「ネズミの嫁入り」の由来
   (中島 節) -2012. 2. 1-


 新年会などを重ねている内に 今年も一ヶ月が過ぎてしまいました。 それにしても本当に寒い一月でしたね。皆さんお変わりありませんか?

 さて今回は 前にちょっと触れた「ネズミノヨメイリ」の補足です。 小学校で学んだ物語、寓話、唱歌の中に 日本生まれでないものが混じっているのを知り、 大いに驚き、がっかりしたことを覚えています。 で この「ネズミの嫁入り」も残念ながら舶来品であることを、前回、触れた南方全集代4巻で知りましたので早速お知らせします。

 日本で この寓話を最初に集録したのは、約700年前に出版された仏教的説話集『沙石(しゃせき)集』らしい。 「人間は天の定めた身分を乗り越えてはならぬ」という喩えとして載っている (前回引用した「あれこれ迷っても平凡な所に落ち着く」とは大分違った趣旨)。

 そして これに似た話は世界各地にあり、 4世紀あるいはそれ以前に書き纏めたと言われるインド最古の寓話集「パンチャタントラ」に似た話が載っている。 そこからこの物語は色々姿を変え、インドから日本、中国に渡って来たようだ と南方氏は述べている。 その原本は「鼠の娘儲けて、天下に双びなき婿を取らんと、おおけなく思い企て、、、」と古文調で翻訳されているが、 現代文にすると大体次のようになるでしょう。

 ある聖人が川で心身を清めている時、鷹が飛んできて牝ネズミを彼の手に落としていった。 聖人は~通力でネズミを少女に変身させ、家に連れ帰り 自分の娘として育てた。 娘は12歳になり、結婚相手を探すことになる。 先ず太陽を招き、娘に逢わせると、「太陽は暑すぎ 私が燃えてしまうからいやです」と太陽を嫌った。 そこで太陽に「お前より強い者がいるか」と尋ねると、 「僕は雲に覆われると何も見えなくなってしまうから、雲のほうが強いです」と答える。

 それから 雲を呼び寄せ娘を雲に逢わせると「黒くて冷たいから、好きになれません」と娘は反応する。 雲より強い者は誰かと尋ねると、雲は風と答えた。 風に会ってみると「落ち着きのない方だから嫌いです」と娘はまた拒否した。 風は「僕より強いのは僕の行く手を遮る山です」と教えてくれた。 今度は山に「お前より強い者は誰だ」と尋ねると、 「ネズミは時々 山に穴をあけ山を困らせますから、ネズミの方が強いです」との返事が返ってきた。

 そこでネズミを招き娘に会わせると、娘は胸を躍らせ 身震いさせて大喜びする。 「これこそ私の仲間、私を早くネズミに戻し、この方の嫁にして下さい」と娘は ひたすら育ての親、聖人にお願いした。 聖人は娘を元のネズミに戻し、ネズミ同士が目出度く結ばれることになった。

 と言うわけで、物語の出だしの部分が私たちの読んだものと違っていることを知りました。 とにかく イソップ物語の歴史は古く長いので、版により集録内容が異なるとか登場者の置き換え等は多いようです。 「蝉とキリギリス」はドイツ版に依ったらしく、原本のラテン語版では「蝉と蟻」です。 また「ウサギトカメ」も英国ではお金5ポンドを賭け競走を始めたとあります。 日本の国民性からすると、小学1年生の教科書、それに2頁に収めるには無理ですね。今回はこれまで。 (2012- 2- 1)


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