
戦場ケ原
奥日光行きは一応案に挙がっていたが何時実行するかはお天気次第であった。今回の旅 は撮影より保養中心にということで、曇り続きの予報が出た月、火、水曜日を選び5日前 の夕方、湯元の「実之屋」にE-メールで予約を入れる。この宿を選んだ理由は経営者が写 真家とカメラ雑誌に載っていたからである。直ぐ予約OKの返事がくる。
予報通り曇りの28日、NHK朝ドラ「純情きらり」を見てから出発。出勤時間を過ぎて いるから渋滞もなくスムーズに北上、9時40分頃二の宮町「道の駅」で最初の休憩を取る。 真岡の工業団地を通り抜け上篭谷を左折し瑞穂野から国道4号に入り、道なりに進むと日 光宇都宮道路に出る。最近、日光行きはドライバーにとり大変便利になり有難い。今回は便 利すぎ予定の休憩所に寄れず、東武今市駅で2回目の休憩を取ることになる。そこからちょ っと裏道を通り神橋近くのそば屋で昼食をとることにした。 12時少し前、本日第1号の客 として迎えられ前回と同じテーブルに席をとり、ゆっくり天ぷらそばを食べる。
昼食後は同店に駐車をお願いし神橋見学に出かける。小雨が降り出したので用意してき た傘を差し緩い坂道を下りて行く。
全く意外なことに、世界遺産に登録されている神橋は見
学料500円を徴収し特別公開中であった。総工費8億円、
改修工事に8年の年月をかけ昨年3月に竣工したわが国唯
一の古橋。朱塗りの外観より、橋の構造、裏側に使用され
ている太い欅の橋桁(3本繋いだ桁が3本使われている)
に感動。いつも渡れない飾り橋として軽視し通り過ごして
きたが、思わぬ収穫に心が弾んだ。
つい最近墜落事故のあったいろは坂、妻の注意をほどほどに、のろのろ走る車を2台ほ ど追い越し明智平へ。ここで小休止を取ることにしたが視界ゼロ、男体山も何もない。案内 板に霧雨、風を避けるためかアキアカネが沢山羽を休めていた。ここから竜頭の滝に出たが 駐車場はいっぱい。勝手の知れたこの辺り、元の「幸の湖荘」近くの道端に駐車。昨年閉館 したお馴染みの幸の湖荘は日帰り温泉に変わっていた。通過儀礼のごとく滝を眺めたが何も 感動するものはない。
雨も止み空はいくらか明るくなりかけていた。このまま宿へ直行して はもったいないので、湯滝の上に駐車し、カメラを持たず階段を下りる。帰りは大汗をかき ながら数えてみたら375段、妻には少しきつそうだった。でも結構たくさんの観光客がこ の階段を利用している。宿はここから数分、予定より若干早いチェックイン。自動車のナン バープレイトから察知したのか、名乗る前に「中島さんですね。いらっしゃいませ」と小柄 な年老いたお上に迎えられる。このようなちょっとした心遣いは旅行者の心を和ませてくれ るものだ。
間もなく大柄な元気のいい若お上が現れ、日光も上と下では天気が随分違う時もあり、 今日の湯元は天気が良く2回も洗濯が出来ましたなど話してくれる。宿帳を記入しているう ちにかぱん類は207号室に運び上げてくれた。廊下兼ギャラリーに陳列されている主人 の傑作写真を簡単に見ながら部屋に入り、お茶も飲まず先ず温泉で大汗を洗い落とすことに する。
すっきりした気持ちでお茶、お酒を飲むのが一番。妻に留守をお願いし一階の浴場に 下り洗髪し、汗を洗い落としてから、隣の露天風呂に移動したが、湯が熱くいくら洗い桶で かき回してもてどうにもならない。2箇所から温泉が流れ出ているが冷水の蛇口のありかが 分からない。入浴を諦め脱衣所へ戻りかけると若い客が入ってきた。ことの次第を話すと、 この石の下にありますと教えてくれたが、今回は断念し喉の渇き癒しを優先することにした。
