タンザニア・日本中学生の計算力比較

<背景と目的>
 この国の教育システムはPrimary School(以下Primaryと表記)ではスワヒリ語,Secondary School(以下 Secondaryと表記)では英語を用いて授業を行う事になっている.
 昨年今年とForm1の数学を担当しているが,Form1のそれはPrimaryでスワヒリ語で勉強した同じ事を英語でもう一度勉強するだけなので当然ほとんどの生徒が理解できていると思ったのだが,予想に反して結果は散々たるものであった.
 そこで現状把握のために数学の基礎である加減乗除の計算試験を昨年秋に一度,今年春に母数増しの意味で再度同じ試験を実施した.また,幸い中学校時代の恩師の協力を得られ日本の中学1年生でも同じ試験を実施することができた.
 これらの結果を解析していく事により「タンザニア・日本間の基礎計算力差」を調べると共に「誤答パターン」を把握し,計算力向上を図るための指導指針を得る事を目的とする.
 また理数科教師のあり方についても考えてみる.

<内容>
・対象学校:
    @ Mkwakwani Secondary School (Parent's School),A Y市立A中学校
・実施日:
    @ 25.Sep.2000 (2000年度 Form1 108名(男54名,女55名)),2.May.2001 (2001年度 Form1 147名(男75名,女72名))
    A Mar.2001 (2000年度 中学1年 131名(男68名,女63名))
・出題内容:
    2項の単純な正負の加減乗除,および3〜4項の少し複雑な正負の加減乗除.
    時間は70分.

<結論>
日本人中学生の基礎計算力はタンザニア人Secondary Schoolの生徒のそれよりもかなり優れている
タンザニアのPrimary Schoolにおける数学教育を見直す必要がある.
・タンザニアの数学レベルを上げていくためには“数学の基礎を固める必要があり”そのためには“言葉の問題”があるが「隊員自らPrimary SchoolやSecondary SchoolのForm1で正負の加減算の基礎をきちんと教えていく」「Primary Schoolの先生にその指導の仕方を教えていく」必要もある
・日本,タンザニア共に
    1.正負の乗除算に関してはほぼ問題無し(正答率 90%〜).
    2.正負の加減算に関しては問題あり(正答率,タンザニア 59%〜,日本 84%〜).
・日本,タンザニア共に「3〜4項の加減乗除算」よりも「2項の減算」の正答率が低くなっている場合もあり応用問題を教える前に基礎をしっかり固める必要がある.
「正±負」「負±正」の解き方を全く理解していなくても「負±負」の正解を得る事ができる
・正しい計算方法だけでなく,以下の間違いパターンを誤答の具体例として挙げながら矯正して行けば基礎計算力の向上が図れると思われる.

   【2項の乗除算】
    T.第1項が同じ符号で第2項のそれが異なる乗除算(正×正と正×負etc)において
      タンザニア・日本共に
       ・第2項が負の方が間違え易い.
       (例.負÷正と負÷負を比べると後者の正答率が低い)

    U.第1項,第2項が異なる符号の乗除算(正÷負と負÷正etc)において
      タンザニア・日本共に
       ・第2項が負の方が間違え易い.
       (例.正×負と負×正を比べると前者の正答率が低い)

        (※T,Uから,第1項の符号に関わらず第2項の−の符号を見落とし易い)
   【2項の加減算】
    V.第1項が正,第2項が負の加減算(正±負)において
      タンザニア・日本共に
       ・第2項の−符号を除き正±正として計算する.

    W.第1項が負である2項の加減算(負±正,負±負)において
      タンザニア・日本共に
       1.式の最初の−符号を外した式を計算しその答に−符号をつける.

      タンザニアのみ
       2.とにかく全ての−符号を除き正+正として計算する.
        (負+正は例外)

    X.第1項が0である2項の減算(0−正,0−負)において
      タンザニア・日本共に
       1.第2項をそのまま答とする.

      タンザニアのみ
       2.「0−正」の時は取敢えず0とする.

    Y.0+負において
      タンザニアのみ
       ・第2項の−符号を除いて計算する.

   【3〜4項の加減乗除算】
      タンザニア・日本共に
    Z.( )の意味は理解しているが加減乗除の計算順序は理解されていない.
      タンザニアのみ
    [.( )を先に計算するがその後は加減乗除問わず単純に左から計算をする.
      日本については傾向わからず.

