HOME COLLECTION BBS DIARY SEARCH LINK |
|
■26.03『砂時計』読了 泡坂 妻夫 光文社文庫 [短編推理小説] 紋章上絵師の久雄の元に他人がやりかけた仕事を 仕上げて欲しいという依頼がきた なんでもその仕事をやりかけていた職人が 病死したというのだ 〜「硯」を含む十作品 子をつくるのも、けじめの一つですね 泡坂さんの短編は 亜愛一郎シリーズの軽やかさが印象深かったので この作品集のしっとりした感じに最初は少しとまどった 紋章上絵師、歌舞伎や奇術に関わる人々の心意気が すっとした筆で描かれている どの姿もどこかうら悲しくて もう少し年をとってから読むとまた印象が変わる本だと思う ■26.03『イカはいかようにしてもイカだ』読了 ジョン・ジェシカ 文 レイン・スミス 絵 ほるぷ出版 [絵本] イソップが生きていたとしたら間違えなく 作っていただろう例え話をぼくが書いてみた どれも全部教訓がついているよ ナメクジはイカに似ていなくもない ハハハと笑って他人事として捉えていると ぶすっと自分に突き刺さってくるユーモアに満ちている ■22.03『きいちゃん』読了 山元 加津子 アリス館 [児童書] きいちゃんは子供の頃に高熱が出て 手足が自由に動かなくなり家族と離れて 生活していました。ある日、いつもは静かなきいちゃんが 興奮して先生の元にやってきました。 お姉さんが結婚することになったのです。 生んでくれてありがとう 多田順さんの絵の暖かい色遣いと文章が とても良く合っている作品 自分らしく生きていくこと 家族と信頼し合って生きていくことについて 考えさせられた ■21.03『占星術殺人事件』読了 島田 荘司 講談社文庫 [推理小説] 占星術師御手洗潔が 探偵として優秀だとの噂を聞きつけて 彼の元に飯田と名乗る女性が訪ねてきた。 その相談内容とは驚くなかれ、四十年もの間 日本中の関心をさらっている「占星術殺人」に ついて新発見された事実に関するものだった。 朝というやつは、昨日の、絞りかすだ! 恐らく再読 この作家は 桜の時期の京都がどうしても書きたかったんだろう ■19.03『十角館の殺人』読了 綾辻 行人 講談社文庫 [推理小説] 半年前、大分の孤島で暮らしていた四人の人間が 死体で発見された。その島に大学の推理小説研究会の メンバー7人は十角館と名付けられた館に 一週間滞在することになっていた。 重要なのは筋書ではない、枠組なのだ。(本文傍点) 多分再読 作品全体に漂うほの暗さがなんとも言えず怖い ■17.03『地を這う虫』読了 高村 薫 文春文庫 [短編集] 刑事を定年退職した後 小さな警備会社に勤めるようになった田岡の元に 警視庁から電話が入った 電話の向こうからかつての同僚は 警視の病の状態が芳しくないということと 七年前に逮捕・実刑判決を受けた当時現職刑事の小谷が 一週間前に出所したということを告げた 〜「愁訴の花」を含む四作品 ゆっくりと蠕動運動をくりかえす虫の進路は、 何を探しているのか、行きつ戻りつ遅々として定まらない。 だが、自然の摂理で生きている虫に、 自分の行き先が分からないということはない以上、 こいつは本能に従って、 こうして右へ左へと這い回っているに違いなかった。 そこには、虫なりの秩序があるはずだ。 高村さんの短編を読むのはこれが初めてだった この人はやはり長編の方が好きだなと思いつつ読んでいたら 最後の「地を這う虫」でうならされた いずれにも不器用な男の生き方とかれらを囲む日常が 書かれているのだが はっとさせられる程鮮やかな”生”が時折挿入されており そのため全体が地味になりすぎず仕上がっている ■17.03『ゲイルズバーグの春を愛す』読了 ジャック・フィニィ ハヤカワ文庫 [短編小説集] 汚いところも荒廃したところもあるが、 前世紀の面影を残し人々に愛されている 美しいゲイルズバーグの街に 近代化の波が押し寄せつつある そんな中1人の新聞記者が最近街で不思議な事件が 相次いで起こっていることを知る 〜「ゲイルズバーグの春を愛す」を含む十作品 ブルックリンは、ここ七世代のあいだに変わった。 もう昔のとおりの町ではない。だが、それでもまだあちこちに、 ちいさな島が−−−現世とは切り離された、昔のとおりの 生き方の名残の場所もあるのだ。 そして、ウィスター郵便局はそうした場所のひとつなのだ。 そこは、何もほんとうに変わっていない。 そして夜は−−−夜更け、世界が寝静まって、 いまある物音がほとんど消え去り、 いま見えるもろもろの物事が夜の闇におぼろになると −−−こことあそこの境界線がぼやけてくるのだ。 