カラスとの攻防戦  (中島 節) -2010.12. 1-


 ある時、屋外水道に置いた石鹸箱の蓋が開いたままで、中に石鹸がなかった。 妻が何処かに持って行ったのであろうと思い、尋ねてみたが 使っていなとの返事だった。 大分 薄く小さくなっていたから、風に飛ばされたかもしれないとその時は諦めた。

 買い置きがなくなっていたので数日後、石鹸を購入し、真新しいものを入れた。 しかし2,3日するとまた箱が開けられ、石鹸の姿がなかった。 妻は隣の猫の悪戯だろうと言うが、猫が石鹸泥棒をした話は聞いたことがない。 魚や肉の香りのする石鹸なら話は別だが、そんな石鹸ではなかった。

 インターネットで調べると、都内のある小学校で、屋外水道の手洗い場に置いた石鹸が、 カラスに全部持ち去れてしまった と報告している記事が目にとまった。 これで犯人はカラスであると確信することが出来た。 ある時、一人暮らしの隣人が、時々カラスに給餌していると自慢げに話してくれたことがある。 このオバチャンのお陰か、毎日のようにカラスのつがいが仲良くやって来ては、電柱のてっぺんから我が家も覗き込んでいる。

 そこでカラスと知恵比べをしてみようと思い立ち、石鹸を園芸用ビニール被覆の針金で簡単に結わえ、 針金の一方を持ち去れないように固定した。 しかし留守を見計らい、針金を外し また何処かへもち去ってしまった。 家内の忠告、冷笑を無視し、今度は石鹸の中央に錐穴を開け、針金を通して結わい 一方を金棒に結びつけて置いたが、 いつの間にか見事に結び目をほどき強奪していった。 2,3週間の間に、未使用の石鹸を三個奪われたことになる。これで一旦カラスに冑を脱いだが、どうも内心面白くない。

 そこで数日後 再度、石鹸を購入し針金の代わりに丈夫な靴紐を使用し前回と同じ処置をした。 そして2日後の早朝、日の出頃、枕元でカラスが悪戯しているらしい物音がしたので、 静かに雨戸を開けると 驚いたカラスは私を睨めつけるようにして飛び去った。 元通りに石鹸を箱に入れ水道脇に戻し、これでカラスも諦めるだろうと一安心。

 ところが翌朝もまたやって来て、盛んに嘴で突っつき なんとか持ち去ろうとした。 そこで石鹸箱が見えないようにするのが賢明な策と考え、使用済みの牛乳温め鍋で隠すことにした。 これで一ヶ月にわたるカラスとの攻防戦にどうやら目出度く終止符を打つことが出来た。傷ついた石鹸の写真をお見せします。

 では盗んでいった石鹸を一体どうするか? カラスにある貯食性の本能が高じてか、食べられないものまで集め隠す習性がある。 針金の簡易ハンガー、ビールの栓、ビー玉、ゴルフボール、石鹸、鉛筆など運べるものは何でも嘴にくわえ失敬していく。 悪意はなく、本能に従って遊び心でやっているのに過ぎない。 それを知らない人間が阿呆なのかもしれません。 とにかくカラスは賢く胡桃、貝を上空から堅い道路に落したり、路上に置き自動車に割って貰うことはよく知られている。

 『カラスはどれほど賢いか』唐沢孝一、中央新書を以前 購入し読んだことがあるが、 体験を通じカラスの賢さ、巧妙さを思い知らされました。

さて今年も残すところ一ヶ月、気忙しい年末を恙無くお過ごし下さい。(2010−12−01)


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