酒談議  (中島 節) -2008. 1.19-


 年末年始にかけ皆さん酒を飲む機会が多かったのではないでしょうか。 この機会に飲兵衛の失敗談でなく、真面目なお堅い話、 世界の酒について語源面から少しばかり書いてみます。

 酒はご覧のように滴り落ちるさまを表す さんずいと 酒を造る壺を表す酉から成り立っている漢字。 というわけで「酒を注ぐ」から「酒」そのものを表すようになりました。 もちろん中国語でもサケの意味で使われています。
ところで日本語「サケ」の語源ははっきりしません。 『日本国語大辞典』には13説が紹介されていますが、 酒を醸造してスマ(清)したケ(食)の意味、 スミケが変化しサケになったという解説あたりが無難かもしれません。 そして漢字の酒を日本語に借用しました。

 それから最近愛飲されるようになった焼酎は日本人が合成した漢字のようで、 中国では一般的な語ではないようです。 酎の元の意味は「よく熟成する」で、「こい酒、三度蒸留して造った酒」になりました。 では焼がなぜ頭に使われたか? 以下は私の勝手な推測です。
焼は「火を用いて燃す、作る」の意味に使われますから、 蒸留の意味が一般化しない時代に蒸留酒を造るのに火を使用することを付け加えたかったのではないでしょうか?

 次にウイスキーですが この語源はアイルランド語で「命の水」。 ウイスキーはがぶ飲みしたり酔うために飲む酒ではありません。 香りをゆっくり味わいながら「命の水」になるよう 各自の器に合わせてほどほどに飲めと教えているのかもしれません。
ビールはラテン語の bibere (飲む)から発展した英語。 やっぱりビールはぐいぐい飲むのがビール本来の飲み方かもしれませんね。 ワインはぶとうの蔓を意味する vine から生まれた単語で、 そこから収穫された「葡萄→葡萄酒」と意味を変え使われるようになりました。

 それから強い葡萄酒にシェリー酒がありますがこの語源はスペイン語です。 というのはスペイン南西部の原産地シェリーにちなみ「シェリー産の葡萄酒」が最初の呼称でしたが 長すぎるのでシェリーに短縮し世界中に販売されるようになりました。
またシャンパン、シャンペンは 厳密に言うとフランス北東部のチャンパーニュ(Champagne)地方原産の発泡性白ワインを指します。 というわけで原産地の地名がシャンパンの語源になりました。

 ブランディはオランダ語の「ブランディワイン」を短縮した語で、 brand- (蒸留した)と wine(葡萄酒)からできています。 そしてコニャックはフランス西部の都市コニャック原産のブランディを意味します。

 ジンはジン(杜松)で香りをつけた蒸留酒、だから松脂臭いのです。 そして無色・無味・無臭のロシヤのウオッカ (vodka)は確かに一見「水」かもしれません。 でもアルコール含有量50パーセント前後の飲み物です。
ウオッカの原義は「お水」、これを商品名に使用したとロシア人のしたたかさには恐れ入りました。 なんとおおらかな命名か? 我が国の僧侶が酒を隠語で般若湯と呼んだこととどこか似ているような気もします。

 最後になりますが、もし語源大賞:デザイン賞とセンス賞を設けるとしたら、 前者に象形文字の「酒」、後者に「ウイスキー」を推薦したと思いますが皆さんいかがでしょうか。 (2008-01-19)