| 平成14年11月29日(金)18時〜20時 鹿児島大学医学部鶴陵会館小ホール 離島医療学シンポジウム第8回より 「離島医療の光と影」講師:T医師 |
| 今年になって、自閉症に関する医学的な論文の発表が相次いでおり、大脳の左側と右側の連絡部位の障害だとか、健常者の細胞と比べて細胞そのものが細く、密度が狭い(大脳皮質の微細構造であるミニ円柱が,健常者に比べ巾が小さくて数が多い)という、数字や視覚情報優位といった自閉症特有の症状を裏付けるような脳の神経細胞レベルでの障害の報告が外国の研究者の間で多くなされている。(詳しくは
T医師のHP『じゃじゃまるトンネル』へ)自閉症=脳の器質的な障害という今ではあたりまえの論理が科学的にも実証されつつある喜ばしい状況である。 その一方で近年O県の1医療機関において自閉症や多動、知的障害といった発達障害の領域においての脳神経外科治療が行なわれている。既に150例を超える子どもに実施されているにもかかわらず、そのエビデンス:Evidence(証拠。具体的には患者にその治療や診断などの医療行為を行ってもよいものかどうかを評価するための根拠)は権威者であるS医師の臨床経験のみであり、エビデンス的にはもっとも低いところである。 また、最初の60例に関しては保護者に対して文書等による十分なインフォームド・コンセント(医師による事前説明と患者及び家族の十分な理解)がなされていない。O県で行なわれている三角頭蓋の手術はあくまで「軽度三角頭蓋をもち、かつ、多動・知的障害を有する8歳以下の子ども」を対象にしている。この軽度三角頭蓋については健常者の間にも広く存在している(本日の講演会場にもチラホラ・・)。 実際、外国では美容目的以外でこの三角頭蓋の手術を行なう例は殆どない。S医師によるとこの手術適応となる軽度三角頭蓋の患者は650人に一人で、年間2000人、世界で160万人いるとのこと。術式としては「頭蓋骨の圧迫による脳の血流障害の改善を目的に硬膜(脳を包む膜)には手を触れず、頭蓋骨そのものの一部を切除する」というもの。 しかし実際は手術前後にどの程度脳の血流が改善されたのかの具体的な数値は示されておらず、保護者の主観による「改善報告」のみである。また追跡調査についてはプライバシー保護の観点?から実施されていない。S医師によると65例中94%に劇的な効果が得られたというが、実際三角頭蓋手術による劇的な変化なのか、平行して行なわれたであろう療育や本人の成長による改善なのか具体的な評価指標に乏しい。 自閉症に関しては今までもセクレチン注射やテトラハイドロバイオプテリンなど、当初は100%近い改善例を示したと報告された治療法でも、疫学的研究によるプラセボ群(ニセモノ)とコントロール群(実際の薬品)では9割9分否定されたものが多い。 これはメディアによる偏った情報(特効薬であるという先入観など)によるパニックによって、医師と患者の間のインフォームド・コンセントがうまくなされなかった結果とも言える。エビデンスが確率されない診療行為は「治療」ではなく「研究」であるべきである。 今回のO県のS医師の三角頭蓋手術の場合、このような疫学的な調査は治療の性格上非常に難しいと思われ、またこの研究に協力する親をみつけるのも至難の業かもしれない。しかし治療と称するからにはエビデンスを向上させるための疫学な調査と十分なインフォームド・コンセントが不可欠である。 ※ ここからは純粋な感想です。個人的感情満載(苦笑)。 以上がT医師の講演を聴いての私のレポートです。実際は離島医療に関心のある医師・医学生を対象にした講演でしたので、離島における医師はその医学的な知識だけでなく、医師が手を握っただけでよくなる、不在だと具合が悪くなるという島民が多い?ということから医はやはり仁術といった話や、インターネットや画像通信を使って、井の中の蛙状態に陥らないような努力が必要といった話もあってそちらのエピソードの方が結構面白かったのですが、その中から三角頭蓋手術に関する部分のみをレポートしてみました。医学用語・統計用語満載でかなり???な部分も多く、私も理解不能でレポートがレポートになっていないとこもあります(苦笑)。T医師は治療を切望するあまり医師に依存的になり、親としての判断を歪められた可能性を示唆されましたがたしかにその通りかもしれません。今回のT医師の指摘を聞けば果たして全国各地から手術を希望する親がかくもたくさん集るものだろうか?と思うことでした。しかしそれでもかけがえのない我が子を手術に託した親御さんの気持ちを思うと、せつなくなります・・。私も娘が3歳の頃、突然しゃべることも目を合わせる事もしなくなって毎 日がどん底の気持ちでいたあの頃、この手術の話をきいていたら、きっと飛行機でO県に行ったことでしょう。今ではうるさいぐらいしゃべる娘ですが、もしこの手術が疫学的に証明されて、娘が手術適応だとなったら、果たして受けるだろうかと主人とも話すことでした。今の娘の性格が変わってしまったら?回りの私たちの方が戸惑うことが多そうです。基本性格は今のままでコミュニケーション技術と社会適応ができるようになったらいいね♪ 一日も早く疫学的な研究をすすめて欲しいものです。 |