流れてゆく物


 時間だけはそのまま流れていく。私はそれを呆然と眺めているだけ。 出来るだけ良い方向に流れるように、少しだけ舵をとる。

 何も変らない。心の中で動いただけ。動かしただけ。 別に大したことではない。きっとこれまでと同じように時間を 進めていく。欠落した物の穴埋めは、出来ないかもしれないけれど、 さほどの影響力もないほどに微小な物になっていたのだと。 もっと育てたい物を育てるだけのこと。きっと静かに時は満ちていく。 大事な物を見失わないように、手放さないように。

 明日は祖母の四十九日になる。ポッカリと抜け落ちたような 1ヶ月半だったように思う。線香に火をつける度に、フ、と祖母の 居ない空間を実感する。漂う細い煙に涙腺を刺激され、 鼻をグズリとひとすすりして、何もなかったかのように私は 部屋をあとにする。死ぬ前日の祖母の顔が焼き付いて離れない。 私が幼かった頃の、威厳に満ちた元教師の顔ではなく、 まるで幼児のようなあどけなさを残したあの表情を。 あまり可愛がられた記憶がない。一緒に遊んでもらった記憶もない。 罵られ、ぶたれたことさえある。けれどもう、そんなことどうだっていい。 もっと優しくしてあげればよかった。

 時間の流れには、浄化作用があるのかもしれない。そう感じた。

本日の1枚:ゆらゆら帝国/3×3×3




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手紙




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