アメージング商店街・その2「らくだや」



姉と一緒に住んでいた部屋を出て、初めてひとりで暮らしたアパートがあった商店街もなかなかディープでした。

JRの駅から部屋まではちょっと遠めの徒歩15分。
ちょっとした丘を越えるとちょっとだけ近道になる。
その丘の上には、なんだかでっかい屋敷がたくさんあって、夜はちょっと怖いくらいの雰囲気。
大使館勤めの外人さんも多く住んでいるから、時々ホームパーティをやって盛り上がっている様子も外から見えたりして。
クリスマスはこぞって庭をデコレーションしてあったり、1ヵ月の家賃が50万とか100万とか言われるガーデンマンションがあったり、はては平和島競艇で全額つっこんで負けたようなおっちゃんが道端で酒盛りしてたり、ふっしぎ〜な街。

私は雨の日に丘を越えようとして、ひとりで急いで歩いていた。
もう外は暗くてちょっと寒い。公園の側を通りすぎようとした私の足になにか当たった。なんだ?ごみかな。

よく見るとそれはでっかいかえる!
ぎえ〜〜〜〜!っと思い、ひたすら家に向かって歩いた。
家に着くと履いていた靴をクリーナーでごしごし拭いて、足も洗った。
あー、もうびっくりした。なんであんなところにかえるが...。
よくよく考えた結果、ご近所の豪邸(庭に池がある)から来たらしいことが判明。
なるほどー、池にいたかえるが雨で外に出て来てたのか。びっくらこいたよ、もう。

ってなエピソードもあったりした場所でした。(前置き、長くなっちゃった)

商店街はちゃりんこ天国で、とにかくちゃりが多い。
おばちゃんなんかは自分のちゃりの前後に子供を乗せて買い物してたり、
まー、大変な騒ぎ。テレビでも紹介されちゃうくらいすごい。
そんな道の大騒ぎとは関係なさそうに例のお店がある。

お店の名前は「葡萄屋」。夜は飲み屋さん、昼はランチも出しているお店で、
お店の前には石像の動物の頭部(大きさは1メートル弱の高さ)が置かれている。
お店はその石像を囲むような雰囲気で玄関が設置されており、石像の隣には石でできた小さい池(金魚入り)と柄杓がある。
ドアは木とガラスでできていて、レトロな感じ。昔のまま直していないらしい。
雰囲気は、かなりある。でも石像が異様だ。気になる。
駅には看板も出ているんだけど、なぜか河童が酒盛りしている絵で、「葡萄屋」と書かれている。なんか変だ。

私は近所に住む友達と、「なんか気になるよねー。あの石像。あれってらくだ?」とか言って、店の名前を勝手に「らくだや」と呼んでいた。
でも呼ぶだけで実際にお店に行く機会がなかったんだけど。

たまたま例の「らくだや」に行くチャンスが来た。
私はたまたま仕事で遅くなり、ちょっと軽く食事でも、と言ってくれた会社の同僚と「らくだや」に行く事になったのだ。

店にはいるとまずおじさんが出てきて、「2階がお席になりますのでどうぞ」と案内してくれた。
木の階段を上がって行くと、まず靴を脱ぐところがある。席はお座敷なのだ。
靴を脱いでいるとお店のおばちゃんが来た。おばちゃんといっても普通のおばちゃんではない。
ちょっと顔は化け物入ってるおばちゃん、昔はカフェーの女給さんをしてた風な。
おばちゃんは4,5人いて、全員和服を着て白いエプロンをしている。
おばちゃんが靴を片付けてくれて、席に案内された。

その時は夏だったので、窓際のテーブルに案内される。
籐でできたテーブルと椅子、かなりちゃんと手入れをされているらしく、きれい。
窓際には鉢植えがあったりして、ひょっとしたら昔はおしゃれな人達が集っていたかもしれないような雰囲気。
おつまみに串焼セットとビールを頼み、しばらくぼーっと外の風に当たっていた。
別のテーブルの年配の品の良い男性たちはおばちゃんたちと盛り上がっている。
いやらしい雰囲気はゼロ、おばちゃんも「ドイツ人のオペラは素晴しい。」とか「あの本は読んだ?」とかそういう話題で盛り上がっている。
ふーん、なるほど、そういうお店なのか。

追加のオーダーをお願いするためにおばちゃんを呼ぶ。
「このお店はもう古いんですか?」
「ええ、ここは私が若い頃からありますからねぇ。昔は文壇の方とか、いろんな方たちがいらして芸術やら、理想やら語られてましたね。
もう少しおビールはいかがですか?店の前の石像と同じくキリンの生ビールがおいしゅうございますよ。」

へ?あれってらくだじゃないの?キリン?
どう見てもらくだだよー、と思ったけど、らくだとキリンの顔の違いってあんまりないかもね。
どうもここ、キリンビール絡みのお店らしいです。
(ほんとかうそか、よくわかんないけどね。)

そういう楽しい発見があるから、探検と商店街からは離れられない。(^^)