1999.4.5 ファースト・キス by Sinto

キスフェチ?の僕にとってファーストキスというのは昔からの憧れだった。

見知らぬ者同士だった二人が出会ってからのシナリオっていうのはどんな人でも大体同じだと思う。一緒に買い物や映画、ドライブ、食事などのデートを重ね、普通にお喋りをするようになったころ不意にお互いが無口になる瞬間に起こるのがファーストキスという出来事である。

ファーストキスと一言で言っても、本来的な意味で本当に人生初めてのキスもファーストキスだしその人ごとに初めてするキスもファーストキスであるから言葉というのは難しいが、はるか過去に済ませたファーストキスも、大人になってからのファーストキスも僕にとってはどちらも同じ様に大切な出来事である。

言葉の持つ力というのは確かに強力であるけれども、言葉では伝えきれない部分というのが人間には必ずあるんじゃなかろうか?

食事を終えて川縁のベンチに腰掛けてゆるゆると流れる水面を眺めていると、ふとそれまで快活にお喋りをしていた二人が無口になる。そのうち男の左手が女の手を取り、男の右腕が女の肩に回る。そこから先の二人は、本当にスローモーションでも観ているかのように芸術的なほど美しくて自然な動きだ。きっと言葉では伝えきれない部分を、お互いが直接口移しに受け取っているんだろうと僕は思う。

だからこそファーストキスというのは大切にしなければならない。と言っても、なにも場所にこだわる必要はないが、あくまで自然の流れのままに、わざとらしくなく、春風のようにやさしく…。これがキスフェチ?たる僕のファーストキスへのこだわりである。

だから僕の場合はたいへんである。なにしろ時間がかかる。たいていの場合は付き合い始めてから4ヶ月頃にようやくこの出来事が起こるのであるが、近頃の女性はそんな僕の気持を理解してくれようはずもなく、大抵2〜3ヶ月の間に愛想を尽かされる場合が多い。

(これは僕が用心深いせいもあることは認めよう!)

しかし彼女達にとっては、そんなに急いで済ませてしまう程度の出来事なのか、はたまた僕自身の性格が災いしているのかは本心を確認したことがないので分からないが、それでも僕はあくまでも皆にも、2人にとって本当に素敵な記念日だったと語り種に出来るような素敵なファーストキスをしてもらいたいと思う。

近頃よく見掛ける風景だが、駅の改札口付近で待ち合わせをしている高校生カップルなど、女の子を待っていた男の子が、女の子が来た途端に暴力的に引き寄せてキスしているが、これなんぞは僕に言わせれば愚の骨頂である。ある意味ではこれは素人投稿写真集の1シーンの如きもので彼らにとってはそういう痴態を周囲に見せ付けることに意義を見出しているわけで、決して相手を大切に思った行為ではないからである。そういうカップルを見るにつけ「甘いな…もっと極めろよ!」と思う今日この頃である。(え〜っ!そうかなァ…。)