世紀末ヒーロー伝説vol.1
Presented by Mr.カミカゼ
「事件だぞ!ヒーロー!」
おやっさんがヒーローに向けて叫んだ。
ヒーローと呼ばれた白い全身タイツの男が、食べていたカップラーメンにむせながらやってきた。
「3丁目の豆腐屋横の路地を50メートルはいったところだ。急げ!」
「イエッサー!」
ヒーローは麺を鼻から垂らしたまま、愛用のサイクロン号(自転車)に乗って現場へと向かった。
現場では、これまた怪しい黒い全身タイツに覆面姿の男が小学生に絡まれていた。
「ええい、近寄るな!うっとうしい!」
だが、小学生たちには、言葉が通じていないようだった。
「ねえ、覆面とってー」
「変なカッコー」
「みんな、こいつ持ってかえろー」
「うわっ、やめてくれ!」
あわや小学生たちに覆面男が拉致される直前!
チャリチャリチャリ…と自転車の音が聞こえてきた。ヒーローがようやく到着したようだ。。
どうやら全力で来たらしく、思いっきり息が上がっている。
「…ハァハァ、そ、そこの覆面黒タイツ男、ハァハァ、この正義のヒーローが、ハァ、おまえの悪…ゴフッゴフッ!」
どうやら、むせたようだ。
豆腐屋のおばちゃんが、怪訝そうな顔をしながらも水を持ってきてくれた。
「す、すみません。ありがたくいただきます。」
覆面のまま水を飲み、とりあえず落ち着くヒーロー。
小学生達も新手の登場に不利だと感じたのか、その場からそそくさと退出した。
「というわけで、覚悟しろ!必殺…」
どういうわけだろうか。いきなり必殺技を出そうとするヒーロー。
「ちょっとまったー!」
覆面黒全身タイツ男が突然叫んだ。
「え、なに?」
律義に技を止めるヒーロー。
「必殺ってことは、必ず死ぬんだよな。ヒーローは嘘ついちゃいけないよな。」
「うっ…」
「そういや、俺が何やったかも確かめずにいきなり攻撃したなぁ。それも必殺技で。」
「ううっ…」
「正義のヒーローが見ず知らずの男を殺しちゃっていいのかい?」
さらに、畳み掛けるように言う覆面黒全身タイツの男が叫ぶ。
「正義のヒーローたるものが、人を見掛けで判断していいのか?」
「うわぁぁっ!」
ヒーローは泣きながらサイクロン号に乗って帰っていってしまった。
ヒーローが完全に見えなくなると、男は覆面を取った。
そこにはなんと、おやっさんの顔があった。
「まだまだ甘いな、ヒーローよ…」
おやっさん、いや、先代ヒーローはそう呟き、沈む夕日を眺めていた。
がんばれヒーロー、まけるなヒーロー、輝く明日はきっとある…はずだ。