「悪」の語源と読み (中島 節) -2012. 7. 1-


   この二、三年、電子辞書にお世話にならない日は一日もない。 それだけ漢字は難しくまた、尽きせぬ謎を秘めた興味深い文字です。 「角川新字源」、「常用字解」白川靜、「日本国語大辞典」などを相手に時間潰しするのも乙なものです。 今回は「悪」を取り上げてみました。この文字は醜いを意味する「亞」に「心」を付け造られ単語です。 「憎む」とは醜い心の一端であり、人を憎むことは悪いことだから「悪い」の意味になった。 そして悪を「お」と読むときは「憎む」、「あく」と読むときは「悪い」を意味するように分化してきた。
次に例を挙げてみます。

 お 悪寒、悪心、好悪、憎悪
 あく悪事、悪徳、悪疫、悪相、醜悪、俗悪、粗悪、罪悪

 このように読みによって意味の異なる単語に、楽も挙げられるが数は余り多くないようだ。

 がく(音楽、楽器、その関連語): 楽章、楽譜、楽典、声楽、楽隊、和楽、打楽器、弦楽器
 らく(楽しい、楽しむ)     : 楽天、気楽、楽園、歓楽、娯楽、安楽、極楽、哀楽、文楽

 しかし漢字には意味に無関係で二様(呉音、漢音)に発音される単語は沢山ある。 それは その単語がどの時代に日本へ持ち込まれ使用されるようになったかによる。 つまり七世紀以前に遣隋使、遣唐使が持ち帰った漢字は呉音で詠まれている。 そして葬式の読経が私たちにさっぱり理解できない最大の理由は、 今もってこの教典は呉音で読まれているからである。漢音とは八世紀末頃の中国音。
一例を挙げると次のようになる。

 課題から脱線しますが、熟語の読み方は最初の語が漢音ならば二番目の語も漢音に揃えるのが普通である。 従って「兄弟=キョウダイ」はどちらも呉音、「兄弟=ケイテイ」はどちらも漢音で発音されている。 しかし「言語=ゲンゴ」、「出題=シュツダイ」のように漢音+呉音の混交した読み方もある。 またこれに似たものに重箱読みがあるが、これは日本語熟語の変則的な読み方を指す。 すなわち漢音に訓読み(漢字に日本語をあてて読む)を混入したもので、 客間、残高、新顔、台所、団子、本屋、役場、路肩など沢山ある。 興味、好奇心のある方はもっともっと補充して下さい。