今回は珍しい辞典について話します。
11月初旬、’昔を語る会’(「かざぐるま」の一行事)に持ち込まれた『附音挿図英和字彙』
(明治6,1873)という珍しい辞典に私は始めてお目にかかった。
英語と全く無縁の近所に住む所有者は、
後日「ゆっくりご覧になってください」と言ってこの辞典をわざわざ自宅に届けてくれた。19世紀初期から英和辞典は出版されていたが、 挿絵(五百余)を入れた辞典はこれが日本で最初でした。 写真・説明なしでも書名から大体想像つくように古色蒼然とした一文化財です。 痛んだ皮表紙、黄ばんだページ、崩れ出した装丁、、、。 収録語約55,000、1,548頁、B5版の分厚な辞書です。
当時インディアン紙はなく、 また印刷機(舶来品使用)もお粗末でこんな使い勝手の悪い辞書になったのでしょう。 先ず一番度肝を抜かれたことは縦書きの訳語が横に印刷されていること。 また なぜか訳語の全てにカナが付いている。
もちろん訳語は当時の日本語で現代人に理解困難なものも沢山ある。
例文はきわめて少なく、単語使用の解説・注意に至っては皆無である。
ゆっくり写真でご覧あれと言いたいところだが写真不鮮明で失礼。
この辞典は「英国法律博士阿日耳維氏の字書ヲ原本トシテ、、、」と緒言に書いてあるが、 一体どんなスペルの学者か解読にちょっと苦労した。 ヒントを同辞典固有名詞欄のGerman=口耳曼(ゼルマン)に発見。 すると彼の名は阿=ア、日=ゼ、耳=ル、維=ヴィ(中国発音wei)と読める。 インターネットで調べているうちに著者名はOgilvie(1797-1867)、 漢字名と符合することを知り開放感、謎解きの喜びを味わった次第。
Dictionaryには「字書、字典、辞書、辞典」などの訳があるがその変遷を調べるだけでも興味深い。
「x x字彙」は中国の古い辞書にあやかって使用したものと推察される。 わが国で「字彙」を使用したものにもう一冊「英華字彙」(明治2)があるだけです。(了)