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Identifying the Japanese population in Australia (英文) / オーストラリアにおける邦人一般人口の抽出方法 (和訳)
(Annual Scientific Meeting of the Australasian Society for Psychiatric Research, Adelaide, 2000)
質問票が長いと回答率は低くなるか? ― シドニー在住邦人一般人口を対象とした郵送精神保健調査から
(第23回日本社会精神医学会, 盛岡, 2003)
オーストラリア在住邦人のQOLとメンタルヘルス − 一般人口集団調査の方法論と初期解析結果
(第22回日本社会精神医学会, 千葉, 2002)
滞在期間が長くなれば、精神的不健康は減るか? − 質問紙法による海外在住邦人の横断的一般人口集団調査
(第23回日本社会精神医学会, 盛岡, 2003)
オーストラリア在住邦人のQOLとメンタルヘルスに関する研究
2003年3月5日
第23回日本社会精神医学会(盛岡)にて口演発表
質問票が長いと回答率は低くなるか?
シドニー在住邦人一般人口を対象とした郵送精神保健調査から
高田浩一 1) 2)
1) 長崎県離島医療圏組合対馬いづはら病院精神科
2) オーストラリア国立大学精神保健研究所
抄録
【目的】自己記入式質問票を用いた横断的精神保健調査において、単回調査でできるだけ多くの情報を得ることができるよう、予備調査を行って至適な調査票の長さを決める。
【対象】シドニーの電子的個人別電話帳から日本人の姓をethnic identifierとして無作為抽出した414世帯。
【方法】対象世帯を無作為に3群に分け、それぞれに8頁、16頁、24頁の精神保健に関する自己記入式調査票を郵送し、回収率および回答者の属性の違いを調べた。
【結果】回収率は、順に、47.2%、40.4%、41.9%であり、3群間に有意な差はなかった。有効回答率は、順に、41.6%、33.7%、36.6%であり、3群間に有意な差はなかった。有効回答者140名(順に、58名、41名、41名)の属性は、性比(女性/男性)が、順に、1.32、1.41、1.41、年齢が、41.2±10.9歳、45.0±11.4歳、41.4±10.8歳、滞在期間が、8.5±8.1年、9.4±6.6年、9.4±8.8年、永住者の割合が、65%、54%、61%、大学卒者の割合が、51%、65%、54%、就労率が、54%、56%、56%であり、いずれも3群間に有意な差はなかった。また、Culture Shock Questionnaire (Mumford) の得点は、順に、6.7±4.7、5.3±4.1、5.8±3.5、WHOQOL-BREF (WHO)によるQOLの得点は、3.66±0.51、3.81±0.57、3.61±0.37、GHQ-12 (Goldberg)が4点以上で精神的不健康を示す者の率は、12.1%、12.2%、12.5%であり、いずれも3群間に有意な差を認めなかった。
【考察】回収率や回答率の良否は質問票の量のみに依存するものではないが、一般に、分量が多いと回答率が低くなるとの考えから、研究者側が必要以上に質問票の内容を切り詰めてしまうことも少なくない。当研究では、回収率・回答率のみならず回答者の属性にも有意な差がでない範囲内でできるだけ多くの情報を得ることが可能な「長い」調査票が作成可能であることを示した。
本文

【目的】
自己記入式質問票を用いた横断的精神保健調査において、単回調査で、できるだけ多くの情報を得ることができるよう、予備調査を行って至適な調査票の長さを決める。

【対象・方法】
対象はシドニー在住の日本人。対象者世帯を抽出するために、日本人の姓の上位222の姓を用いて、現地の電子的個人別電話帳を検索した。これは日本国内では人口の約50%にあたる。抽出した1278世帯から、約1/4にあたる414世帯を無作為抽出し、これをさらに3群に分けて、8頁・16頁・24頁の自己記入式質問票を郵送。回収率・有効回答率、回答者の属性等を比較した。

[質問票の構成] 3種類の質問票の構成の違いはスライドに示すとおりで、長さの違いは、主に精神症状を問う部分と精神保健意識に関する部分に依る。

[尺度1] 文化変容尺度はMinasらのMigrant and Settlement Questionnaireに準拠し新しく作成したASQの中からconceptual scoreを用いた。点が多いほど文化変容の度合いが強いことを意味する。
カルチャーショック度はMumfordのCulture Shock Questionnaireを用いた。点が多いほど、カルチャーショックの度合いが強いことを意味する。

[尺度2] 精神的健康度はGoldbergのGHQ-12を用いた。点が多いほど精神的不健康を表し、4点以上は何らかの精神的問題を抱えているとされる。
QOLはWHOのWHOQOL-26を用いて測定した。5つのドメインからなるが解析では平均スコアをみた。これは点数が高いほど、QOLの主観的評価が良いということを示す。

【結果】
[グラフ] 回収率は、40.4%〜47.2%であり、3群間にも、どの2群間にも有意な差はなかった。有効回答率は、33.7%〜41.6%であり、3群間にも、どの2群間にも有意な差はなかった。

[属性] 有効回答者140名の属性は、性比が、1.3〜1.4、平均年齢が、41〜45歳、滞在期間が、8.5〜9.4年、永住者の割合も、54〜65%、大学卒者の割合も、51〜65%、就労率も、54〜56%であり、いずれも3群間に、またどの2群間にも有意な差はなかった。
Culture Shock Questionnaireの得点は、5.3〜6.7、QOLの得点は、3.6〜3.8。GHQ-12が4点以上で精神的不健康を示す者の率は、12.1〜12.5%であり、これら3つの尺度で示されるアウトカムはいずれも3群間に有意な差を認めなかった。

【考察】
回収率や回答率の良否は質問票の量のみに依存するものではないが、一般に、分量が多いと低くなると考えられがちである。
Foxらは、郵送調査の回答率に影響を与える因子について82の論文をメタ分析し、回答率を上げる要因としてスライドに示す6因子を挙げている。
今回の調査では、このうち、調査主体が大学の研究所であることや、ハガキによるフォローではないが調査票を入れた2通目のリマインダーを送付するなどしたことが、プラスの要因となった。
さらに、調査のテーマが「在外邦人」であり、調査対象となった人たちにとって、他人事でなく自らのこととして興味関心を持ってご協力いただけたからであろう。

【結語】
質問紙法では、調査票が長ければ回答率が低くなるとの考えから、研究者が必要以上に内容を切り詰めてしまうことも少なくない。しかし、当研究で示したように、質問票が長くても 必ずしも回答率は低下しない。可能であれば、この点について予備調査を行うことで、回収率・回答率のみならず回答者の属性にも有意な差がでない範囲内で、できるだけ多くの情報を得ることが可能な「長い」調査票が作成可能である。
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