強がり


 涙もろいのは相変わらずで。

 ひとのこころがぐいぐいと伝わってくる。 そんなのに弱いのだ。昔からそうだ。 でも最近特にかもしれない。 ドラマや映画、音楽などはまさにその抽出物のようなもので。 実際自分がそのドラマティックな現実の中に落とされると 状況に酔うなんて余裕もないぐらいになるのはわかっているのに。 わかっている、だからか。

 ジョゼと虎と魚たち。ジョゼはわかっていた。 そういうものが現実なのだと、そしてそれはおそらく。 自分に言い聞かせるように。恒夫は普通の、普通の人だ。 ちょっと格好が良くて女の扱いがうまくて。 そこに色んな人の気持ちが組み合わさる。 自分の見たくないところをツンとつつくのがうまいのがジョゼ。 建前とか自己満足をぺろりと剥いでしまう。 恒夫に与えてもらった風はもうジョゼ一人のものになった。 共に過ごした時間は本物。そのときに感じたことも思ったことも。 あらゆる生活の変化をその分だけ楽しんで。 根底にあるのはこわれものという自分。 海が見たくなったジョゼは恒夫への優しさ。

 そうか。強がりなのか。 そういうのって結構覚えているものね。

 私はジョゼほど自分をぶつけることが出来ない。 重なる感情は思いのほか多い。 そして私はジョゼほど冷静にもなれないだろう。 私こそ海底で転がることも出来ずにいる貝。

 こころは強くなったり弱くなったりする。 もしかしたら軟らかかったり温かかったり。 一定の形にとどまることなく。

 気が付かなかった、理由。混ざることでの変化。 薄まることで独特の香りが高まる。わずかな甘味。 じんわりと溶けていく氷にどんどんとその「癖」は許されていく。

 この待ち続ける気持ちはうまく言い表せない。

 虚しいと思った時点で負け。掌の真ん中へんにある。

 風がやたらと強くて。窓枠に絡まった枯れたカラスウリの蔓が カサカサと細かい音をたてた。枝の合間で遊ぶ目白。 春の陽射しに冬の名残の冷たい空気がうまく混ざらない。 大理石のような模様になっている。

 旅に出る理由は。いくつあるんだっけ。

最近の一枚:レミオロメン / 朝顔




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手紙 BBS




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