「どれが本当の君だ?」
「どうしたの? 急に」
「どれが本当の君だと聞いてる」
「…どれもこれもみんな本当の私よ。一体何の話なの?」
「君のことがわからなくなったんだ」
「わからない?」
「そう、わからない。言っていることも考えていることもしていることも理解できない」
「理解できると思ってるのが間違いなんじゃない?」
「…」
「あなたに私のことが理解できる筈がないでしょう?
私自身、自分のことなんてわかっていないんだから」
「それでも知りたいと思うんだ。理解したいと思うんだよ。
そういうのが君にはまったくないのか?」
「理解したいと思うことと、理解することはまったく別の話だわ」
「別なものか。君はそうやって他人を理解することから逃げてるんだよ」
「逃げてる?」
「そう。他人を理解すればその痛みもひきうけなきゃならない。
でも君は自分が一番大事だから、他人の痛みで傷つくのが怖いんだよ」
「誰でも一番大事なのは自分でしょ」
「やっぱりそれが本音か」
「私だけじゃない、誰でもそうなんじゃない?
自分を大事にできない人が他人を思いやることなんてできないと思う」
「詭弁だな」
「じゃあ聞くけど、あなたは自分以上に大切で大事な人はいるの?」
「君だよ」
「はっ、良く言うわ。
言葉で追い詰めようとしてる真っ最中によくそんな台詞吐けるわね」
「追い詰めようとなんかしてないさ。事実を言っているだけだよ」
「事実ね…。あなたにとっての事実と私にとっての事実はどうやら違うようよ」
「事実は違いっこないだろう。あるとすればどちらかが間違ってるだけさ」
「じゃあ言葉を変えるわ。あなたの信念と私の信念が違うのよ。大切なものがね」
「変えたところで一緒だよ。僕か君かどちらかが間違っているんだ」
「あなたは私を決して追い詰めてないと言ったわね」
「ああ、言った」
「じゃあ、あなたは自分をそんなに追い詰めてどうするの?」
「意味がわからない」
「どちらかが間違ってるってことはあなたが間違ってる可能性もあるのよ」
「いや…」
「その可能性をまったく考えていなかったの?
私が間違っていると思い込んでいるのね」
「…」
「結論を決めてかかってる人には何を言っても無駄。私の言葉なんて届かないわ」
「僕はちゃんと話を聞いているよ」
「聞いているか聞いていないかじゃないわ。そりゃあ集中すれば聞こえるでしょうよ。
でも私の気持ちや考え方、本当に伝えたい事を理解することはできないわ」
「俺は一番お前の事を理解してるんだよ!」
「わからないって言ったり一番の理解者って言ったり忙しいわね」
「うるさい!」
「そうやって私の言葉も心もすべて否定してればいいわ。
もう理解してもらおうとなんて思わないから」
「愛してるんだ…」
「愛? 今の話と愛は何か関係があるの?」
「関係あると思うから言ってるんだ。
そうじゃなかったらわざわざ喧嘩してまで話はしないよ」
「そう。私も愛してるわ。それが聞ければ満足?」
「お前はそういう言い方しかできないのか!」
「ええできないわね。私もそこまで寛大じゃないの」
「馬鹿にしやがって…」
「馬鹿だとは思ってないけど、頭が柔らかいとは言えないわね。
これ以上話してても時間の無駄だわ。」
「無駄とはなんだ」
「無駄よ。感情のぶつけ合いをしたいわけじゃないでしょう?」
「感情をぶつけないとわからないことだってあるじゃないか」
「そう。でも私はごめんだわ。また今度ね」
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