<結果と考察>
1.全体
 表1に試験結果をまとめたが大体予想した通りの結果になった.

表1. 試験結果まとめ (48点満点)

平均点

最高点

最低点

標準偏差

タンザニア

男女(256名)

39.8

48

16

6.5

日本

男女(131名)

44.5

48

21

5.8

タンザニア

男子(129名)

42.3

48

23

5.5

女子(127名)

37.2

48

16

6.4

日本

男子(68名)

44.6

48

21

5.4

女子(63名)

44.3

48

24

6.3


 まずは男女合わせた結果を見てみると平均点で約5点の差が出た.日本は一人当たり4問も間違えていないのでかなり優秀と言えるが,逆にこれくらい簡単な問題ばかりで一人当たり8問も間違えるタンザニアの方が問題なのかもしれない

 男女別に見ていくと,男子に関しては思ったより差が出なかったが女子で大きな差が出た.
 通常の自分の試験においても男女で差があったのである程度は予想できた結果であり,むしろ日本の女子が良くできるという事が言える.

 次にもう少し詳しく見ていくために上位得点者の割合について表2に,全得点分布を表7にまとめた.

表2. 得点上位者数とその割合 (48点満点)

満点

47

46

上位占有率

タンザニア

男女(256名)

25
(9.8%)
16
(6.3%)
25
(9.8%)
66
(25.8%)

日本

男女(131名)

48
(36.6%)
30
(22.9%)
14
(10.7%)
92
(70.2%)

タンザニア

男子(129名)

23
(17.8%)
12
(9.3%)
18
(14.0%)
53
(41.1%)

女子(127名)

2
(1.6%)
4
(3.1%)
7
(5.5%)
13
(10.2%)

日本

男子(68名)

21
(30.9%)
16
(23.5%)
11
(16.2%)
48
(70.6%)

女子(63名)

27
(42.9%)
14
(22.2%)
3
(4.8%)
44
(69.8%)

 男女を合わせた日本の満点者の割合はタンザニアのそれの3.7倍と大きな差が出た.
 また平均点として比べると2点も違わない男子についても満点者の割合を見ると日本のそれはタンザニアの約1.7倍.2問までをうっかりミスとして46点以上の割合を見ても,同様にタンザニアの約1.7倍平均点の比較だけではわからない大きな差がある事がわかる.

 女子に関しては比較をしようと言うレベルでは無いくらい差が大きい.
 なにしろ日本の満点が43%と男子を上回っているのに対しタンザニアはわずか2名の1.6%.
 46点以上に関しても日本の70%と男子並みなのに対しタンザニアはわずか10%
とこちらも平均点での比較からは見えない大きな差がある事がわかる.

 以上からタンザニアと日本の生徒の基礎計算力には大きな差がある事がわかる.

 ただし女生徒の比較に関してはこの年頃のタンザニア人は家に帰ると炊飯等の家事をする場合が多く男子に比べて勉強時間が取り難いと言う事も考慮に入れなくてはならない

 今回の試験は数学の基礎である上にタンザニアでは既にPrimaryにおいてスワヒリ語で習っている内容なので「Primaryの先生の教え方,また生徒の勉強方法の差が結果に表れている」と言う事が言える.

 また現在,理数科教師でSecondaryのOレベルに派遣されているほとんどの隊員はForm1以外を教えているようだが,今回の結果から国全体の数学レベルを上げていくためには,言葉の問題がある
 ・隊員自らPrimary SchoolまたはSecondary SchoolのForm1で基礎計算をしっかり教えていく
 ・Primary Schoolの先生に基礎計算の指導の仕方を教えていく

 必要もあると考える.

2.問題別
 まず表3に全ての問題における正答率をまとめた.なお( )は全問題中の正答率ワーストランクを表す.
 今回は,正と負の数を用いた2項の加減乗除全ての組み合わせ16通りと第1項に0を第2項に正と負の数を用いた加減算それぞれについて2題ずつ,および3〜4項の簡単な加減乗除の混合したものを出題した.
 加減算よりも乗除算が苦手だと思っていたが実際のワースト10は「減算」と「3〜4項の加減乗除の混合したタイプ」で占められた.
 またその中でも「3〜4項の加減乗除の混合したタイプ」よりも「単純な2項の減算」の正答率が低い場合があると言う事もわかった.
 この事から応用問題よりも基礎問題を重視する必要があると言える.

