3歳児検診までは虫歯が全くなかった長男だったが、5歳を過ぎた頃から虫歯が気になりはじめた。
下の歯の一番奧が少し黒くなっていた。
歯科衛生士の友達に聞いてみたら、「針くらいの穴でも、中で虫歯が広がるからね」と言われて怖くなった。
すでに穴が空いていたのだ。
長男は気が小さく、小児科でも口を開けて喉を見せるのを一番嫌がる。
舌を押さえられるたびにオエッってなる。
風邪とかなら病院に行かなくてもいずれ直ることがあるけど、虫歯だけはそうはいかない。
意を決して長男を歯医者に連れて行くことにした。
「歯医者さんに行こうよ。○○くんだって××ちゃんだって、みんな行ったことあるんだよ」
色々言ったけどこれが一番効果的だったようだ。
そしてその翌日には、幼稚園が終わってからすぐの時間に予約を取った。
その日の長男はなかなか帰ろうとはしなかった。
歯医者に行くのが嫌だとは言わないが、なかなか帰ろうとしない。
長男は園庭のお山を逃げ回り、私は必死で追いかけてやっと捕まえて歯医者へと急いだ。
歯医者に着くと長男の緊張感が伝わってくる。
絵本を読んでやっても上の空の長男だった。
そしていよいよ長男の順番がやってきた。
担当になった先生は女の先生で、歯科衛生士のお姉さんもとても優しかった。
長男にひとつずつ丁寧に説明してくれて、私も「そうだったのか。そんなことをしていたのか。」と結構勉強になるくらい(笑)
椅子が倒れて寝かされるのにもオドオドした長男。
そしてどれだけ進行しているか調べるために、レントゲンをとることになった。
レントゲンの時は、私と長女はドアの外で見るしかない。
時間がかかるなぁと思っていたら、口の中に器具が入れなれないようだった。
何度も挑戦していたけどオエッってなって入らないようで、レントゲンは断念することになった。
「なんて情けないヤツ」と私は思っていたけど、出てきた長男は涙をポロポロと流してとても苦しかったんだということが一目でわかった。
私は「レントゲンがとれないと治療はできないんですか?」と心配になって聞いた。
長男の気持ちより、治療できないんじゃないかということが心配になったのだ。
嫌がる長男を追いかけ回して、何度もここへ来るのが嫌だったから。
幸い治療はできるというので治療室に戻り、また倒される長男。
治療を試みたものの、長男の舌が歯をかばいにくるので削ることができないと言われた。
「無理矢理やって歯医者への恐怖感を持たせない方がいいですし・・・ 幸い絶対に治療が必要な虫歯でもないですし・・・ もう一度治療に来ていただいてそれでもダメなようでしたら、しばらく経ってからまた治療しましょう」と先生に言われ、治療もせずにその日は終わった。
私は治療ができなかったことがとてもショックだった。
虫歯の進行止めを塗ってもらったとは言え、せっかく歯医者に来たのに治療もせずに帰らなければならない悔しさと焦りで私はイライラした。
先生や衛生士のお姉さんもあんなに優しくしてくれたのにと申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
何よりも、また長男を説得して機嫌を取って追いかけ回して連れてくることを思っただけで気が重くなる。
私は、レントゲンをとることも治療もできなかった長男を情けなく思い、その日は長男にイライラをぶつけてしまった。
5日後、2度目の通院。
先生はまず私にこう言った。
「この子は我慢する方なんですよね。いやだーって泣きわめかないで我慢するんです。この間のレントゲンも随分頑張りましたからね」
そして長男には、「お母さんが見ているけど頑張らなくていいからね。嫌だったら嫌だって言っていいからね。先生は○○くんの歯をじっと見てるから痛いときや嫌だなと思ったら手を挙げてね。そしたら先生すぐにやめるからね。絶対にやめるからね」
長男は「うん」と頷いていた。
私はハッとした。
まるでこの間家に帰ってからのことをずっと見られていたかのような言葉に聞こえた(笑)
長男は頑張っていたのに・・・ 前回私は結果だけを悔やんで責めてしまったのだ。
ものすごい後悔。 この間そう言ってくれていたらイライラをぶつけずに済んだかもしれないのにと責任転嫁する悪い私(笑)
その日はなんとか治療をしているようだった。
長男はチラチラと、先生が何を手に持っているのかが気になって首を動かして見るので、先生は長男に小さな手鏡を持たせて、「先生が何をしているのか見ててね」と言った。
これはいい方法だったみたいで、長男はじっと鏡を見つめていた。
長男がいろんなところに鏡を動して見るので、時には先生も治療しにくかったと思うのに、先生は何も言わなかった。
そして一応治療は終わった。
長男の舌がどうしても歯をかばいに来るので削る部分を最小限にしたことなどを、先生は絵に描いて私に説明してくれた。
そして最後に先生は私に、「今日はよく頑張ったからお家でもほめてあげてくださいね」と言った。
私はもう頭が下がる思いでいっぱいだった。
この先生はすごいよ。 まるで幼稚園の先生みたいだよ。 いや、幼稚園の先生よりすごいかもしれないよと私は心の中で言っていた。
実は私も1年半前に同じ先生に治療してもらっている。
私が大人ということもあって、そんなに詳しい説明もなく、特にいい先生だとは感じなかった。
でも長男への接し方や親への言葉はとても立派で尊敬した。
イライラを子供にぶつけた自分がとても恥ずかしくなった。
「治療が充分ではなかったかもしれないし、詰めたものが弱くなる場合もありますから3,4ヶ月したらまた来てください」と言われた。
長男はもう二度と来たくないという感じだったけど、私はこの先生なら安心してみてもらえる気がした。
ちなみに一緒に行っっていた長女は、一人別室でアンパンマンのビデオを見ながら色鉛筆でお絵かきをして、「あぁ、楽しかった。歯医者さんに行ったねぇ」と満足顔。
いずれ長女も本当の歯医者さんの姿を知ることになるのだろう。
いや、そうならないように虫歯には気を付けなくちゃね。
子供の歯って親が守るしかないんだよね。