爪を切る


 1ミリちょっとにのびていた爪を急いで切った。 それは貴方が爪がのびているのが嫌いだから。 そうやってちょっとずつ、私は変わっていったのだと思う。

 学生時代の友達に会うと「ちょっと落ち着いた感じになったね」 とか言われる。後輩などは露骨に「変わりましたねぇ〜!」と 言ってきた。それはきっと私がダサくなった、と言うことだろう。 髪の毛だって、昔はすごい茶色だったし。今じゃ真っ黒で。 以前はよくチンチクリンなカッコでぷらぷら 歩いてたもんだから。人とはちょっと変わった服を着ることで、 自分を主張できるような気がしていた。それが楽しかったし、 優越感もあった。年を重ねるごとに装飾への意欲が 減っていたことは確かだったが、ガラリと変わったのは、やはり、 今の彼氏の影響だった。

 服装などになんにもこだわりのない人。流行からかけ離れている。 それまで、一応は流行の服を買ってみたり、マニキュアもしてみたり、 たまに香水をつけてみたりしていた私に、それらのモノは 必要とされなくなった。むしろ疎まれるモノであった。 私は出来るだけそれらのモノを除外し、自分の考える最低限の 装飾におさまった。化粧ナシ、マニキュアナシ、香水ナシ。 髪の毛あまり意図的にいじらず。動きやすい服装。 しているモノは、もらった指輪と自分で買った指輪と、 お寺で買った開運数珠←ここらがババくさいが。 それで、よいと思った。自分のことをもっと好きになって もらおうと思った。下着の趣味だって変えた。 かわいいと言ってもらいたくて。

 最近そういう言葉を聞いていません。 貴方の口から聞きたい。だから、貴方は気付かないだろうけど、 私は爪を切る。




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