居酒屋での酒 (宮城 倉次郎) -2003. 9.21-


 小生がしょっちゅう飲む相手は市役所の広報さんや、会社の元同僚、そして同級生の萩原氏。 広報さんは仕事上で欠かせない相手、年金少額を思いながら、 もっぱら首長や幹部の動静を話題に地元の居酒屋で。

 元同僚たちと話していると、どういう訳か、このごろは家庭内のもめごとが聞こえてくる。 例えば、こんな調子。

 −−−定年で家庭に引きこもったとたん、女房とけんかが絶えなくなった。 若いときから無我夢中で働き、人並みに出世し、高い給料をもらい、 女房にも不満があろうはずがないと思っていたのだが。
 ところが、(突然話が飛躍する)戦後から高度成長期にかけて 結婚生活を送って来たカミさんたちの胸の底には、 「夫は家庭を顧みることなく、子育ても妻にまかっせっきり。お金だって、 仕事で必要だとなれば生活費でもなんでも持っていってしまう」 「いつも帰りは午前様、総理がどうしたのこうしたのとか、あいつは哲学がないのあるのだとか、 話題は高尚ぶった話や人の悪口に終始し、そうでない奴は馬鹿だと思っている」とし、 積年の我慢というか、恨みに近い感情が存在するという。
 その上、いまになって「ふつうの人」ぶり、家の中でぶらぶら。 それが当然だとして、殊勝な顔をしている夫がつまらなくも見え、 「許せない」と思うらしいというのだ。
 そのため、ささいなことで女房が感情を爆発させ、耐える姿勢から攻撃するライオンに変身するから、 男としては戸惑い、対応に苦慮する−−−。

 どっちもどっちなんだろうけれど、暴力を振るったりして破局に至る場合もあるから、ご用心。 こういう席(たいがい客があまり入らない都内の居酒屋の片隅)では、 酒の酔いも手伝って長時間になり、しかも仕事柄、分析が得意なもんだから、迷解説を述べ合い、 不思議に盛り上がる。しかし、本当は体力、金銭の消耗甚だし。 最後は、「女なんてダメだナ」と、安直な結論で終わることが多い。

 一方萩原氏とは、浅草近辺でよく飲む。長い付き合いだから、話題は尽きない。 相当酩酊しているのに、「もう一本」、「これが最後」などとお銚子を重ね、 最終電車に駆け込むことになる。

 しかし、二人とも酒量はだいぶ落ちてきた。 小生の場合、若き女性のいる高い居酒屋とも縁遠くなった。そして、萩原氏の顔を見る度に思う。 自分のことは棚に上げて、「俺よりだいぶ年だな。髪の毛は薄いし、顔もしわくちゃじゃないか」と。 こうやって、いつまで飲めるかなとも思う。(了)