Aは28歳。営業で就職して今年で5年目である。遅ればせながら、最近ようやく仕事がつまらなくなってきた。世間的には入社3年目くらいで退社する人が多いのだが、Aは人よりワンテンポ遅い。気持ちの変化も遅ければ仕事も遅いというダブルパンチで、営業成績も落ち気味である。そのくせ、仕事がつまらないため「外回り」と称して冷房の効いた喫茶店で時間を潰すので、このごろ体調がおかしい。どうやら風邪をひいたようだ。

 そんな7月のある日、Aは今日も喫茶店で時間を潰し、終業時間ギリギリに会社に帰ってきた。

 「ただいま戻りました……え、みんな帰るの?あぁそう。お疲れさま……飲み?あ、ごめん、今日は帰るわ。何か体調悪くってさ。働きすぎだな、はは……あぁ、お疲れ……はぁ〜あ。ちぇっ、何でみんなそんなに仕事やってられんだよ。つまんねーじゃねぇかよ。ノルマ達成するためだけに働くなんてやってらんねーよ。あーやだやだ……あ!係長!お疲れさまです!……申し訳ありません、どうもいい感触がなくって……はい?呼び出し、ですか?あ、行きます……何だろ……あ、Aです。失礼します。部長、お呼びでしょうか?……ハイ、申し訳ございません。体調を崩し気味ということもありまして、思ったより話が進まず……え?こっちに来い?何でしょうか……あ、コレ、知ってますよ。大学時代、クイズ研でしたから。コレ、完成した時は発明した外科医ルイの名前から【ルイゾン】とか【ルイゼット】と呼ばれてて、1792年にペルチェというおいはぎに対して初めて使われたんですよ、コレ。一般的には、初めて使用を提案した医師ギヨタンの名にちなんでギロチン……エ?何するんですか、ちょっと、離してくださいよ!やめて下さいって!……ああ!やめて!やめろ!」

「おはようございます、係長。……あれ?Aの机は?」
「ああ、B、おはよう。A?あいつならクビになったよ」





公に出す文章作品としては正真正銘、初めての作品である(記憶に誤りがなければ、だが)。

 何のことはない、「(会社を)首になる」のと「斬首される」というのを引っ掛けただけのダジャレ作品だ。

 ただ、神戸児童殺傷事件などを連想するのが可能であるため、少々(どころじゃないかな)ブラックなものになっている。まあ、殺人事件が起こるミステリィではこのくらいは朝飯前だが。そういえば神戸での事件も朝食の時間よりは前だった。自粛すべきかな。

 とにかく、そんなブラックな作品になってしまったので(それを思いついてしまったのは松村だ)、タイトルも堂々と「ブラックだ」と言っている。まあ、これもくだらないダジャレだ。友人黒田氏のニックネームが「black」だったから、それに続けて「遊撃手(short)」「須藤リー(story)」とした。「須藤」は「すどう」ではない。「すとう」であるところがミソだ。タイトルの発想としては『夢・出逢い・魔性:You May Die in My Show』と同じ。もちろん、森博嗣の思考法は分からないから、完全に同じかどうかは知ったことではない。

 とにかく、そんな作品だ。こんなのが処女作なんだから、創作能力としての文才はたかが知れている。次回作が生まれるかどうかは、神のみぞ知るといったところか(神様だって分からないだろう)。もし次の作品が生まれるのであれば、そのときはこんなブラックな内容ではなく、明るくコロッと引っ掛かるようなものを作りたい。

 書いてから思ったのだが、「(会社を)首になる」の語源は、文字通り「斬首」だったのではないか。だとすれば、この作品はダジャレ以下ということになる。そのままなのだから。おそらくその可能性が高い。最悪だ。笑いはおろか、「なるほど、そういうことか」という感覚も全く無く、「何のこっちゃ?」というだけの反応しか生まれないだろう。感想を聞くのが恐い。聞かなくても分かる。

 ちなみに、この作品の初掲載媒体は(このホームページを除けば)早稲田大学クイズ研究会の会報『RADAR』となる予定(内容がQ倫と呼ばれる倫理委員会に引っ掛かっていなければの話だが)。読者がクイズ研究会会員だということで、少々クイズチックな内容にしている。

 ギロチンのいわれについては、松村が加入しているクイズ問題共有サークル『カード倶楽部』で共有している問題の中から、「解答:ギロチン」で検索して引っ掛かったものを参考にした。その意味では、鈴木舟太氏・諏訪好氏に問題作成者として感謝しておきたい。