安心して読めるファンタジー作品集 ほろりと涙を誘うものや どきろとさせられるものありで いろいろな過去にまつわる 話が書かれている 日々の喧噪を忘れたいときに読むと良い本 ■15.03『パラレルワールドラブストーリー』読了 東野 圭吾 講談社文庫 [推理小説] 中学から大学院まで共にした親友智彦が崇史に 恋人を紹介したいと言ってきた 体に少しハンディを負っている智彦に遂に彼女が出来たと 心を舞い上がらせた崇史の前に表れた女性はしかし かつて彼が通学電車の中から一年間眺め続け 思いを馳せていた人だった 自分は弱い人間だ、崇史はそう思った。 そう思うことにより少しは気が楽になったが、 それは単に居直って逃げているにすぎないことにも 彼は気づいていた。 この作家はこういうじめっとした話を書かせると上手い しかし友情か愛のどちらを選ぶべきか苦悩する主人公と 三角関係の頂点に立つ女性に今ひとつ感情移入出来ないまま 読み終わってしまった ■11.03『からくりからくさ』読了 梨木 香歩 新潮社 [長編小説] 祖母が亡くなり 彼女が1人で住んでいた古い日本家屋が後に残された いつまでもそのまま放置してはおけないし売るには愛着がありすぎる かといって引っ越しも無理だからと考えあぐねた結果 染色を学ぶ孫の容子を管理人とし 女子学生用下宿が営まれることになった 植物染色に興味を持つ美大の学生2人それに アメリカから鍼灸を学びに来ている女性の4人が織りなす日常生活 ねえ、大事なのは、このパターンが代わるときだわ。 どんなに複雑なパターンでも連続している間は楽なのよ。 なぞればいいんだから。 変わる前も、変わったあとも、続いている間は、楽。 本当に苦しいのは、変わる瞬間。 根っこごと掘り起こすような作業をしないといけない。 かといってその根っこを捨ててしまうわけにはいかない。 根無し草になってしまう。 前からの流の中で、変わらないといけないから。 この作品を読んで こういうことを感じ、ああいう風に表現できる人っていいなと思えた 以前は吉本ばななに対して似たような感情を抱いていたのだが、 今のわたしには梨木さんの描く女性がとても魅力的 旧家に生まれ育った者もしくは、結婚し旧家に入った者の心に 知らぬ間に芽吹き成長する ”家”に対する思いがしんしんと伝わってきて 少し怖くもあったが 人工物の溢れている世の中でもっと自然に自然と暮らすという 姿勢がとても心地よく感じられた ■08.03『桜咲く、桜散る』読了 江上 冴子 廣済堂文庫 [長編小説] 群馬県前橋市の小さな織物屋の三男として生まれ 上州で中学まで過ごした僕、小野沢智和は必死に勉強した結果 なんとか帝高に合格することができた。その春から本郷の老舗の 茶問屋に住み込みの書生として三男の貴臣のお世話をすることに なったのだけれど・・・。 ただそこにいるだけで人を圧倒するような気品は生来のものだ。 どんなに悔しがってもこればかりは得ることができない。 バンカラの書生の眼を通して 江戸の老舗の家庭と主人への思いが語られている 読んでいると美味しい玉露やお菓子を 楽しみたくなってくる小説 目指しているところはわかるのだけれど 変なところに力が入りすぎていて 全体のバランスを崩している気がした ■06.03『人格転移の殺人』読了 西澤 保彦 講談社文庫 [長編推理] 199X年12月20日カリフォルニア州S市のとあるショッピングモール その中にあるハンバーガーショップ『チキンハウス』で 7人のお客が食事を楽しもうとしているところに大地震が起きた 崩壊した店の中に閉じこめられた彼らが逃げ込んだ場所は・・・ 問題は、他人の心はいくらでも客体化するのに、 自分の心だけは、どこか余所へ取っておくという姿勢だ。 自分だけは別だとね。 口には出さずとも、無意識にそう思っている。 日本人の留学生について 他国の人々からみた日本人について書かれていたが 自分の経験と比較すると現在の状況は 作品のものとは少し変化しているような気がした しかしよくまぁこんな設定の小説を書けるものだと うならされた反面 だからこそ読者を選ぶ作家だという確信ももてた 本当に面白いんだけれど ■05.03『ブタ王子』読了 ルーマニアのむかしばなし 西村書店 [昔話] むかしむかし、王様に3人の娘がいました。 ある時戦争にでかけることになった王様は娘達に ある一つの部屋にだけは入ってはならないと言って出ていきました。 しかし娘達は言いつけを破ってしまいました。 そういうわけで末娘は北からくるブタと結婚することになったのです。 