「無人島の殺人」
■ リゾート地への招待客 無人島へ 「ちょっと松井、何で俺が無人島くんだりまで行かなきゃいけないの?」
西岩家は港で、煙草を吹かしている。
「いいじゃないですか、人数が合わなかったんですから。」
松井は近くの商店街のくじ引きに見事当選し、
新しく出来るリゾート施設の無料券が当たったのだが、
恋人の雪乃は用事があり、来られないというので、
仕方なく、西岩家を誘ったのだった。
「まったくさぁ、俺は忙しいんだよ。」
「何言ってるんですか!!
僕がくじ引き当たったっていったら、
僕をトイレに閉じ込めてその当選券を奪おうとしたじゃないですか!!」
「だって、もっといいもんだと思ったんだもん。」
「だって・・・じゃないですよ!!なにが・・"もん"ですか!!
やっぱり、西岩家さんを誘ったのは間違いだったなぁ。」
この二人が行くリゾート施設は、今から2年前に開発がはじまった。
そして、今日6月12日、3週間後に迫った一般公開に向けて、
リサーチとして15人の人間をその施設に招待したのだった。
リサーチは2泊3日の行程で行われる。
よく見ると、いくつかのグループに分かれて、
招待客と思われる人間が迎えの船を待っている。
男だけのグループ、女だけのグループ、
男女混合のグループ、そして、むさい男の二人組み。
それで全部のようだ。西岩家は煙を口から吐き出す。
今、西岩家たちがいる港に迎えの船がくるはずである。
リゾート施設がある場所は無人島となっており、
その関連施設だけしかない。
総事業費、50億円をかけて造られ、
宿泊施設は20から成るコテージとホテルである。
他には、遊園地、レストラン、など遊びには困らないものがそろっている。
このリゾート施設の目玉は無人島であるが故の、
四方八方にある海である。
それぞれの方角の海は役割がわかれており、
北はサーフィン、南は遊泳、西はビーチバレーやビーチサッカーができ、
東は港となっている。
つまり、それぞれの方角の海が専用の遊び場となっているのだ。
一般公開は夏に向けて、が予定である。
西岩家たちはその無人島へ向かう船を待っていた。
まもなく、船の到着時刻である。
「この度は当施設のご利用まことにありがとうございます。」
今回の総責任者、水谷 五郎(みずたにごろう)は丁寧に挨拶した。
「今回は皆様にモニターとして、当施設をご利用いただくわけですが、
すべての施設が使えるわけでありません。
遊園地の一部の遊具は点検中のために、
ご利用いただけないことになっております。その辺はご考慮ください。」
現在は船の上である。お客は皆、水谷の話を真剣に聞いている。
「どれが使えないんでしょうね、西岩家さん。」
と、松井は西岩家に聞く。・・・・・が、
西岩家は松井の近くにはいなかった。
「あれ?西岩家さん・・・?」
松井はきょろきょろと西岩家を探す。
いつものことである。西岩家はすぐにいなくなる。
お客は皆、ホールに集まっていた。しかし、
西岩家は一人デッキで風に当たっていた。
(俺、船は苦手なんだよなぁ)
西岩家は船酔いをよくするタイプだった。
(しかもこの船すげー揺れるし・・・)
「ふぅー。」西岩家はげっそりしてため息をつく。
「西岩家さん、こんなこところで何してるんですか?」
「俺ダメなんだよ、船。船酔いして・・・。」
「えっ!?そうなんですか?ちょっと意外・・・」
「ふん、悪かったな。」
「僕は戻ってますよ。」そういって松井は客室ホールの中へ戻る。
客室ホールではお客が談話を楽しんでいる。
五十嵐 徹(いがらしとおる)、藤沢 高夫(ふじさわたかお)、
西森 真佐美(にしもりまさみ)の3人は同じ大学のサークルのメンバーである。
彼らのサークルは今回のこのリサーチを通じて、遊ぶところを探しにきたのである。
「結構よさそうな船じゃない。」と五十嵐。
「でも、そこに行ったら何して遊ぼうかなぁ〜。」藤沢はうれしそうだ。
この3人のちょっと後ろのほうには6人のグループがいる。
このグループは男だけで、亀井 博之(かめいひろゆき)、
本村 正敏(もとむらまさとし)、片山 保(かたやまたもつ)、
和久井 雅行(わくいまさゆき)、野村 陽一(のむらよういち)、
柳田 俊郎(やなぎだとしろう)の大学生である。
彼らは亀井の家で遊んでいたときに単なる勢いで、
遊びに行こうということになり、この船に乗っている。
単なる思いつきで当選券が当たってしまうのだから、
若さと勢いというものは、時に幸運を呼びこむものなのであろうか。
さらに、この6人のグループの横には4人の女だけのグループがいる。
草田 真理子(くさだまりこ)、舟木 律子(ふなきりつこ)、
加賀山 那美(かがやまなみ)、七瀬 麗子(ななせれいこ)。
これが全メンバーである。合計15人。
やがて船はリゾート施設がある無人島へと到着するのだった。
■ リゾート地 6月12日 PM4:30。港(東の海)。