一息入れ、顔のほてりも冷めた頃、湯の湖まで散策、国民休暇村の様子を見てから6時 半からの夕食に間に合うように宿へ戻る。お客は私たちを入れ3組の6人。一般的に8月末 の宿はこんなものであろう。普通のご飯もありますからと言って最初に出された五穀飯は珍 しく味加減も良く美味しかったが、隣の常連客らしい人はこれを断り白米飯を注文。「蓼食う 虫も好き好き」か。刺身こそなかったがイワナの塩焼き、てんぷら、肉、その他懐かしい田 舎料理などが沢山食卓に並んだ。1日の疲れ、翌朝の早起きを念頭に9時頃床につく。
第2日は目覚し時計のように5時15分前に目が覚める。準備しておいた荷物を持ち、 玄関の鍵を開け静かな涼しい空気を胸いっぱい吸い込み5時少し過ぎ車に乗り込む。行き先 は昨年と同じ戦場ケ原。日の出までにはまだ充分余裕もあったが、天気は上々男体山も頂上 まで見える。
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枝先のトンボ、クモの巣が沢山かかっている木々にカ メラは無性に惹かれる。妻はハーフフェルターを使い男体山を狙っている様子。1時間ほど 道路わきに粘ってから、日出後でも差し障りのない光徳沼に移動。ここはやはりトンボが主 になる朝のポイント。昨年は朝露に凍えアブラガヤにしがみつくアキアカネが準優秀賞に選 ばれた。帰りは途中の湯の湖に寄り少しフィルムを消費してから宿へ。
一仕事してからの朝食8時は特に美味しい。今日の計画は金精峠を超え、群馬県の丸沼 高原に出、日光白根山ロープウエーに乗ること。この話をすると宿の老お上は気前良くロー プウエーの無料券1枚(¥1,800)を私たちにプレゼントしてくれる。9時出発、途中まで 前に後ろにも車の姿無し、快適なドライブ。昔一度この道を通り沼田へ抜けたことがあるが ほとんど記憶にない。
TV で放映され妻は是非1度乗ってみたいと望んでいたこのロープウエーは平成10年
に竣工されたもので、私は何も知らなかった。標高1400m の駅から全長2500m のロープ
に乗り一気に標高差600m の山頂駅まで15分でかけ登る。山頂の目玉、ロックガーデンに
は観光客、登山者の姿はまだまばらであった。木立、樹木は皆無、強い日差しが容赦なく殺伐
とした赤茶けたガーデンに降り注ぐ。盛りを過ぎたコ
マクサは言い訳をしているようにあちこちに哀れな
姿を留めている。シラネアオイは緑の葉っぱだけ。コ
ケモモが可憐な赤い実をつけている。四季折々の花が
楽しめる公園の宣伝文句に偽りありの惨状。とにかく
暑くて日向にいるのは辛い。自然散策コース入りロの
二荒山神社には林があるのでそちらに移動。
するとト
リカブトの群生があったが、なぜか先端は刈られている。
乱獲でも恐れているのであろうか。立ち入り禁止ロープ
の1メートル先に無事綺麗に咲いている花を発見。あた
りを見回すとロープの手前にも2,3本健在。初めて見
るトリカブトは魅力的である。紫色の冑に似た花、風に
揺られ、なかなかカメラに収めづらいが、辛抱し接写レ
ンズでなんとか撮ってみた。
このまま引き上げるのも味気なく、歩いて十数分、600m 先の六地蔵まで歩くことにし た。往復4時間半の白根山頂を目指す2,3の若者グループが軽い足取りで私たちを追い越 して行く。50数年前、4,5名の学友と登山の基礎 知識もなく湯元から白根登山を試み、雷雨に合い ほうほうの態で逃げ帰った苦い記憶が蘇る。もう あの冒険心、体力はどこにもない。六地蔵への道 のりは大半が下り坂、行けども行けど目的地の気 配がない。
あたりは緑のシダ、コケ類が倒木など
に美しく生えているが日差しがなく写真には不向
き。引き返したい様子の妻を何とか言いつくろい激励しやっと30分後に到着。期待外れも
