「ねこの神さま」
ねこが死ぬとね、どのねこも天国の入り口へ行くことができるのさ。ねこの神さまが、そこにいらっしゃって、死んだねこたちの最後の願いを聞いてくださるのだそうだ。
ねこの神さまって?それはそれは、やさしい目をしている方さ。けれど、死んだねこしか会ったことがないからね。どんなお姿か、みんな、よく知らないんだ。
ある日、四丁目のねこが車にひかれてね。いやいや、最近は、よくあることさ。そのねこが目を覚ますと、目の前にねこの神さまが、にっこりほほえんでいたんだって。
「おい、ねこや。お前の最後の願い事は何かな」
ねこの神さまが声をかけると、
「はい、神さま。明日のお天気を晴れにしてください」
と、ねこは頭を下げたまま、神さまに言った。
「天気を晴れに・・・・・・。ほう、それは、どうしてかね」
神さまは、わけをきいてみたくなった。ねこの最後の願いは、たいてい、おいしいえさが食べたいとか、ご主人さまにもう一度会いたいとかが多いからね。『お天気を晴れにしてほしい』なんてねこは、初めてだったのさ。
「あのー、そのー、実は、明日は、四丁目の盆踊りの日なのです」
「だから?」
「あのー、それはですね・・・・・・」
ねこは神さまの前で、もじもじしはじめた。
そこで、ねこの神さまは、やさしいやさしい声できいてみた。
「何か、大事なことが、明日あるのかい」
すると、ねこはきりっと顔を上げて、神さまにこう言ったんだ。
「実は、私が車にひかれた時、四丁目のさとこちゃんが、畑から大きなサトイモの葉っぱを取ってきて、私の体の上にかけてくれました。その上、道ばたの草の花を集めて、私のそばにおいてくれたのです」
ねこの目から、ほんのちょっぴり涙が出た。
「そのさとこちゃんが、盆踊りをとても楽しみにしているのです。さとこちゃんは、急に、四丁目から引っ越すことになってしまいました。だから、盆踊りに行くことができないと、友だちに最後のお別れを言えないまま、引越しになってしまうのです」
ねこの神さまは、目を閉じて考えていたよ。そして、もう一度、ねこにたずねた。
「いいのかい、お前のご主人に会わなくても」
その時、ねこの目は、宝石のようにきらりと光っていてね。とてもきれいだった。
「はい。葉っぱがかかっていた私の姿を見て、ご主人さまは、涙を流していました。『お花までそなえてくれて、ありがとう』って。だから、ご主人さまのためにも、さとこちゃんの喜ぶ顔がみたいのです」
ねこの神さまは、目を細めて、
「いいだろう」
そう言って、手に持っていたノートに
『明日の天気は晴れ』と、書き込んだ。
ねこはそれを見とどけると、うれしそうに、天国へ入っていった。そうそう、翌日は、気持ちがいいくらい、いいお天気だった。
えっ、どうして、私がいろいろ知っているのかいって?『もう少しいいことをしてから天国においで』って、神さまに天国の入り口から追い返されてね。だから、こうして、そこで見たいい話をねこ仲間にしているのさ。
おしまい
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