この企画の総責任者、水谷 五郎によると、
島へ到着したのがPM4:00。そして夕食がPM7:00。
その間は自由に施設を使って良いとのことだった。
また、使えない遊具はジェットコースターなど、スピードが出て、
細かい検査や調整が必要なものであり、
それ以外は許可さえとれば乗り放題らしい。
この島での諸注意などが、今、終わったところであった。
「俺たちさぁ、勢いで来ちゃったけど、これからどうする?」
本村 正敏は煙草を吹かしながら言った。
「どうするって・・・遊ぶしかないでしょ!」
楽観的な亀井 博之はあたりまえといった顔でみんなを見渡した。
「だよな、んじゃ、どこにいく?」と和久井 雅行。
「まず、さぁ、さっき4人の女の子いたじゃん。
あの子達に声かけようよ。せっかくだし。」柳田 俊郎は女好きらしい。
野村 陽一と片山 保はみんなに任せるといった感じだ。
「よし、まずはあの女の子達を探すことにしようぜ!」
新しい煙草に火をつけながら、本村は言った。
同時刻、西の海。
「西岩家さん、どっか行きましょうよ。」
松井はつまらなそうに、西岩家に話し掛けた。
「来てるじゃないか、海に。泳げばいいだろ。」
他方、西岩家はめんどくさそうだ。
「そうじゃなくて、もっと楽しみましょうよ。」
「あーー!!もう、俺は船酔いで気持ちが悪いんだって!!」
「全く、西岩家さんはいつも"酔って"るんだなぁ。
普段はお酒で、今日は船か・・・。」
「・・・悪かったな。」
最近、松井はなかなか口で西岩家に圧倒されなくなってきていた。
それとも、西岩家に以前の非常識が薄れてきているのか。
だとすれば、理由はただ一つ。
西岩家は赤く染まり始めた海を見つめながら、
八重平 響子、つまり自分の娘のことを考えていた。
PM7:00。ホテルのレストラン。
食事は全員が集まって、ホテルのレストランで済ますことになっていた。
それぞれがテーブルにつき食事を楽しんでいる。
亀井以下6名のグループは女性4名のグループと一緒である。
「でさぁ、今度うちの大学で文化祭やるんだ、よかったら来ない?」
「え〜、どんなことやるの?」
「俺らは模擬店出すの。めちゃめちゃうまいお好み焼き。」
「いってみたいね〜、那美ちゃん。どうする?いこっか?」
「ぜひきてよ、すげ〜、おもしろいからさ。」
なんだか楽しそうだ。松井は横目で10人を見ていた。
「ごめん、俺ちょっと煙草吸っていい?」
「本村、お前吸い過ぎだって。」
「え〜、本村さんはヘビースモーカーなの?」
「すげーよ、こいつ。毎日40本って決まってるもん。」
「40本!?」
「本村、お前、2泊3日だから・・・え〜と、6箱くらい持ってきただろ?」
「いいじゃねぇかよ、きちんと6箱持ってきてたって。」
「和久井さんは煙草吸わないの?」
「吸うけど、こいつほどは吸わない。でも、食後の一服はうまいんだよな。
な!!そう思うだろ、野村。」
すでに煙草を吸っている野村は幸せそうな顔を見せる。
「みんな煙草吸うんだね。」
「そう、だからいつも俺らが集まると灰皿は2時間ぐらいで一杯になる。」
「でも、亀井のうちの灰皿はでかいから、簡単に一杯にはならないよな。」
「そうそう、俺んちの灰皿はね・・・・」
今度は煙草の話で盛り上がっている。
「松井、食べないのか?」
フォークとナイフを持ったまま、向こうを見ている松井に西岩家は声をかけた。
「え!?あ!食べますよ・・・あれ?肉減ってません?」
「俺は知らないよ。」と西岩家。
「おかしいな、もう3切れ残ってたはずなのに・・・1切れしかない。」
「お前の記憶違いじゃないの?」
松井の肉を消化してしまった西岩家はとぼけていた。
■ 表と裏 孤立 (まずはこの島と外界を遮断しないとな。)
私は早速計画に沿って行動をはじめた。
予想していたよりも大規模な企画で、予定とはちょっと異なりそうだが、
まだ、範囲内に収まっている。何も問題はなかった。
私はまず、乗ってきた船の機器系統を壊すことからはじめた。
これで、簡単には本土に戻ることは出来ない。
単なるリサーチということで、警備員も1人しかいない。
いるのは支配人他、数名とコック、整備士、など
客や遊具に気を配るような類の人間だけである。
もし、警備員が数名いたらこの計画はなしにするところであった。
電話線、無線機、船の電気系統など、
外界と連絡が取れそうなものはすべて破壊した。
無論、携帯電話の電波はとどかない。
(これで、お前らはこの島に孤立したことになる。)
孤立させれば、時間を稼げる。
おそらく、2泊3日以上になれば、
1週間以内に異変を感じて助けがくるだろう。
それまでにすべてをやってしまわなければならない。
時間は十分にある。
まだ始まったばかりだ。
私は確固たる自信を持って次の行動に移った。
いよいよ、犯人が動き出しました。
我らが西岩家はどう動くのでしょう?
つづきをどうぞ。