ソイレントグリーン  (稲植 俊雄) -2011. 5.12-


1973年にアメリカで製作された「ソイレントグリーン」と言う映画を観たことがありますか?
第三次大戦による核戦争で地上に住めなくなった人間が、地下に都市を作り生存を続けると言うストーリーです。 観なかった人にこの映画の内容を紹介します。

時代は2022年、舞台はニューヨーク。 地下生活のため、肉や野菜などの自然食品は無く、特権階級を除く大部分の人間は、 ソイレント社がプランクトンから作る緑色のビスケットのような形をした合成食品の配給を受けて 細々と生き延びていた。

或る人間が 人工の太陽光で僅かなトマトを栽培したところ、それを奪おうとした者との間で死闘が繰り広げられるなど、 昔 彼らが食べていた食品への渇望は強いが、多くの人間はそんな食品を食べることは既に諦めていた。 ここでは、食糧危機に落ち入らないよう、人間が60歳になると「ホーム」と呼ばれる公営施設で安楽死をさせられる。

そのような状況の中で、新製品「ソイレントグリーン」が供給されるようになった。 ある夜、ソイレント社の幹部が殺害された。 この事件を担当した刑事の父親が60歳になり、ホーム=公営安楽死施設で安楽死をさせられる。 このホームに入ると安楽死をさせられる人間は、大きな劇場のような施設の中に入れられる。

眼前に大きなスクリーンが現れ、昔の自然界の姿だった、 色とりどりの花々が咲き誇る素晴らしい花園、大草原、きれいな青空、大海原、 鳥の声などがベートーベンの交響曲第6番「田園」の響きと共に映し出される。 人々はこれを観ながら、昔、このような世界に生きていたことを思い出し気持ちが高揚したところで、安楽死を遂げる。

刑事はホームから運ばれる父親の死体を追跡し、それがソイレント社の中に搬入されるのを目撃した。 そこで刑事は驚愕の事実を知る。ソイレントグリーンの原料は安楽死をさせられた人間だった。

刑事は前から覗いて見たいと考えていた地上への出口の通路を登り、そこで地上の光景を見る。 人間が住めなくなった地上の摩天楼には 蔦が絡み付き 鳥や他の生物など何もいない静寂の世界が広がっていた。

以上がストーリーですが、この映画を観たのは、1978年で場所はフイリピン、マニラです。 既に33年以上も前なので、全てが正確とは思えませんが、このように記憶しておりました。 ところが、この記事を書くに当たり、インターネットでこの映画の内容を調べたところ、少し違っておりました。

食糧難に落ち入ったのは、核戦争ではなく、科学の発展の代償として温暖化や公害化が進み、 動植物も絶滅の危機に陥り、食料品の供給が減少したにも拘わらず、 爆発的な人口増加の結果である、と言うことになっています。

主役の刑事は、もう既に亡くなったチャールトン・ヘストンが演じており、 今でも鮮明にこの映画の色々なシーンが目に浮かびます。 従って、私が述べたストーリーが正しい? と思っています。 他の映画のストーリーとミックスされているかもしれません。

今度の福島第一原子力発電所事故でこの映画を思い出しました。 映画ほど深刻ではありませんが、この原発事故がもたらした事態はこの映画の悲劇と共通点があります。

放射能汚染による太平洋沿岸の漁業の中止、福島県や隣接県の農作物の出荷制限など、 地域は限定されますが、これらの地域では食糧危機と言えないこともありません。 まだ原発事故は収束しておりませんので、今後このような状況が拡大する可能性もあります。 収束後も、安全な農作物が栽培出来るのか、漁獲した魚は安全なのか、まだ不確定要素が数限りなく残っています。

「ソイレントグリーン」を食べる世の中にならないよう祈っております。 しかし我々の年代はこれを食べる機会は既にありません。 その原料になっています。(了)