調査C.理解していないのは「公式・定義」それとも「数学の基礎」

<目的>
 調査A,Bにおいて「タンザニアの生徒は加減法の理解度が低い」と言う事を述べてきたが,これは言い換えれば「Primaryで習うべき数学の基礎が出来ていない」事になる.
 この基礎が出来ていないと,Form2,3,4において,いくら難しい公式や定義を覚えていても計算ミスで正答が得られず,結果的にその労力が報われない事が考えられる.
 ここでは,正答が得られない原因は「公式・定義を覚えていないのか?」それとも「それは覚えていて基礎が出来ていないのか?」を調査し基礎の重要性について考えていく.

<対象>
  ・Mkwakwani Secondary School(政府校)2001年度Form1 158名(男子86名,女子72名)

<内容>
   Weekly testにおいて下記の2問を出題しその誤答の原因を解析した.
      [問題1] Change the following equations in the form y=mx+c then find their gradient and y-intercept.
            1) 3x+4y=8  2) -4x-2y=6  3) x-y=-9  4) 8x+2y+10=6
      [問題2] Find the gradient of each pair of the following points.
            1) (-3, -2) (5, -4)  2) (4, -1) (9, 1)  3) (4, 1) (9, 1)  4) (-4, 3) (-4, 5)

<結論>
試験で点数が取れないのは,加減算・式の変形等の基礎が出来てない事も大きな要因であると言え,
 PrimaryおよびForm1での内容である数学の基礎をしっかりと理解させる必要がある.
  (公式・定義を覚えていても基礎が出来ていないため正解を得られない生徒 → 約30%)

<それぞれの問題の結果と考察>
a)問題1
<問題と正解>
    Change the following equations in the form y=mx+c then find their gradient and y-intercept.
      正解(m:gradient, c:y-intercept)
         1) 3x+4y=8   y=-3/4x+2 m=-3/4,c=2
         2) -4x-2y=6  y=-2x-3 m=-2,c=-3
         3) x-y=-9    y=x+9  m=1,c=9
         4) 8x+2y+10=6 y=-4x-2 m=-4,c=-2

<結果>
 この問題では,以下の2つの課題が与えられている.
    @ 与えられた文字式の変形基礎T
    A @で得られた一次関数の式y=mx+cにおいて,m→gradient,c→y-interceptを表す定義T
 今回,基礎が大事である事を生徒にわからせるために@が正解でなければ,結果的にAが正答でも正解とはしなかった.
 例えば,1)で
     y=3/4x+2 (正解はy=-3/4x+2) m=3/4, c=2
とした場合,結果的にcは正解だが今回は式の変形が出来ていないのでそれも不正解とした.
 ただし,この様な誤答は「定義Tは理解している」と解釈できるのでそれを踏まえた上でこの問題の正解率と誤答原因を表Table.C-1にまとめた.

Table.C-1 各問題の正解率と誤答原因
正解率 不正解者数 定義Tは理解 不正解者中の定義T理解者 (B)の生徒が基礎Tを理解していた場合の正答率
(A) (B) (B÷A) ((158-A+B)/158)
1) 43% 90 50 56% 75%
2) 37% 100 57 57% 73%
3) 46% 86 40 40% 71%
4) 28% 113 61 61% 67%
平均 39% -- -- 54% 72%
※:受験者数は158名

 正解率は約40%であった.
 この数字だけを見ると,一次関数については半数以上の生徒が理解できていないと言う事になるが,前述のように不正解者の中には「定義Tは理解しているが基礎が出来ていない」生徒も含まれている事になる.
 それについて調べると,不正解者の半数以上に当たる54%の生徒が該当し,もし彼らが基礎Tを理解していたとすればその正解率は72%まで上がる事がわかった.
b)問題2
<問題と正解>
    Find the gradient of each pair of the following points.
      正解
         1) (-3, -2) (5, -4) -1/4    ∵ (-2-(-4))/(-3-5)=2/(-8)
         2) (4, -1) (9, 1)   2/5     ∵ (-1-1)/(4-9)=-2/(-5)
         3) (4, 1) (9, 1)    0      ∵ (1-1)/(4-9)=0/(-5)
         4) (-4, 3) (-4, 5) undefined  ∵ (3-5)/(-4-(-4))=-2/0

<結果>
 この問題でも,以下の2つの課題が与えられており,基礎と定義理解が出来て初めて正解が得られるようになっている.
    @ 加減法基礎U
    A gradient=(change in y)/(change in x)=(y1-y2)/(x1-x2)定義U
 この問題に関しても,誤答者のうち計算過程において定義Uに数値を正しく代入している生徒に関しては「定義Uを理解している」と解釈した上で各問題の正解率と誤答原因をTable.C-2にまとめた.

Table.C-2.各問題の正解率と誤答原因
正解率 不正解者数 定義Tは理解 不正解者中の定義T理解者 (B)の生徒が基礎Tを理解していた場合の正答率
(A) (B) (B÷A) ((158-A+B)/158)
1) 35% 102 69 68% 79%
2) 49% 81 49 60% 80%
3) 63% 58 16 28% 73%
4) 49% 81 36 44% 72%
平均 49% -- -- 50% 76%
※:受験者数は158名

 正解率は約50%であった.
 これだけを見ると,直線の傾きの定義については半数の生徒が理解していないと言う事になるが前問同様不正解者の中には「定義Uは理解しているが基礎Uができていない」生徒も含まれている事になる.
 その数を調べると不正解者の半数50%の生徒が該当し,もし彼らが基礎Uを理解していたとすれば正解率は76%になる事がわかった.
c)まとめ
 この調査からわかったことについてまとめるために,2問の結果をTable.C-3にまとめた.

Table.C-3.調査結果まとめ
問題 正解率 不正解者中の定義理解者(E) (E)の生徒が基礎を理解していた場合の正答率
1 39% 54% 72%
2 49% 50% 76%


 いずれの問題においても,定義は理解している生徒は70%以上いるにもかかわらず基礎が出来ていないために点数を落としている生徒が約30%もいることがわかった.
 以上から「試験の点数が悪いからといって必ずしもその解法が理解されていないという事にはならず,誤答箇所を確認した上でその後の指導方針を立てる必要がある」と言える.
 また,今回の基礎T,UはいずれもPrimaryにおける内容と言う事から,Secondaryにおける内容に対応していくためには「Primaryにおける数学教育の充実化」の必要性が明らかになったと言える.

  彼らは解き方がわからないのではなく「足し算・引き算」および「式の変形」ができないのである.



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