大型連休直前、沼津に二泊の旅行をした。ちょうど三時にチェックイン、小休止してから新湯を目指し、一階の浴場へ。驚いたことに、 顔、手足と局所を除く全身に入れ墨を入れた六十歳前後の男が湯から上がり、タオルを使っていた。また私より一足先に入室した四十代の 男も全身に入れ墨。両者は言葉を交わしているから仲間らしい。私は勇気を出し先輩格に「見事な入れ墨ですね。外国でなさったのですか」 と尋ねると気さくに国内でやったとのこと。「一回で全身に入れ墨をするんですか」。「それは無理です。一度にやったら病気になって しまうから。四,五回に分けやったと思うよ」。この先は第二の男に質問しようと湯舟の中で待っていたが、遠慮してかサウナに入り込んで しまった。是非聞いてみたかったのは費用のこと。仕方なく、後日PC で調べると「12回に分けて2時間づつ、大体26時間で40万円以 内で」とあったが、実際はもっとかかるのではないか?
入れ墨をしていると温泉、サウナ、プールなどに入れないのが一般的。彼らは多分、入浴客の少ない時間帯を狙ってやって来たのか。宿の 作業員か近くの住人かは不明。このような不届き者がいるとは宿も夢想だにしていない? 湯から戻り、この様子を妻に語り、女性にも入れ墨をした人がいるかどうか聞いてみたが、今まで見かけたことはないとのこと。でも女性に 入れ墨をした方は本当にいないのだろうか?それから二,三日後、読んでいた「火宅の人」下巻に、「「彼女と銭湯で会った恵子の話によると 人魚の入墨をしていたそうである。・・・「こんなのやらなければよかったわ」と恵子に何度も悔やんで語っていたそうだ」」に遭遇し、 疑問が解決した。数は少ないが入れ墨をした女性は現在もいると想像出来る。
さて日本の入れ墨の歴史は古く縄文・弥生期に遡ることが出来るとのこ。または江戸時代から刑罰として、人目に付くよう顔や腕に犯罪者の 印として入れ墨を導入したらしい。現在ではやくざの目印になっているが、一般人でもいたずら心から腕あたりに簡単な入れ墨をしている若者を 時々見かける。ところで入れ墨は刺青とも表記されるが、これは谷崎潤一郎「刺青(しせい)」の影響か。中国語では文身で、中国語からの 借用語ではありません。ご存じの方いるかもしれませんが英語はtattoo (タトー)で、その発祥地は太平洋の南東部にあるタヒチ語です。この 小さなタヒチ島が入れ墨発祥の地か?
また宿の二日目も、新湯を求め三時に浴場へ行ってみると、昨日と同じ人、年配者の方と鉢合わせになった。彼は客の私を意識してか、汗を流すと 直ぐサウナに入ってしまった。二日連続で入れ墨男と一緒になるとは、彼は意識的にこの時間帯を利用し、温泉を浴びるているとしか考えられない。