いいところ、六地蔵は不似合いな新しい小屋につまらない表情で鎮座していた。この先に展
望台ありとの標識を頼りに数分進むと、A級ゲレンデの最上段でかつパラグライダーの滑空
起点にもなっている所に出る。眺望よし、それよりも涼風がなんとも気持ちよい。先客は定
年退職後間もないと思われカップルだけ。静かな緑いっぱいの大自然を満喫してから、妻の
リュックを背負い別の道をたどり帰途につく。
パラグライダーを運び込む専用路らしく道は 広く歩きやすく意外と簡単にロックガーデンに出られ妻は大喜び。公園の一角に新設された ばかりの屋根無し「天空の足湯」に脚を浸けている客も10人ほど。日差しの強い残暑の中 では疲れた脚を癒す気にもなれない。時計も12時を指していたのでロープウエーキヤビン から丸沼、谷川岳、武尊山、草津白根山などを見下ろしながら下山、山麓駅のセンターハウ スで昼食をとることにする。店の直ぐ前には夏ゲレンデがあり、水しぶきを上げながらほ ぼ一直線に降りて来る人、へっぴり腰でこわごわジグザグコースをたどる人、見ていても結 構楽しい。1,2分間隔でスプンリクラーが自動的に稼動し1m ほどの水柱を上げゲレン デの滑りをよくしている。
帰りはもう二度と訪れることのない大沼、菅沼に寄り、どんな様子か見ることにした。 120号線を10分ほど走り左折すると終点大沼温泉に出る。ホテルは一軒だけ、周囲にお土 産屋が2,3軒。木立の中にテーブルを2,3脚設置した湖畔はホテルの所有地で一般客に も開放されている。慣れた旅行者はここで涼風と弁当を満喫している。
ここからまた120 号に戻り20数分走ると菅沼が見えてくる。入りロに駐車お断りの立て札があったので近く のお土産店に駐車し、沼に下りて行くと「菅沼キャンプ村、見学料を売店で支払って入村し てください」と注意書きがしてある。見学に来たのでもなく、また売店には人影もなく、そ のまま沼まで4,5分歩いて行く。左手の男体山と名の知らぬ山々に囲まれた静かなそして 底まで透けて見える水の綺麗な沼である。岸辺の植物園は草ぽうぽう、入りロに咲くトリカ プト数株が際立つだけ。キャンプ村の奥のほうに数名の若者がいたが、私たちには無関心。
何事もなく沼を後にし宿へ2時頃帰ると、大声で「お帰りなさい。今のところ客は誰も いませんからご自由に露天風呂を使ってください」と若お上が迎えてくれた。昨日ほどでな いが差し水しないと熱すぎる。ここの源泉温度は62〜74度、山から直接取水している冷 たい水で差し水するようにと脱衣所に注意書きが張り出されている。
疲れた妻を部屋に残し、デジカメを持ち夕方一人で近くに出かけた。先ずピジターセ ンターに入り湯元周辺の動植物について概略を学ぶ。館内の客は僅か2,3名。外に出ると 絶滅したはずのヤナギランが辻向かいの空き家に美しく咲いていた。帰りに再度ビジターセ ンターに寄り理由を聞くと、あれは移植栽培している花で、自生しているランでない。荒蕪 地を好むヤナギラン、土地の肥沃化でこの湯元から消えて行ったのでしょうと説明してくれ る。
この後昔の南間ホテルに脚を伸ばした。現在の天皇が戦時中疎開し、戦後は進駐軍の宿 舎になったという由緒あるホテル。しかしここ数年来、栃木の温泉街に旋風を巻き起こして いる「おおるり」に買収され、大衆安宿に建て替えられていた。団体なら1泊料金5000円 以下、そして近県ならバスの送り迎えつき。老人会からの圧倒的な人気で大繁盛を続けてい る。時代の変遷は、善悪は別としても、ホテル、動植物ばかりでなく人間関係・生活とあら ゆるところに及んでいる。「おおるり」を出るとき久し振りに見る虹が山の上に懸かってい たがデジカメにうまく収めることに失敗。
