さっちゃんの超能力(ちょうのうりょく)   作:kerokero-pi

「お母さん、この子はね、女の子。こっちは、男の子なんだよ」
 さっちゃんは、つかまえたミミズをお母さんに見せました。
『ミミズって、男の子、女の子ってあるのかな』
 さっちゃんのお母さんには、同じようにしか見えません。
「さっちゃん、女の子のミミズと男の子のミミズは、どこがちがうの?」
 お母さんがきくと、さっちゃんは、
「ほら、よく見ればわかるよ」
と、ミミズをさし出しました。
「いやいや、さっちゃん。きもちわるい」
 さっちゃんの見せてくれたミミズは、にゅるん、にゅるんと、体をくねらせていました。お母さんは、そんなミミズがとてもきたないもののように見えて、さわれないのです。
 でも、お父さんは、ちがいました。
「おお、今日も大漁(たいりょう)だな」
 お父さんはよろこんで、さっちゃんのつかまえたミミズを魚つりにもっていきました。
 さっちゃんは、毎日毎日、にわやはたけのすみっこに出かていきました。そして、スコップで、ミミズのいそうなところを、ざっくり、ざっくりほっていました。
『さっちゃんは、どうして、男の子と女の子のちがいがわかるのかしら……』
 お母さんは、いつもふしぎでふしぎでしかたがありません。

 ある日、お母さんとさっちゃんは、買い物に出かけました。
「わあ、さっちゃん。あの女の子かわいいね」
 お母さんが言うと、
「お母さん、あの子は、男の子だよ」
と、さっちゃんは言います。
 お母さんはよく見ました。赤い服を着ているけれど、かみの毛が長いけれど……
「たけしくん、帰るわよ」
「は〜い」
 さっちゃんのお母さんがかわいいといっていた子が、返事をしました。
「あら、あの子、男の子だったの」
 お母さんはびっくりしました。
「さっちゃん。さっちゃんは、どうして、あの子が男の子だってわかったの?」
 さっちゃんは、お母さんにきかれて、うれしそうです。
「だって、あの子、男の子だもん」
 お母さんは、ますますわかりません。
 さっちゃんは、とことこかけていってしまいました。
「さっちゃん、まってよ」
 お母さんは、さっちゃんをおいかけました。

『さっちゃんは、超能力(ちょうのうりょく)でもあるのかしら?』
 お母さんは、にわで、ミミズとあそんでいるさっちゃんとお父さんを見ながら、また、考えました。
「さっちゃん、こっちは男の子?」
 お父さんが、さっちゃんに聞きました。
「あたり!お父さん。よくわかったね」
「ああ、なんか、そんな気がしたんだ」
 二人は、男の子と女の子のあてっこしています。
『なんで、わかるのかな……』

 ある日、お母さんは、お父さんに聞いてみました。
「ねえねえ、どうして、男の子と女の子のちがいがわかるの?」
「そうだねぇ。よく見ているとわかるよ」
「ほんとに、わかるようになるの?」
「ああ、なんとなく」
 
 そこで、お母さんは、がんばって、さっちゃんとミミズあそびをいっしょにしてみました。
「おかあさん、どう?これ、どっちかわかる?」
 お母さんは、よくわかりません。でも、ひとつだけわかったことがありました。同じように見えるミミズは、それぞれ、ほんのちょこっとずつ、ちがうことに気づきました。
『このミミズは、ちょっと、体の長さがみじかい。あっちのミミズは、体の線がはっきりしているし、そっちのミミズは、ちょっと動きがはやい……』
 それから、お母さんは、人間の子どもとミミズをじっくり見るようにしました。
『人間の子どもは、見ているとなんとなくわかるけど、ミミズは、ぜんぜんわからないなあ』
 
「ねえ、さっちゃん。教えて。ミミズの男の子と女の子は、どこがちがうの?」
 お母さんは、とうとう、さっちゃんにひみつを聞くことにしました。
「お母さん、あのネ、私、ミミズとおあそびしているの。この子は、ゆっくりうごくので、のっそりくん。こっちは、のっそりくんを守っているみたいだから、のっそりくんのお父さん」
 さっちゃんの顔は、きらきらしています。
「そして、この子はやさしそうにうごいているから、のっそりくんのお姉さんか、おとなしいお兄さん。でも、こうやって、よく見ていると、《ぼくは、ちょっとおとなしいけれど、男の子だよ》って言っているのが聞こえるの」
 お母さんは、
『そうか!』
と、思いました
お母さんは、こういうのは男の子、こういうのは女の子、という方法で見ていました。けれど、さっちゃんは、ミミズ一匹一匹のちがいを見ていました。

 それから、お母さんも、さっちゃんといっしょにミミズあそびをするようになりました。
「さっちゃん、これは、男の子?」
「あたり!お母さん」
 お母さんは、とてもうれしくなりました。
「お〜い、もうすぐお昼だよ。お昼ごはんは作らないの?」
 お父さんが家の中から、よんでいます。
「お父さん、お昼ごはん作っておいて!」
 さっちゃんとお母さんは、にわのすみからさけびました。

                     

                                                                おわり

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