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『エロティシズム』フランチェスコ・アルベローニ/泉 典子訳(中公文庫)

ときどき「もっと早く読んでいれば!」と運命的(おおげさ?)とも言える本に出会う事があります。僕にとっては本書がまさにその本です。本音を言えば、このタイトルから扇情的な内容を期待して手にとったというのが正直なところです。ところがパラパラと読んでみてすぐに、この本は僕にとってその百倍も意味がある本だと気がつきました。人生を読み解くカギになる本でした。今あらゆる事を本書をテキストに読み解いてしまっています。「女はなぜ?」「男って…」と恋愛によるの永遠の悩みが「ユリイカ!」とばかりにスッキリ見えてしまう気がします。著者は社会学者なので男女のエロティシズムに対する感性の違いを、その行動原理から読み解いていきます。それは「こうあるべき」というモラル側面からの考察ではないのでユニークであるとともに理性的で、納得のいくものです。男と女とそのあまりに違う感性ゆえにお互い幻想を求めてしまいがちな悲劇を避けるためにも有用な本ではないでしょうか。ただ原書が書かれたのが1986年のしかもイタリアなので「いまの日本の現状とは少し違うかも…」と思える部分も多少あり、また現実には女性的な男性や、またその逆のケースもあり、男・女というジェンダーが変化しつつある事を頭に入れて読む必要はあるかもしれません。しかし、それを割り引いてもこれは重要な本です。推薦!

『恋愛日和』古内東子(祥伝社)

大学在学中にデビューして以来あまたのラブソングを世に送り続け、OLのカリスマと呼ばれるシンガーソングライター古内東子のエッセイ集。(ちなみにタイトルに『Vol.2』とついてますが彼女の本はこれのみ、Vol.1はパフィー、Vol.3はふじいふみやだそうです)
よくあるアーチストが恋愛のいろんな側面について思いを綴った本です。ファンアイテムとして彼女の恋愛感がよくわかる一冊です。
この本、もちろんファンが彼女の人となりを知るための好エッセイ集となっているのですが、上記の『エロティシズム』をテキストにして読み解くと(それはファンのすることではない!という声はごもっとも)とても興味深いものがあります。その歌詞から多くの女性に支持される古内東子のロマンチックな恋愛感ですが、その想いは永遠に成就する事はないのかもしれませんね。男の、理性とは別の行動原理を前提にしてしまうと。…ちょっと悲しい?

『失われた宇宙の旅2001』アーサー・C・クラーク/伊藤典夫訳(早川文庫)

高校時代に、郷里のいまはなき古いロードショウ映画館で映画『2001年宇宙の旅』を見て以来『2001』という文字に異常に反応してしまうdigital inkです。
小説『幼年期の終わり』や『黄金の泉』なども好きなのですが、ぼくには『2001年宇宙の旅』の小説版がSF作家クラークの最高傑作に思えてしまう。本書はクラークがキューブリック監督と共に、映画『2001年宇宙の旅』のシナリオを作っていく過程の裏話と、その段階で捨てられたストーリーを集めた本です。この破棄されたストーリー部分の一つ一つがけっこう長くて、映画のサイドストーリーとして読めるぐらいです。(ディスカバリー号出発前に乗員のために開かれたパーティー部分なんかは例の『ミッショントゥマーズ』に引用されてる気がします)これを読むまで忘れてましたが、映画『2001…』では2001年の(テレビ電話やニュース番組以外には)地上社会は全く描かれてなかったんですね。クラークの欲求不満はわかるけれども、この裏話&遺棄エピソード集を読んで、改めて現実に完成した映画版と小説版の『2001年宇宙の旅』の完成度の高さを再認識しました。
それにしても2001年、とうとうあと1カ月とちょっとで来てしまうんですねぇ…シミジミ。(2000年11月22日)