30日最終日。同伴する予定だった妻はギブアップ
し床の中。6時過ぎ一人で予定通り時計の逆回りの湯の
湖一周に出る。曇り空、特別撮影したい物はないが念の
ためカメラを持参。湯元と湯滝側からの南北風景は見慣
れているので参考までにその他の地点3,4箇所で湯の
湖を振ることにする。一周70分と言われているためか
早朝散策をしている客は極めて少ない。1/3周したあたりで突然甲高いが声が鳴り渡る。
鳥にしては少し変だと思ったが、口笛で応答してみると、大きな雌鹿か一頭こちらを見下ろ
している。これでこのあたりの笹がなぜ黄変しているが合点がいく。10米先の笹も黄変、
良く見ると真新しいたくさんの足跡、そして足跡は湖岸に続いていた。
すこし先には男性2 人が釣りをしていたが、獲物はなさそう。散歩は早足の方なので、1時間足らずで1周でき ることは分かったが、湖に突出した兎島は省略し、数箇所から硫黄泉の湧出する温泉原を再 度見たく回り道をすることにした。家族連れ、若い男性群など20人ほどがあの独特の硫黄 臭を嗅ぎながら、もくもく白煙を吐き出す低い小屋を眺めていた。予定の7時半に宿に戻り、 露天風呂で汗だけ流し生気を取り戻す。妻に1周の様子を語りながら朝食の連絡を待つ。
無料のロープウエー券を戴いた手前もあり、菓子のお土産を2個買い、宿の支払い (¥11,000×4+酒代)を済ませ9時頃チェックアウト。先ず赤沼茶屋に駐車し大根を買い、 周りを撮影することにする。思い思いの姿で家族連れ、友人グループが、小田代が原、湯滝 への散策ルートヘ分かれて行く。私たちは後者の木道を選んだ。
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すると間もなく鹿が2,3 頭,耳をそぱたてながらも、 渓流で水藻をむしりとり美味 しそうに朝食をとっている。 カメラを向けると警戒心を高 め、次第に去っていくが、そ の先には群れをなした数頭の仲間が時々人間どもを振り返りゆっくりと木立の中へ入って 行く。ここを終点に、引き返すと間もなく小雨がパラパラ落ち始めた。雨具の装備はしてい たが、いま遭ったばかりの3,40名の幼稚園園児を案じながら茶屋に急ぎ、今朝裏の畑で 取ったばかりという太い大根を1本購入。車に収納してから、小雨の中駐車場隣の道端で暫 く遅れ咲きのホザキシモツケ、アザミ、トンボなどを撮ってから日光市に向う。
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| フシグロセンノウ | ツリフネソウ | 不 明 | |||
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何時も素通りしていた田母沢御用邸隣の日光植物園、1度見学したいと思っていたところ。 大降りの心配もないし、時間的な余裕もあったので傘を差し園内を大雑把に見て回る。この 時期になると花はほとんどなく、また立て札名と植物の不一致などもあり、見学はやはり時 期を選ぶべきである。カメラに喜んで貰えたのは橙色のフシグロセンノウ、ツリフネソウな ど数少ない。
正午を告げる町のサイレンが鳴ったのを機に、見学者10数名の植物園を後に し東武日光駅へ車を進める。また途中で昼飯を食べ、漬物などを購入し今市から高速に乗り 一路土浦へ。もう鬱陶しい小雨は止んでいた。4号線からの出口を間違えたが、遠回りする 事もなく真岡工業団地に出られほっとする。例により二の宮駅の道で休憩したが、4時少し 過ぎには無事350キロを走り自宅へ到着する。(2006−9−16)