Secondary Schoolの生徒の基礎計算力について

<背景と目的>
 この国の授業はPrimary School(以後Primaryと表記する)ではスワヒリ語で行われSecondary School(以後Secondaryと表記する)からは英語で行われる.
 Form1(中学1年生にあたる)の数学はSecondaryで初めて習う内容は少なくほとんどはPrimaryで習ったことを英語で復習するものである.
 赴任して一年目の昨年はForm1の数学を担当したがPrimaryで習って来たはずの簡単な計算が出来ない様は目を覆わんばかりのものであった.
 今回,数学の基本である彼等の基礎計算力英語読解力を調べるとともにこの国の教育問題についても考えてみる.

<内容>
・実施日:
    @ 25.Sep.2000,A 29.Aug.2000
・対象学年:
    Form1 Mkwakwani Secondary School(Parent's School)
・対象生徒数:
    @ 75名 (女子:36名,男子:39名),A 157名 (女子:79名,男子:78名)
・出題内容:
    @ 項が二つの単純な正の数と負の数の加減乗除 および 項が二つ以上の少し複雑な正の数と負の数の加減乗除,A 簡単な描画問題

<結論>
 ・正負の乗除算に関してはほぼ問題無し.(正答率 95〜100%)
 ・正負の加減算に関しては問題あり. (正答率 50〜99%)
   特に下記の2つは正答率が70%を切っており大きな問題である
       <第1項が負の数である減算における誤った解答パターン>(正答率 49〜66%)
          T:@ 第1項のマイナス符号を外す.
            A @で得られた正−正(or 負)の計算をする.なお,ここで「−負の数=+正の数」は理解しているようである.
            B Aで得られた答に@で外したマイナス符号をつけて答とする.
          U:計算方法がわからないので,符号を無視し「正の数+正の数」として計算をする.

       <第1項が0である減算における誤った解答パターン> (正答率 54〜69%)
          V:計算方法がわからないので,0を答とする.
          W:計算方法がわからないので,マイナス符号の後の2項目の数字を答とする.

 ・「問題の解き方」がわからないだけではなく英語力が低く「問題の意味」がわからないことも数学の能力が低い原因のひとつと考えられる.
 ・国全体で数学のレベルを上げるためには
  1. Primaryでの数学教育および教師の指導法の改善
  2. Secondaryでのスワヒリ語の使用

 が重要である.

<結果と考察>
 このテストをする前までは生徒達は正負の乗除が出来ないものだと思っていたので少し意外な結果であった.
 以下で結果に関してもう少し細かく見ていく.

 まず,Table.1に今回出題した問題のタイプと正答率を示す.
 正の数と負の数を用いた2項の加減乗除の全ての組み合わせ16通りと第1項に0を第2項に正の数と負の数を用いた加減算,それぞれについて2題ずつ出題した.
 全問題をTable.3に示す.

Table.1
正答率問題のタイプ問題番号
96%PositivePositive2), 14)
92%PositivePositive6), 18)
79%PositiveNegative4), 16)
75%PositiveNegative8), 20)
73%NegativePositive1), 13)
50%Negative Positive7), 19)
71%NegativeNegative5), 17)
64%Negative Negative3), 15)
99%0 + Positive9), 21)
57%0 Positive10), 22)
83%0 + Negative11), 23)
68%0 Negative12), 24)
100%Positive × Positive25), 29)
98%Positive × Negative26), 30)
98%Negative ×Positive27), 31)
97%Negative × Negative28), 32)
99%Positive ÷ Positive33), 37)
96%Positive ÷ Negative34), 38)
95%Negative ÷ Positive35), 39)
95%Negative ÷ Negative36), 40)

 上表からわかる通り乗除算に関しては正負が混合しても正答率が95%以上となっており予想に反してほとんどの生徒が理解していることがわかった.
 一方で加減算に関しては乗除算よりも明らかに正答率が低くなっている.
 特にピンクの4つのタイプは正答率が70%を切っており理解度が低くなっている.

 次に前述の4つのタイプの問題の誤答の導き方に傾向があるかを調べるために,2大誤答とその人数についてTable.2にまとめた.