不運な女だな。なんてことしてくれたんだ。 子供、民話を読み漁っていたときに 似たような作品を読んだことがあるような ないような シンボル辞典を手元に読んでみるのも一興か ■04.03『りかさん』読了 梨木 香歩 偕成社 [ファンタジー] 今度のお雛祭りに『リカちゃん』が欲しいと おばあちゃんにおねだりしたようこの元に届いたのは りかちゃんと名付けられた真っ黒い髪の市松人形 最初はがっかりしたけれど一緒に暮らすうちに 「生きている人間の強すぎる気持ちを 整理してあげるために人形はいるんだよ」 というおばあちゃんのことばがわかってきた 因縁も結局、縁だからね、 なにがどうひるがえって見事な花を咲かすかわからないもの。 これは『からくりくさ』(未読)の番外編の作品らしいけれど 単品だけでも十分楽しめた 読んでいるとかつて人形と過ごした時間が思いだされた 人の形をしたものより、なぜか動物たちを好んだ あのころのわたしにとってぬいぐるみは友達であり 守り神のようなものでもあった 自分の記憶の中で埋もれていたそんな想いが ふわふわと浮き上がってきて とても気持ちよくなった ■01.03『APE LITTLE FOOL』読了 大塚 ヒロユキ 新風舎 [長編小説] 時は五月 眠りから覚めキッチンでミルクを飲んでいたら サムの電話のベルが鳴った 受話器からは混線のため雑音混じりの女の声が聞こえてきた 「・・・今・・・なにしてるの・・・・・」 一体なんなんだ? 意識の闇に投げ込まれた小石はしかし ある地点で闇に同化してしまう 来るはずのない相手を待っていることと、 ただそこにいること、 この二つの違いはどこにあるのだろうか。 10歳だったころ、 鏡はすごく不思議なものだと思っていた。 鏡を通さなくては自分の姿を知ることは出来ない。 けれど鏡が真実の姿を映し出しているかどうかなんて どうして分かるんだろう。 手で触ることによって 一つ一つのパーツがそこにあることを感じることは出来る。 けれど全てを知るには 目の前の鏡とそして自分の目を 信じるしかないという事実をわたしは受け入れることが 出来なかったのだ。 いつまでも鏡を見つめ続けていた自分を 思いだしながら読んだ。 ■28.12『少年たちの終わらない夜』読了 鷺沢 萌 河出書房新社 [短編小説集] もうすぐやってくるクラブの引退試合 謎を秘めた彼女 一緒にはしゃぎまわる友達 それらに囲まれた真規の 空の青さが目にしみる 子供と大人の間で揺れる17の夏を描いた表題作を含む 4作品を収録 −−−でもずっと楽しいままではいられないもの。 あたしどこで区切りをつければいいのかわかんなくなっちゃった。 こんなふうにしているまま時間が経っていっちゃうのは凄くイヤだな。 ああ 目的ではなく勝つための手段としてスポーツをしていたころ 「自分の力でどうにかできないことはないと思う前に信じていた。 自分自身に納得できない自分が嫌いだった。」ころのわたしや 空を平泳ぎで泳ぐ夢を見る(これは今でも時々見る)わたし ともかく今よりもっと若かったころのわたしがここにいる。 登場人物の姿が自分のそれと重なって、 でも今はその頃の話なんて遠すぎるから だから冷静に読めるかなと思ったけれど 未だ生々しく思い出せてしまった。 ■27.02『シティ・オブ・グラス』読了 ポール・オースター 講談社 [小説+漫画] 始まりは、真夜中に三度かかってきた間違い電話だった しかも、電話の相手の捜していたのはクィンではなかったけれど ともかく、妻と息子を亡くし ニューヨークでどこにも存在しないことを求める 彼の物語はこうして始まったのだ ずっとあとになって、彼は気づくだろう・・・ ・・・偶然だけが・・・ ・・・現実だったのだと。 違う結末があったかもしれないとか、 そうなる運命だったのだとか、そんなことはどうでもいい。 問題なのは物語そのものだし・・・ ・・・それに意味があるとかないとかも、 物語とは関係ないことだ。 夕張映画祭のデジタルシネマで この『シティオブグラス』をキーにした作品を観た その映画では主人公が 他者を見ることは出来るけれどそこに介入することは出来ない 逃げ出すことは出来ないけれど上に向かって空間は広がっている 屋上に一人閉じ込められてしまう。 難点も多かったけれど全体としては興味深い映画に仕上がっていた。 それでともかく、この作品を読むことにしたのだけれど 大勢の人間が存在する都会に生きている ”自分”の変容が絶妙で不可解で面白かった。 |
PAST 12~1999 01.2000 02.2000 |
| HOME | BBS |