「もう、これで、お別れですね」
隣の彼が言った。
私は、『いやだ』と、叫びたかった。でも、別れの時が、刻々と、迫ってきていることを、私は知っていた。
眠りから醒めた時から、彼は、ずっと私の横にいた。だから、これからも、いっしょにいることができると信じていた。
彼の別れの言葉を聞き、フッと力を抜けそうになる。だめだめ、今、力を抜いたら......。
「いっしょに行かないか?」
涙が今にもこぼれそうな私に、彼は言った。
「今度は、ぼくの姿をちゃんと見てくれよ」
私も、同じことを思っていた。『今度こそ、大地に根を張り、強く生きて行きたい』
「うん」
「それじゃあ、行くよ」
ちょっと、こわかったけれど、私は、初めて自分の足で歩み出した。
フワフワな気持ち。初めての旅。
しかし、人生、そうは、上手く行かない。
ちょっとした突風で、彼を見失ってしまった。耳の片隅に、彼の叫びが届いた。
「次の季節、その又次の季節かもしれない。また、君に会える日を楽しみにしているよ」
私は、石につまずいて、そこで、うずくまってしまった。
『本当に会えるのだろうか......』
早く彼に会いたい一心で、寒さにも絶え、私は小さいながら、黄色いつぼみをつけることができた。
私の子どもたちは、風に乗って彼に会いに行くだろう。そうしたら、私の思いも彼に伝わる。
『私は、ここで、がんばっているよ』
「蒲公英の詩*たんぽぽのうた」おわり
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