第二話「らない人」


『あんた前にもそんなことあったじゃない』
前回の電話の最中、母が言いました。
「いつ?」
『ほら、ばーちゃんの時。』
そんなことを言われても、私はその頃3歳。 そんな昔のこと記憶にない。 「わたしなんかやったの?」
『覚えてないの?おかーさん本当に怖かったんだから。』
そして母の口から19年前の出来事を聞いたのです。

それは祖母が入院していた時のことです。 母は夜が怖かったと言います。 というのも私が
「誰かがいる。怖いよう。怖いよう。」
そう言って泣いていたというのです。
「誰がいるの?」
と、聞いた母に私は答えました。
「わかんない。男の人。でも知らない人。怖いの。こっち見てるの。」
もちろん私のいう「誰か」は、母には見えません。
そんな日が幾日か続いたある日、祖母が亡くなりました。 するとその日を境にぱったりと私の夜泣きがなくなったというのです。 「もうあの人いないの?」
「うん。いないよ」
そう言って私はニコニコと笑っていたそうです。
しかし、母が本当に怖い体験をするのはもう少し後だったのです。


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