スーパーのレジで、数円が足りずに千円札、1万円札で払い、大量の小銭で財布があふれてしまう――。こんな経験はだれにでもある。大手スーパーの「ジャスコ」(本社・千葉市)がレジに1円玉を置き、小銭の足りない買い物客に利用してもらう「1円玉サービス」を一部の店舗で始めた。レジの迅速化にもつながり、客の反応も上々だが、「お金の大切さは1円でも同じ。教育上よくない」という批判の声が寄せられ、サービスを取りやめた店舗もある。
このサービスを最初に始めたのは、茨城県の「ジャスコ取手店」。今年5月、消費者月間の企画として試験的に導入した。
「釣りの小銭で財布が膨れるのは煩わしい。外出するときに1円玉をたくさん持ち歩いている人もいない。それなら、1円玉を置いて、使ってもらったら」。片山和彦店長(52)のこんな提案がきっかけだった。
予想は的中。「1円、2円が足りないときに本当に助かる」「ほかのスーパーや百貨店ではやっていない。これからも続けて」と大好評だった。1円玉は1カ月で9000円ほどになったが、販売雑費として処理した。その後は、多いときでも2万円程度だという。
片山店長は「もっと経費がかかると思っていたが、『この前3円借りたから、今日は10円置いていく』と言って返してくださる方もいる。お客さんとの信頼関係を築くのにも一役買っているし、他社との差別化にもなる」と話す。
細かい釣り銭のやりとりも省けるため、レジ作業のスピードアップにもつながったという。
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愛知、岐阜、三重県内などに約五十店を抱える同社の「中部カンパニー」管内でも、7月下旬から順次導入した。ところが、予想していなかった反応があった。
幼い子を持つ母親などから「子どもには普段からお金の大切さを教えている。恵んでもらうことが当たり前になるのはしつけによくない」といった声が寄せられた。
中部カンパニーは検討を重ねた末、10月初旬から1円玉サービスを中止した。用意した1円玉は、そっくり台湾大地震の被災者の支援金に充てることにした。広報担当者は「導入前から社内でも賛否両論あった。総合的に判断して中止することにした」と話している。