表3. 問題別正答率

問題

正答率

問題

正答率

タンザニア

日本

タンザニア

日本

1)

−2+5

81%

95%

25)

6×4

99%

100%

2)

4+3

98%

100%

26)

4×(−3)

95%

98%

3)

−5−(−1)

68%( 9)

89%

27)

−5×5

95%

98%

4)

5+(−1)

79%

92%

28)

−3×(−9)

94%

94%

5)

−7+(−7)

71%

88%

29)

7×2

99%

99%

6)

2−5

91%

92%

30)

6×(−2)

94%

96%

7)

−1−2

63%( 5)

83%( 2)

31)

−3×4

95%

97%

8)

4−(−3)

72%

84%( 4)

32)

−4×(−8)

94%

92%

9)

0+4

99%

97%

33)

35÷7

99%

100%

10)

0−3

66%( 7)

87%( 9)

34)

42÷(−6)

89%

92%

11)

0+(−2)

85%

96%

35)

−72÷9

92%

95%

12)

0−(−4)

70%(10)

86%( 8)

36)

−56÷(−8)

93%

93%

13)

−1+5

77%

95%

37)

63÷9

97%

95%

14)

2+3

100%

98%

38)

48÷(−8)

93%

91%

15)

−4−(−2)

67%( 8)

91%

39)

−42÷6

93%

95%

16)

3+(−3)

86%

93%

40)

−40÷(−5)

92%

94%

17)

−2+(−1)

74%

93%

18)

5−2

96%

98%

19)

−6−2

55%( 3)

85%( 5)

20)

1−(−5)

71%

87%( 9)

21)

0+2

99%

98%

22)

0−6

66%( 6)

88%

23)

0+(−3)

82%

95%

24)

0−(−1)

71%

85%( 6)

問題

正答率

タンザニア

日本

41)

4×3−2

95%

96%

42)

4−3×2

54%( 2)

85( 6)%

43)

4×(3−2)

90%

96%

44)

(4−3)×2

94%

97%

45)

12+8÷2+2

60%( 4)

83%( 2)

46)

(12+8)÷2+2

73%

82%( 1)

47)

(12+8)÷(2+2)

92%

93%

48)

12+8÷(2+2)

43%( 1)

87( 9)%

 次にもう少し結果をわかり易くするために表4に問題タイプと正答率をまとめた.
 なお( )は2項の単純な加減乗除の問題(1〜40)についての正答率ワーストランクを表す.

表4. 問題タイプと正答率

問題タイプ

問題番号

正答率

タンザニア

日本

加算

正 + 正

2), 14)

98.8%

99.2%

正 + 負

4), 16)

82.0%

92.4%

負 + 正

1), 13)

79.1%

95.0%

負 + 負

5), 17)

72.7%

90.5%

0 + 正

9), 21)

99.0%

97.3%

0 + 負

11), 23)

83.2%

95.4%

減算

正 − 正

6), 18)

93.9%

95.0%

正 − 負

8), 20)

71.7% (5)

85.5% (2)

負 − 正

7), 19)

59.2% (1)

84.0% (1)

負 − 負

3), 15)

67.6% (3)

89.7% (5)

0 − 正

10), 22)

66.0% (2)

87.4% (4)

0 − 負

12), 24)

70.3% (4)

85.9% (3)

乗算

正 × 正

25), 29)

99.0%

99.6%

正 × 負

26), 30)

94.3%

96.9%

負 × 正

27), 31)

95.5%

97.3%

負 × 負

28), 32)

93.8%

93.1%

除算

正 ÷ 正

33), 37)

98.0%

97.3%

正 ÷ 負

34), 38)

91.0%

91.6%

負 ÷ 正

35), 39)

92.6%

95.0%

負 ÷ 負

36), 40)

92.4%

93.5%

加減乗除

41)

94.5%

96.2%

42)

53.9%

85.5%

43)

89.8%

96.2%

44)

93.8%

96.9%

45)

60.2%

83.2%

46)

73.4%

82.4%

47)

91.8%

93.1%

48)

42.6%

87.0%

【2項の乗除算】
 全てのタイプで正答率90%以上となかなかのできであった.
 タンザニアと日本の比較でもほとんど差は無く逆にタンザニアの方ができているタイプもあり乗除算に関してはほぼ互角と言える.
 また共通して
   T.第1項が同じ符号の乗除算において,第2項が負の方が間違え易い.
    (例.負÷正と負÷負を比べると後者の正答率が低い)
   U.第1項,第2項が異なる符号の乗除算において,第2項が負の方が間違え易い.
    (例.正×負と負×正を比べると前者の正答率が低い)

