長嶋茂雄 救済計画
〜 Rescue Shigeo!〜
Short Story #3
by Ryosuke MATSUMURA
2001.09.
「んー、マツイにですねー、いわゆるひとつの、チームのビッグブラックポール、ですか?大黒柱ですねー、これになってほしいわけでしてねー」
「まだ効果は現れないようだな」「もう少しですね」
ここは音声研究所。たくさんのコードや器具を頭や口につけて我々の前に座っているのは、あの巨人軍監督ナガシマシゲオだ。我々に託された使命は、彼が人と話す上で大きな障害となる、俗に言う「ナガシマ語」を矯正し、彼にごく一般的な標準語をしゃべらせることなのである。研究員の1人が、彼の前に1枚の皿を差し出して聞いた。
「監督、この皿に乗っている魚は何でしょうか?」
「んー、魚偏にブルーでサバですか〜」
「ダメです所長。もう少しレベルを上げてください」
私はいくつかのバルブを回して、ナガシマにより強いエネルギーをかけた。研究員が、先程とは別の質問をする。
「監督、マツイにはチームの何になってほしいとおっしゃいました?」
「マツイにですか〜?え〜チームのビッグ…大黒柱になってほしいわけでして〜」
「所長!効果が現れてきました!もっとレベルを上げてください!」
よし。私はさっき回したバルブを勢いよく最高値にまで回した。
バキッ!
勢いよく回したせいでバルブが壊れてしまった!このままではナガシマに過大なエネルギーがかかりっぱなしになってしまう。どうにかしなければ……。私は目の前に並ぶいくつものバルブを闇雲にぐるぐる回した。
「ウルフヨシノブには、もっと自分の中の闘志を、こうバシッと出してもらって、バットをガッと握ってビュっと」
くそ、元に戻ってしまった!ぐるぐる。
「ビュっと振ってほしいと思っているわけで、私は彼のスイングがチームに勝利をもたらすと信じている次第です」
しめた、標準語になってきたぞ!ぐるぐる。
「もちろん彼だけではなく、清原ですとか、江藤や江藤!ワシの野球をやってもらうためにゃ、パワーだけではのうて頭も使ってもらわなアカンのや」
「しまった、標準語を通り越してノムさんになってしまった」
いや、アイデアはいいと思ったのだが……。「長嶋茂雄語を矯正。標準語に救済したと思ったら、なぜか野村克也語に」というアイデアは悪くないのだが、それを実際に文章にするのが難しかった。一番難しかったのは、長嶋・野村両監督の口調だ。ある程度のイメージはあるものの、実際にそういう喋り方をしているかどうか分からないのだ。野村監督の一人称が「ワシ」であるということは、野球通の友人足立氏に確認をしたのだが、それ以外は全く松村のイメージでしかない。
このテーマは、かつて『CM NOW』という雑誌の【四百字甲子園】というコーナで出されたお題だった(ただし英文タイトルは松村のオリジナルだ)。四百字詰め原稿用紙1枚分のショートショートを競うコーナで、「何か短いストーリィを書いてみようか」と思っていた松村にはちょうどよいテーマである(ため、字数制限にはこだわらなかった)。隔月発行の雑誌だったから、他にもいくつかお題はあり、そのうち文章化に取り組みたいと思っているが、まあ期待しないで待っていてもらうとよいだろう。
こんな感じで短いショートショート(重複表現)は何とか書けるものの、長編小説や戯曲は書けない。文章力がないと言われればそれまでだが、あまり気にはしていない。そのうち書けるかもしれないし、一生書けないかもしれない。一つ言えることは、書いた場合、最初にその作品を読めるところはこのホームページだということくらいか(雑誌に応募したり、このURLのホームページ自体を続けていなかった場合を除く)。まあ期待しないで待っていてもらうとよいだろう。