鍛冶屋に学ぶ (中島 節) -2012. 6.17-


 先週14日(木曜)、年一度の川柳吟行会、会員20名で「千葉県立房総のむら」を訪れた。 ここは成田空港の西北10キロに位置し、土浦から観光バスで1時間ちょっとで行けるところ。 展示されている房総の武家・商家・農家などを通して、伝統的な生活様式、技術、歴史などを 学ぶことを目的とした広大な森の中の博物館、風土記の丘。また「むら」の中には100ヶ所余の 古墳・遺跡もあり、そこからの出土品は資料館に展示されている。ちなみに中学生以下と65歳以上は 入場無料。当日は私たちの他、一般客、野外学習の小学生、外人客などで結構賑わっていた。

 商家の町並みは、旧佐原市などに残る江戸後期から明治時代のものを参考にして16棟が再現され ている。そのためロケ地に利用されることも度々あるとか。当日もどこかの映画会社がカメラなどを 持ち込み撮影していた。そしてこの街並みの一番奥に鍛冶屋・夷隅屋(この写真の2軒先)があった。 小学生の時代、村の鍛冶屋の前を通り登下校していたので鍛冶屋への郷愁は人一倍強い。真っ赤に燃 えるコ−クス、金槌の音。何のためらいもなく店に入り主人と語り始めた。意外にも作業をしていた のは20台の女性で一心不乱に細長い棒を打っていた。

 主人の説明によると、鍛冶屋は先ず文鎮造りから始まる。細長い丸い鉄棒を文鎮の長さに切断し、これを 均等に真四角に延ばしていく。これには槌を真上から金床に平行に打ち下ろすこと。斜めに振り落とした 時の槌跡は傷になり修復は困難とのこと。文鎮の前半分が一応完了したら、次は残りの丸棒の後半を前半と 同じように四角に延ばしていく。しかしこの切り替えがなかなか難しい。同じ力で平等に槌を打ち続ける のは、疲れも加わり、とても大変な作業らしい。この課程を無事修了し、始めて別の仕事、自分の仕事に 取りかかることが許可されると丁寧に説明してくれた。鍛冶仕事の無知を恥じながら、本当に良い勉強に なりましたと素直に主人に感謝しその場を去ることが出来た。

 この勉強法はあらゆる学び事に相通じることを知り、感動を新たにした。基礎を着実に確実に習得すること なしに、満足のいく仕事、研究は出来ない。古稀を過ぎた私たちも、この意気で余生を元気に過ごしましょう。