 と言う傾向がある.
 Uのタイプでは負を( )を使って表していない第1項に負が来るタイプの方が符号を見落とし易いと思っていたがTと合わせて考えると乗除算に関しては第1項の符号に関わらず第2項の−の符号を見落とし易いと言う事が言える.
【2項の加減算】
 表4の正答率ワースト5を見てみるとタンザニア・日本共に全て減算のタイプになっている.
 そこでどのように間違えているのかを詳しく解析していくために,表5に誤答パターンについてまとめた.
 なお,各タイプについて2題ずつ出題しているので右側二つの欄の数字はそれらの合計であり,また%の分母は受験者数ではなく誤答者全体数である.

表5. 誤答パターンとその割合(2項の加減算)

正答率

(タ/日)

誤答パターン

誤答者数/誤答者全体数
(その%)

タンザニア

日本

正+正

 

―――――――――――――――

正答率98.8%

正答率99.2%

正−正

 

―――――――――――――――

正答率93.9%

正答率95.0%

正+負

(82/94)

A

第2項の−を除き正+正として計算

36/92 (39%)

7/20 (35%)

 

混乱して正答に−をつける

19/92 (21%)

7/20 (35%)

 

第2項の−を除き正+正として計算しその答に−をつける

21/92 (23%)

3/20 (15%)

正−負

(72/85)

B

第2項の−を除き正−正として計算

73/145 (50%)

26/38 (68%)

 

混乱して正答に−をつける

39/145 (27%)

2/38 ( 5%)

 

第2項の−を除き正−正として計算しその答に−をつける

24/145 (17%)

7/38 (18%)

負+正

(79/95)

 

混乱して正答に−をつける
(−2+5=−(5−2)=−3)

46/107 (43%)

2/13 (15%)

C

式の最初の−符号を外した式を計算しその答に−符号をつける

39/107 (36%)

4/13 (31%)

 

第1項の−を除き正+正として計算

17/107 (16%)

6/13 (46%)

負−正

(59/84)

G

第1項の−を除き減算も加算に変えて正+正として計算
(混乱して正答に−をつける)

64/209 (31%)

7/42 (17%)

D

式の最初の−符号を外した式を計算しその答に−符号をつける

94/209 (45%)

33/42 (78%)

 

第1項の−を除き正−正として計算

38/209 (18%)

0/42 ( 0%)

負+負

(73/91)

E

式の最初の−符号を外した式を計算しその答に−符号をつける

52/140 (37%)

13/25 (52%)

H

両項の−を除き正+正として計算
(混乱して正答に−をつける)

62/140 (44%)

8/25 (32%)

負−負

(68/90)

F

式の最初の−符号を外した式を計算しその答に−符号をつける

83/166 (50%)

15/27 (56%)

 

両項の−を除き正−正として計算
(混乱して正答に−をつける)

26/166 (16%)

6/27 (22%)

I

全ての−を除き正+正として計算

45/166 (27%)

4/27 (15%)

0+正

 

―――――――――――――――

正答率99.0%

正答率97.3%

0−正

(66/87)

 

第2項そのまま

80/174 (46%)

21/33 (64%)

 

取敢えず0

85/174 (49%)

9/33 (27%)

0+負

(83/95)

 

第2項の−を除いた数

47/86 (55%)

正答率95.4%

 

取敢えず0

22/86 (26%)

0−負

(70/86)

 

第2項そのまま

104/152(68%)

27/37 (73%)

 

取敢えず0

34/152 (22%)

8/37 (22%)

※ 誤答者が少ないため参考値とする.

<正±負>
 第1項が正の場合には第2項も正の場合は特に問題は無いが,負の場合には乗除算時同様第2項の−符号を除いて(見落として?)計算すると言う間違いが多かった.
 具体例を以下に示す.
   A. 5+(−1)=5+1=6
   B. 4−(−3)=4−3=1

<負±負,負±正>
 また第1項が負の場合には正の場合とは少し傾向が違った.
 まずは,タンザニア・日本共に式の最初の−符号を外した式を計算しその答に−符号をつける間違いが目についた.
 具体例を以下に示す.
   C. −2+5=−(2+5)=−7
   D. −6−2=−(6−2)=−8
   E. −2+(−1)=−(2+(−1))=−(2−1)=−1
   F. −5−(−1)=−(5−(−1))=−(5+1)=−6

