未来のエネルギー源として開発が進められている核融合は、燃料となる重水素を海水中から得ることができ、石油などのように特定の地域に偏って存在しない、連鎖反応による暴走を起こさない、二酸化炭素の放出量が少ない等の利点を持っています。ただし、全く欠点がないというわけではありません。例えば、重水素と共に燃料となるトリチウムは放射性物質であり、水と共に摂取されて体内被曝を引き起こす可能性があるため、トリチウムの取扱には十分注意を払う必要があります。また、放射性廃棄物の問題もあります。しかし、トリチウムについては核融合炉の閉じ込め機能を確保するなどの対策をとることができます。また、放射性廃棄物については、後述するように、既に確立された技術を用いて廃棄できると考えられます。このような長所と短所を総合的に検討した結果、他のエネルギー源と比較して優れた特徴を持っているため、大きな期待が寄せられています。
まず、廃棄物についてですが、核融合炉からの廃棄物に含まれる放射性物質は、核融合炉に用いる材料によって異なるため、一概には言えません。核融合炉における放射性物質は材料に中性子があたることによって発生しますが、材料によっては放射性物質になりにくいものもあります。一方、材料の中の不純物によって、ニオブ94(半減期約2万年)のように長寿命の放射性物質が発生することもあります。しかし、このような放射性物質は、不純物の量を制御することによって減らすことができます。現在、有望な候補材料と考えられている低放射化フェライト鋼で将来の核融合発電所を作ったときを例に取ると、放射性廃棄物に含まれる主な放射性物質はコバルト60であると考えられており、半減期は5年ほどです。将来的には、設計の工夫や材料の改良、リサイクルによって廃棄物を減らすことができると考えられます。
核融合炉から出るこれらの放射性廃棄物は、ほとんどが固体の金属材料などであり、その全てが「低レベル廃棄物」と呼ばれるものなので、現在の原子力発電所の低レベル廃棄物と同じように、既に確立された技術を用いて廃棄できると考えられます。
次に、生物への影響ですが、核融合炉から放出される放射性物質による放射線の量は、生物が自然界や食物や自分自身の体内から受ける放射線の量よりずっと少ないものです(例えば、現在計画中の国際熱核融合実験炉(ITER)の場合、敷地境界でも、この自然の放射線の1/10を越えることがないように設計されてます)。磁力についても、核融合炉の中心付近では10テスラ以上と非常に強力ですが、外部にもれ出る磁力は、地磁気よりずっと弱いものです。
廃棄までを含めた総合的な効率を図る方法はいくつか考えられますが、ここでは一例として、「プラントの寿命期間(例えば30年)に生産するエネルギー」と「プラントの建設に要するエネルギー、プラントの保守・運用に必要なエネルギー、燃料の採掘から搬入にいたる全ての過程で投入されたエネルギーの総和」との比である、「エネルギー比」を用いた評価について紹介します。この数字が大きいと効率が高いことになります。ある評価では、原子力発電では発生エネルギーは消費エネルギーの20倍から70倍位、石炭火力発電で17倍、太陽光発電で9倍、天然ガス火力6倍、風力発電5倍、という数字が出ています。核融合ではまだ発電を行った実績がないので確実な値ではありませんが、試験装置で14倍、将来開発される初期の発電所では28倍と試算されています。