鈴虫


 8月の陽射しも傾く頃になり漸く夏の尻尾が見えた気がした。 うんざりするぐらいかけていた冷房も少し寒く感じ、 廊下に出たときの温度差が少し心地よいと思えるようになった。 台風の影響か、風が強く、カーテンがばたばたと音を立てる音で目覚める。

 盆休みは1人で美術館に行ったり墓参りに行ったり病院に行ったりして終わった。 比較的のんびりと。仕事も来なくていい、て言われていたので、 本当にのんびりと。日に日に伸びる庭先の蔓と枯れていく葉。 私にはどうしようもなく、其処の主人の帰宅をぼんやりと待つ。

 ちいさな手術をした。痛かった。抜糸もすんだ。

 心臓ごと持ってかれたみたいに嬉しく思うことだってある。 それがどんなくだらないちっぽけなことでも。

 建前が無いということへのジレンマだって、 何か矛盾しているようにも思えるけどそれだってちゃんと正しいと思う。

 鈴虫がずっと鳴いている。そのうち庭に放してやろうかと思う。

 指先の脈拍まではっきりと感じ取れてしまうくらいの、 あの感覚は何時まで私の掌の中に。

本日の一枚:スガシカオ / sugarless




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