第五話「だめし」


私は肝だめしが嫌いです。
その手の幽霊屋敷や廃墟、いわくつきの建物のたぐいに興味本位で行くことは絶対にイヤです。

小学6年生の夏、学校でキャンプをやりました。もちろん夜には肝だめしです。先生に怖い話を聞いた後、玄関から一番遠い、6年の教室に置いてあるジュースを取りに行くことになっていました。私たちのグループも父母たちの仕掛けに遭いながら、無事に教室まで辿り着きました。本当は教室の電気をつけてはいけないルールだったのですが、グループの一人が「暗いと怖い」と言い、電気をつけました。 カーテンが開いたままになっていたので、教室の中が反射して窓ガラスに映っています。 その窓を見た瞬間、顔から血の気がひくのを感じました。
「早く行こうよ。電気つけてるのわかったら怒られるかもよ」
私はみんなをせかし、教室を出ました。そしてなかば走るようにして帰り道を急ぎました。
「どうしたの? なんか元気ないね」
テントの所に戻ってきた後、友達にそう言われました。でも理由なんて言えません。言えるはずがありません。

5人で行ったはずなのに、教室の窓ガラスには6人映っていたなんて。

電気をつけたとき、窓ガラスには6人の人間の姿が見えました。そのなかで肩ぐらいまでの髪を、真中わけして2つにしばった女の子の後姿が見えたのです(そのときそのような髪型をしている人はいませんでした)。私たちからそう離れたところに立っているわけではなく、むしろ私たちのすぐそばにいるはずの女の子。後姿が見えたということは、こちらを向いているはずの女の子。その場にいるはずのない6人目の女の子。帰り道は後ろを振り返ることも、グループの人の顔を見ることもできませんでした。もしあのこが追いかけてきたら、もしとなりにあのこがいたら・・・そう考えると怖くて怖くて玄関までの道がいつもより長く遠く感じました。


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