紙コップでカルピス



私は以前、病院の事務の仕事をしていたことがある。
その病院は総合病院で、当時ベッド数は700を超える病院だった。

私の担当は神経内科(いわゆる老人の病気が中心)、代謝内科(糖尿病とか)、腎臓内科(腎臓病)、麻酔科の入院と外来がメインで、その他いろいろごちゃまぜで仕事をさせられてました。
かなりハードワーク、事務なのにまるで日勤と準夜勤を毎日こなしているような感じ。
朝8時半に入って、お疲れさまするのは夜9時か10時。我ながらよくやってたよなぁと思う。
案の定、具合が悪くなったこともあったけど。

まあ、これはいいとして。

いつものように病棟に書類を届けに行った。そういうのも私の仕事。
病棟には看護婦さんがいて、何度も病棟におじゃましている私のことは覚えていてくれている。
ちょうど休憩時間らしく、詰所では看護婦さんたちがお菓子をつまんだり、お茶を飲んだりしている。

詰所から声がかかった。
「ひろちゃん、お茶飲んでけば。またどうせ夜遅くまで帰れないんでしょ。 なんか食べてけば?」

あ、ありがたいことだ。看護婦さんは一般では白衣の天使と言われているが、なかには白衣の悪魔もいる。
「アンタ、たかが事務員でしょ。先生と仲良くするんじゃないわよ。」と意地悪する人だっているのだ。女ばかりの職場だし、きつい仕事、結構あちこちで女の争いがあるらしい。

たまたま優しい看護婦さんに声をかけられ、詰所でお茶をごちそうになることになった。
彼女はおっとりしていて、いいお姉さんといった感じの人だ。

看護婦さん「仕事、いつも忙しそうだね。忙しいんだから、ちゃんと食べないとね。」
私     「ありがとー。大丈夫。」
看護婦さん「さあさ、いっぱい食べてきなさい。飲み物はなにがいい?カルピスでいい?」
私     「はーい、いただきまーす。」

患者さんのご家族からいただいたというマドレーヌを食べていると、紙コップに入ったカルピスをくれた。
ごくごく飲んで、よくみると、底のほうに青い丸印が見える。なんだ?
ぎえ〜、これって検尿用のコップじゃん!

私    「こ、これって...」
看護婦さん「ああ、その紙コップ。大丈夫よぉ〜、それ使ってないし。それにそのへんで売ってる紙コップよりよっぽど清潔なのよ。完全滅菌してあるんだもの。」

はい、わかりました。あなたが正しいです。
こういう環境に慣れて4年間、悲しいかな辞める頃にはオペ立会後に平気で焼肉食べに行けるようになりました。

その感覚が恐ろしいのもあって、そろそろ辞めるか、と思ったんですけどね。

病院っておかしなところです。行くのと働くのと大違い。