Table.2
タイプNo.正答率問題誤答人数%※1 誤答人数%※1
Negative − Positive 7)51%−1−231643%-11027%
 19)49%−6−2-42361%8821%
Negative − Negative 3)66%−5−(−1)-61456%6832%
 15)61%−4−(−2)-61551%6931%
0 − Positive 10)58%0−302065%31032%
 22)54%0−602168%61132%
0 − Negative 12)66%0−(−4)-41560%0832%
 24)69%0−(−1)01043%-11043%
※1:(その誤答をした人数)÷(全誤答者数)

 上表から第1項が負の数である減算と0であるそれで,それぞれで共通した「誤った計算パターン」があることがわかる.

 まずは,第1項が負の数の減算に関して明らかになったパターンを以下に示す.
 なお上表で下記のパターンTに当てはまる答はピンク,パターンUに当てはまるものは黄色とした.

  T:@ 第1項のマイナス符号を外す.
    A @で得られた正−正(or 負)の計算をする.なお,ここで「−負の数 = +正の数」は理解しているようである.
    B Aで得られた答に@で外したマイナス符号をつけて答とする.
  U: 計算方法がわからないので,符号を無視し「正の数+正の数」として計算をする.

 19) -6-2 と 15) -4-(-2)を例にとって以下に実証する.
  T:@ 19) -6−2 → 6−2     15) -4−(-2) → 4−(-2)
    A 19) 6−2 = 4         15) 4−(-2) → 4 + 2 = 6
    B 19) 4 → -4          15) 6 → -6
  U:  19) -6−2 → 6 + 2 = 8  15) -4−(-2) → 4 + 2 = 6

 ここで,7)に関しては他の問題と傾向が少し違いパターンUの方法が一番多くパターンTが見られないが,これはパターンTのAで得られた解が負の数となったため生徒が混乱してしまったためと考えられる.
 なお,差のない(9名)3番目に多い誤答はパターンTで得られる「1」であることからも,第1項が負の数の加減算における誤答は上記の2パターンから導かれるものがほとんどであることが言える.

  次に,第1項が0である減算に関してそのパターンを以下に示す.
 なお,表中で下記のパターンVに当てはまる答は緑,パターンWに当てはまるものは水色とした.

  V:計算方法がわからないので,0を答とする.
  W:計算方法がわからないので,マイナス符号の後の2項目の数字を答とする.

 Wはなんとなく気持ちが分からないことも無いのだが,Vの様に「0」と答える生徒が半数近くいるのには正直言って驚いた.
 0からある数を引いているのだから答がその0になる訳は無いと思わないのであろうか?

 最後に,生徒達が「問題の解き方」と「問題の意味」のどちらがわかっていないのか調べるために,以下の問題を出した.

    "Draw line segment 6cm and divide it 4 equal parts with ruler."

 注目の正答率だが,

    6cmの線分が引けた生徒が35%,それを4等分にできた生徒が20% であった.

 問題の内容はPrimaryで習っているべきものと思われるので彼等は「問題の解き方」がわかっていないのではなく,英語力が低いため「問題の意味」がわかっていないということが言える.(同時にスワヒリ語で類題を出していたらもっとはっきりしたのだが)

 以上のテスト結果からこの国の数学レベルを上げるためには,数少ない出来る生徒の能力を上げることも必要だが

 @ Primaryにおける数学教育および教師の改善
 A Secondaryの授業におけるスワヒリ語の使用

 を推進し,今の教育事情のままでは落ちこぼれるであろう生徒の底上げをする方が国全体として,また長い目で見た場合に重要であると考える.

Table.3

問題

問題

1)

25

25)

6×4

2)

43

26)

4×(3)

3)

5(1)

27)

5×5

4)

5(1)

28)

3×(9)

5)

7(7)

29)

7×2

6)

25

30)

6×(2)

7)

12

31)

3×4

8)

4(3)

32)

4×(8)

9)

04

33)

35÷7

10)

03

34)

42÷(6)

11)

0(2)

35)

72÷9

12)

0(4)

36)

56÷(8)

13)

15

37)

63÷9

14)

23

38)

48÷(8)

15)

4(2)

39)

42÷6

16)

3(3)

40)

40÷(5)

17)

2(1)

41)

4×32

18)

52

42)

43×2

19)

62

43)

4×(32)

20)

1(5)

44)

(43)×2

21)

02

45)

128÷22

22)

06

46)

(128)÷22

23)

0(3)

47)

(128)÷(22)

24)

0(1)

48)

128÷(22)



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