 E,Fは以下のE',F'の様に
   E'. −2+(−1)=−2+1=−1
   F'. −5−(−1)=−5−1=−6

 第1項が正の時同様第2項の−符号を除いて計算したとも考えられるが,F'の最初の展開で得られる「負−正」の正答率(タン:59.2%,日本:84.0%)がFの最初の展開で得られる「正−負」の正答率(タン:71.7%,日本:85.5%)より低くなっている(Eについて日本はこれに当てはまらないが)ので,ここではD,Fを間違えパターンとした.
 日本はこのパターンが誤答者の半数以上を占めているが,タンザニアにはもう一つとにかく全ての−符号を除き正+正として計算する(負+正は例外)というかなり強引なパターンが目についた.
 具体例を以下に示す.
   G. −6−2=6+2=8
   H. −2+(−1)=2+1=3
   I. −5−(−1)=5+1=6

<0±正,0±負>
 いずれも0+正については問題無いが,ワースト5に入っている「0−正」「0−負」について見ていくと,日本はいずれも第1項が0の減算の場合は2項をそのまま答としている
 一方でタンザニアは「0−正」の場合には少し傾向が違い取敢えず0の方が若干多くなっている.
 また,日本で正答率の高かった「0+負」においては乗除算時同様第2項の−符号を除いて計算する間違えが目立った.
 以上をまとめると,加減算における間違えパターンは
   V.第1項が正,第2項が負の加減算(正±負)において
     タンザニア・日本共に
      ・第2項の−符号を除き正±正として計算する.

   W.第1項が負である2項の加減算(負±正,負±負)において
     タンザニア・日本共に
      1.式の最初の−符号を外した式を計算しその答に−符号をつける.

     タンザニアのみ
      2.とにかく全ての−符号を除き正+正として計算する.
       (負+正は例外)

   X.第1項が0である2項の減算(0−正,0−負)において
     タンザニア・日本共に
      1.第2項をそのまま答とする.

     タンザニアのみ
      2.「0−正」の時は取敢えず0とする.

   Y.0+負において
     タンザニアのみ
      ・第2項の−符号を除いて計算する.

 となる.
 正しい計算方法だけでなく,以上の間違え具体例を挙げながら計算方法について教えていけばもう少し基礎計算力が向上するのではなかろうか?

 ここで余談になるが,この試験を実施する前は加減算の中で「負±負」の正答率がワーストになると思っていたが結果は違っていた.
 最初は理由が良く分からなかったが今回間違えパターンを解析する事によって面白い結果が得られたので,それについて具体例を使いながら書いてみたいと思う.
 まずは,
   −2+(−1)
 について考えてみる.
 これに間違えパターンW−1の前半部(式の最初の−符号を外した式を計算)を当てはめる
   −2+(−1)=−(2+(−1))
 となる.
 ここまでは当然間違っているのだが,更に( )内の式に間違えパターンV(第2項の−符号を除き正+正として計算)を当てはめる
   −2+(−1)=−(2+(−1))−(2+1)=−3
              間違え   正しい
 となり,なんと間違えパターンを組み合わせると正解になってしまうのである.
 負−負についても同様に導く事ができる.
   −5−(−1)=−(5−(−1))−(5−1)=−4
              間違え   正しい
 以上の事から
 「正±負」「負±正」の解き方を全く理解していなくても「負±負」の正解を得る事ができる
 と言う不思議な結果が得られた.
 これが今回「負−負」よりも「負−正」の正答率が低かった一つの理由と考えられないだろうか?
【3〜4項の加減乗除算】
 誤答パターンとその割合を表6に示す.

表6. 誤答パターンとその割合(3〜4項の加減乗除算)

 

誤答パターン,( )は正答率とワーストランク

タンザニア

日本

41) 4×3−2

正答率:95%

正答率:96%

42) 4−3×2

単純に左から計算して得られる2が誤答者の91%
(54%,2)

単純に左から計算して得られる2が誤答者の84%(85%,6)

43) 4×(3−2)

正答率:90%

正答率:96%

44) (4−3)×2

正答率:94%

正答率:97%

45) 12+8÷2+2

単純に左から計算して得られる12が誤答者の52%(60%,4)

先に二つの加算をして最後に除算をして得られる5が誤答者の55% (83%,2)

