り合った友人が、言語療法士をしている。
患者は子供が多いという。
私が「失語症とか?」
と尋ねると、それは少ない、と答える。
彼女と話していて私の小さい頃の話になったとき、じっと私の顔を見て言った。
「それはね、たぶん、多動性障害だったと思うの」
今は便利なもので、私が経験してきたことに名前がある。
過食症、チック症
経験している時点では名前がなかったり一般的でなかったりしたので、私は単なる奇人変人だった。
今ならばただの「おびょうき」で済む。
多動性障害は、一説によると、脳の中に流れる電流が多すぎるのだそうだ。
生まれたばかりの赤ん坊は脳内に大量の神経が張り巡らされているがこれが、経験により使ったところは太く、使われないところは消滅していく。脳味噌の中が整理され、使いやすくなっていくというわけだ。
多動性のトラブルは、この整理整頓が為されず、ネットワークのラインが他の人より多く残っているため、一つの刺激から次々と不要な連想や動作が発生してしまう。
だから言葉が覚えられなかったり、文字が覚えられなかったり、記憶の混乱・混同が生じる。
また、嗜好が個性的すぎて周囲から理解されないのだそうだ。
集中力がなく、授業中走り回る。蚊と思うと、気に入ったことに対しては異様な集中を見せる。
私は言葉がしゃべれなかった。
文字が書けるようになったのはずいぶん遅い。
他の女の子達がナナホシテントウを捕まえて、かわいいからとチューリップの花の中に押し込むのを残酷だと感じ、アアブラムシがたくさんついたナノハナを手折って教室に入ったため騒ぎになった。小学校1年の時だ。
蚕をかわいいと思う。
チャボのためならばミミズを触るのも平気。
アゲハチョウの幼虫は大好きだった。
病気だったのか
だれかに病気だから、成長とともに直るのを待ちましょうと言って欲しかった。
あのころね。
今じゃなく。
まぁ、言ってもらってもそれでも一人で遊んでいたと思うけれど。