近年、扇風器、冷房装置の普及で馴染み薄になってきたが、夏にちなんで扇、団扇、扇子の語源を取り上げてみる。 日本語おうぎは動詞あおぐ(扇ぐ)の連用形を名詞化してあうぎに変えたが、更におうぎに変化して今日に至っている。 「おうぎ」は中国語「扇 shan」と同じ用途の道具なので、この単語を日本語に借用することになった。
しかし夏の季節に涼をとるため、私達が使用するものは次項で取り上げる「うちわ=団扇」と呼ぶのが普通であろう。 そして形状的にすり畳めるか否かでうちわとせんすに大別されている。 でも汚れを払うための祭事、祝儀などに使用されるものはおうぎと呼ばれているようである。
さて 話は扇の構造に移りますが、この文字は戸と両側に開閉する意味の羽から造られており、 開閉する戸、扉から左右に動く扇を指すようになる。 また漢字の扇は風を起こすもの、扇ぐもので、あおぐ→あおる、おだてると意味が変異してきた。 でその意味は扇情、扇動といった熟語の中にくみ取れる。
「うちわ」の語源は蚊、蝿などを打ち払う道具、打ち羽と云われている。 また うちわには漢字の団扇(旧漢字團扇)を日本人は使用するが、これは中国語團扇(tuanshan)からの借用語である。 團は口(線で取り囲むの意)と専(まとめるの意)から造られ、まとめたもの、 つまり竹ひご、木片などを骨として紙、絹布などを貼り付けたものを一箇所でまとめた道具を指す単語となった。 口が囲むの意味を持つ漢字には国、困、図、固、圓などたくさんある。
「せんす」の語源は おうぎやうちわと違って、中国語らしい。 確かに日本語の「おうぎ」は中国の団扇に対し、 平安前期、日本が作り始め折畳みができるようにしたもので すえひろ、せんすと呼ばれた。
とゆうわけで せんすは日本人の開発した家具であったが、中国では小さいものを表現する接尾辞「子」をこの家具に付加し、 扇+子=扇子(shanz)という漢字を造ったのであろう。そして日本人がこの文字を借用し「せんす」と読んだ。 扇を「せん」と 日本人に読まれる漢字には先に挙げた扇情、扇動の他に扇風機などがある。 また子が小さいを表現している身近な単語には帽子、椅子、利子、菓子、粒子などが挙げられる。(2012. 8.21)
参考文献:「日本国語大辞典」小学館、「常用字解」平凡社、「岩波中国語辞典」岩波書店