46) (12+8)÷2+2

先に二つの加算をして最後に除算をして得られる5が誤答者の63%(73%,15)

先に二つの加算をして最後に除算をして得られる5が誤答者の57%(82%,1)

47) (12+8)÷(2+2)

正答率:92%

正答率:93%

48) 12+8÷(2+2)

先に二つの加算をして最後に除算をして得られる5が誤答者の78%(43%,1)

先に二つの加算をして最後に除算をして得られる5が誤答者の47%(87%,9)

 43,44,47の正答率の高さと48の間違えパターンから,双方共に( )の意味合いは理解されているが加減乗除の計算順序が理解されていない事がわかる.
 ここで前述の推測が正しいとすれば41〜48は
   @左から単純に計算すれば正答が得られる.(41,43,44,46,47)
   A左から単純に計算しても正答が得られない.(42,45,48)

の二つに分ける事ができる.
 タンザニアについてはA全ての正答率が@のどの正答率よりも低い事から( )の意味は理解しているがそれがなければ単純に左から計算をしていく傾向にあると言える.
 一方で日本については46の正答率が一番低い事や45も間違えパターンがタンザニアと違う事から残念ながらはっきりとした傾向が掴むことができない

                                                                 以上

表7. 得点分布

男女合計

男子

女子

点数

タンザニア

日本

タンザニア

日本

タンザニア

日本

48

25

9.8%

48

36.6%

23

17.8%

21

30.9%

2

1.6%

27

42.9%

47

16

6.3%

30

22.9%

12

9.3%

16

23.5%

4

3.1%

14

22.2%

46

25

9.8%

14

10.7%

18

14.0%

11

16.2%

7

5.5%

3

4.8%

45

13

5.1%

6

4.6%

7

5.4%

3

4.4%

6

4.7%

3

4.8%

44

18

7.0%

7

5.3%

12

9.3%

2

2.9%

6

4.7%

5

7.9%

43

11

4.3%

3

2.3%

5

3.9%

3

4.4%

6

4.7%

0

0.0%

42

10

3.9%

1

0.8%

5

3.9%

1

1.5%

5

3.9%

0

0.0%

41

9

3.5%

1

0.8%

2

1.6%

1

1.5%

7

5.5%

0

0.0%

40

15

5.9%

1

0.8%

6

4.7%

1

1.5%

9

7.1%

0

0.0%

39

13

5.1%

0

0.0%

5

3.9%

0

0.0%

8

6.3%

0

0.0%

38

12

4.7%

1

0.8%

8

6.2%

1

1.5%

4

3.1%

0

0.0%

37

13

5.1%

1

0.8%

7

5.4%

1

1.5%

6

4.7%

0

0.0%

36

8

3.1%

4

3.1%

4

3.1%

3

4.4%

4

3.1%

1

1.6%

35

16

6.3%

1

0.8%

5

3.9%

0

0.0%

11

8.7%

1

1.6%

34

5

2.0%

2

1.5%

2

1.6%

1

1.5%

3

2.4%

1

1.6%

33

10

3.9%

1

0.8%

0

0.0%

0

0.0%

10

7.9%

1

1.6%

32

7

2.7%

3

2.3%

0

0.0%

1

1.5%

7

5.5%

2

3.2%

31

5

2.0%

2

1.5%

2

1.6%

0

0.0%

3

2.4%

2

3.2%

30

4

1.6%

0

0.0%

3

2.3%

0

0.0%

1

0.8%

0

0.0%

29

5

2.0%

1

0.8%

0

0.0%

0

0.0%

5

3.9%

1

1.6%

28

7

2.7%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

7

5.5%

0

0.0%

27

3

1.2%

1

0.8%

2

1.6%

0

0.0%

1

0.8%

1

1.6%

26

2

0.8%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

2

1.6%

0

0.0%

25

1

0.4%

1

0.8%

0

0.0%

1

1.5%

1

0.8%

0

0.0%

24

0

0.0%

1

0.8%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

1

1.6%

23

1

0.4%

0

0.0%

1

0.8%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

22

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

21

0

0.0%

1

0.8%

0

0.0%

1

1.5%

0

0.0%

0

0.0%

20

1

0.4%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

1

0.8%

0

0.0%

19

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

18

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

17

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

16

1

0.4%

0

0.0%

0

0.0%

0

0.0%

1

0.8%

0

0.0%

256

100%

131

100%

129

100%

68

100%

127

100%

63

100%



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