タンザニア教育研究会の活動について

 今回は,1年半タンザニアの理数科教師(担当は数学のみだが)として活動してきて感じた事について書いてみたいと思う.

 まずはタン教研(タンザニア教育研究会※1の略称)の規約主旨をみてみると教師隊員の資質の向上と親睦をはかるとなっている.
 発足したばかりの会ならば,この主旨でもわからなくはないが少なくとも機関紙であるMnafundi-shaje?が創刊してから9年が経とうとしているのだから,そろそろ次の段階に進んでも良いのではなかろうか?

 具体的には
  ・どうしたら生徒の能力向上を図る事ができるか?
  ・活動を通してタンザニアの教育をどうしたいのか?

 と言う事について考え始めるべきだと思う.
 細かい事を言うようだが,これまでの活動内容は「"教育研究"会」と言う名に完前に負けているように感じる.

 今までのそれは,前述の規約主旨からも読み取れるように「われわれ自身をどうしたいか?」と言う事が大半で「タンザニアの生徒・教育レベルをどうしたいか?」と言う事についてはほとんど活動がなされていないように思える.

 確かに年2回の現地研修会での目的として取上げられている「隊員の指導技術の向上」が生徒の理解力向上につながるとも考えられる.
 しかし,もし本当に生徒の事を考えるならば,隊員間で行う指導技術向上よりも

   各々が担当している生徒の現状レベルを把握し彼等に合った的確な指導方法を検討する

 方が重要なのではなかろうか?

 タンザニアの生徒はなんて勉強ができないんだろうと言う事は全隊員が感じている事だと思う.
 また隊員総会時に議論されたようにOレベル※2の授業はスワヒリ語でするべきであると言う事も同様であろう.

 だが果たしてこれまでその程度がどのくらいだろうか?と言う事について考え調査解析した事があっただろうか?

 もしも「われわれの力で生徒のレベルを上げたい」「授業をスワヒリ語にするように制度を変えて行きたい」と思うならば,まず彼等の現状を前述の様に感覚的ではなくそれらを裏付ける調査解析をして具体的な内容を数字として把握する必要があるはずである.
 そうする事によって初めて「的確な対策を取る事ができ」「教育機関に対してもより説得力のある見解となる」のではなかろうか?

 例えば数学の試験で1次直線の傾きを間違えたとする.その原因について考えてみると,この場合
   ・公式「傾き=yの変化量/xの変化量」を覚えていなかった
   ・公式は覚えているが数字を代入した後の単純な計算を間違えている

 と主に2通り挙げられる.ここで次回の試験対策として的確なアドバイスをしたいならば「単に間違えた」だけではなく「どの段階で間違えたのか?」と言う点を数字で把握する必要があるはずである.

 昨年このケースについて実際に調べたところ誤答者の半数以上が後者に当てはまる事がわかり,簡単な2項の加減算ができれば次回の試験時にはこの問題の誤答者は間違い無く減りそうであると言う事がわかった.
 つまりここまで解析する事により初めてより有効な対策は「そのChapterで習った傾きの公式をしっかり覚えなさい」ではなく「数学の基礎である加減算をしっかりしなさい」とアドバイスする事であると言えるのである.

 ここでは数学の例を挙げたが,他教科に関しても同様の事が行えるのではなかろうか?

 自分はこれまでの活動を通してタンザニアの数学教育レベルを上げるためには
   1. Primary Schoolにおける数学教育の改善
   2. 授業におけるスワヒリ語の使用

 が必要であると感じており,それらをより説得力のある意見とするために
   1.に関して:前号今号に投稿した基礎計算力調査
   2.に関して:幸い2年続けてFrom1を担当しているので昨年は英語で行った授業を今年はスワヒリ語で行い,ほぼ同じテストをしてその差を評価
をしている.
 また同じ問題を英語とスワヒリ語で出題して,間違える理由は
   「問題の意味を理解しているが解答方法がわからない」
              のか
   「英語が理解できず問題の意味が理解できていない」
についても調べて行きたいと思っている.

 ここまで展開してきた内容はほんの一例に過ぎず更に有効な手段があるかもしれない.
 また,解決対象がすぐに結果が出る事ではないので「任期が2年である」「与えられた環境がそれぞれまちまちである」と言う事を考えると「個々人で調査解析を行っても中途半端に終わってしまう可能性がある」「誰がそれらの結果を取りまとめるか」などの問題が生じ,実行に移すにはかなりの労力が必要なので踏み切り難いものだと思う.

 ただ,タンザニアの教育について真剣に考えて行くならば,そろそろこれまでとは違った活動の方向性・方法について議論する必要があるのではなかろうか?

 タンザニアに理数科教師が派遣されて18年弱(1968年から派遣されているが途中で15年のブランクがあるらしい)になるが,長い時間を費やしている割にはこれまでの活動がこの国の教育レベルの向上に十分に生かされているとは思えないと言うのが今の率直な感想である.

                                       以上

   ※1 タンザニア教育研究会:
          タンザニアに派遣されている教師隊員の有志(他の職種でも参加可)からなる分科会.
   ※2 Oレベル:
          Ordinaryレベルの略.タンザニアの教育システムは
                 Primary School   7年
                 Secondary School
                   (Ordinary)    4年
                   (Advance)     2年
                 University      4年

 となっており,自分はOレベルのForm1(1年生)を担当している.



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