長男の登園拒否

9月13日月曜日の朝、いつものようにご飯を食べて、体操服には着替えたし、あとは園服を着てかばんを背負って水筒を持てば・・・
その時突然長男は泣き始めました。
「幼稚園に行かない」と言って・・・
幼稚園に行くのを嫌がるのはこれが初めてではなかったし、嫌がるのを何とか言い聞かせて連れて行ったことも何度かありました。
でも、この日は今までとは全く様子が違うのがはっきりとわかりました。
泣きじゃくる長男を抱きしめながら、私は迷いました。
無理矢理でも行かせた方がいいのだろうか?
休ませたとしても、家より幼稚園がいいと思うようにあまり相手をしない方がいいのだろうか?
このまま休みグセがつくんじゃないだろうか?
そして長男は泣きながら私にこう言いました。
「ママが怒るから行かない」
私はその一言でハッとしました。
確かに最近は、長男にガミガミうるさく言っていたのです。
義母へのいらだち、夫への不満を、長男にぶつけていたことを私は長男のその言葉で気が付いたのです。
そういう理由なら今日は休ませて一緒にたくさん遊んであげようと決意して、幼稚園には熱が出たと嘘をつきました。
たまたま、お昼頃パパからの電話の時に、私は朝のことを話しました。
パパも、「無理に行かせなくてもいい」と言いました。
そして私に、「お前が何か乗り移ったみたいに怒るからだ」とも言いました。
ダブルショックでした。「私をそこまで追い込んだのは誰なのよ」と思っても、口に出すことは出来ませんでした。

夕方パパが帰ってきて、長男に色々と聞いているうちに、同じクラスの子に叩かれたとパパに言ったそうです。
長男はどちらかと言えばおとなしい方で、けんかもできません。
私は数日前に、その男の子が長男とすれ違うときに、長男の肩のあたりを叩いた瞬間を見ました。
長男は、その子とすれ違うときにはすでに体をよけるようにしていたので、これは初めてじゃないなとすぐにわかりました。
そのことはそれとなく担任の先生にも話したことはあるのですが、先生は、
「あの子はみんなにそうなんですよ。私にもクソババアなんて言いますし・・・」と言って笑っていただけでした。
その時は別に先生にどうこうしてもらうつもりはなかったのですが、長男がそのことで行きたくないと言っているからには親として何とかしなければと思いました。
もちろん、幼稚園だけの問題ではないことは私もわかっていました。
毎日幼稚園に行って、クラスの子に叩かれ、帰ってきたら私がガミガミ怒る。
それじゃ誰でも嫌になるなと気が付いたのです。
その日私は、一日中長男と遊び、スキンシップとして抱っこしたり手をつないだり、出来る限り甘えさせてあげました。戦いごっこでヘトヘトにもなりました。

次の日も長男は幼稚園に行こうとはしませんでした。
幼稚園の話になると一瞬にして顔が暗くなるのです。
私は長男に、
「じゃあもう今日だけね。明日は幼稚園お休みだからあさってには絶対行こうね」と言ってその日も休ませることにしました。
そして私は担任の先生に電話をして、長男が休む理由を全て正直に話そうと決めました。
もちろん、長男が行きたがらない理由は、叩かれたことだけではなく、私の接し方にも原因があることはわかっていたので、先生を責めるつもりはありませんでした。
ただ親として、子供の不安材料を少しでも減らしてあげたかったし、なによりも長男になんと言って幼稚園に送り出せばいいのか聞きたかったのです。
電話で先生に話すと、
「ああ○○くんねぇ。あの子は私にもよく叩いて、それがまた痛いんですけどね」とまず言ったのです。
その言葉に私は張りつめていたものがプッツリと切れてしまいました。
まるで、「叩かれているのはあなたのお子さんだけじゃないですよ。それなのにあなたのお子さんだけ行きたがらないのはおかしいですよ」と弱い子が悪いかのように聞こえてしまったのです。
私は声を震わせて言いました。
「じゃあ先生は、この件に関して何もしてくれないということですか?」
今までにないきつい口調で私は言いました。
すると先生は少し困ったように、
「見つけたときはちゃんと注意していますけど、目が行き届かないですし・・・とにかく、今日みんなに話します」
長男のクラスは24人で1人の先生が見ています。園庭も広いし、そう言われればそうだけど、今までも何かにつけてそう言っている気がしていました。

実は担任の先生は今年大学を卒業したばかりで、先生に成り立てです。
私はそんなことは特に気にしてはいませんでした。
一生懸命なのはわかっていたし、子供は基本的にはよく遊んでくれる人が好きですから、長男も好きなようでしたし・・・
でも、こういう問題が起きたときの保護者や子供たちへの対処は、まだ不慣れなために初めてのことが多いのでしょう。
でもだからといってそれは理由になりません。
目が行き届かないなら先生を増やすとかの対処も必要になってきます。
脱走事件から始まって、今まで園に対して少しずつ不信感が募っていたことを、私はその時気付きました。

そして担任の先生と電話を切った後、私は涙が止まりませんでした。
先生はとても大事なことが言えないのです。
私は子供になんと言って送り出せばいいのか・・・それが聞きたかったのに・・・
私は嫌な保護者でしょうか? 
自分の事を棚に上げ、文句を言うだけの保護者でしょうか?
でも後悔はありませんでした。
このことの対応によっては、幼稚園を変えることも考えるつもりでした。
考えた末、園長先生にも電話をしました。
「子供が、同じクラスの子に叩かれたと言って幼稚園に行きたがらないんです」
そう言ったたけで園長先生は話し始めました。
全て納得のいくというわけにはいかない話しもありましたが、最後に、
「お子さんには、先生に話してあるから大丈夫よと言ってあげて下さい」
と言ってくれたのです。
それは私が一番聞きたかった言葉でした。
その日私は以前に読んだ本を数冊読み返しました。
上手な叱り方の本とか、子供の心のサインについての本でした。
ちゃんと読んでいたはずなのに逆のことばかりしていました。
ある本には、「登校拒否を起こす子は、たいていの子が登園拒否も起こしているので、幼稚園のうちからきちんとした対応が必要だ」とも書いてありました。
私はパパと話し合いました。
パパにも気が付いたことは注意を促し、パパも私のいけないところは注意するようにし、お互いに注意しながら、15日は長男とたくさん遊びました。
その一日だけでも長男は別人のように、明るくなったように見えました。

そしていよいよ長男を送り出す日がやってきました。
少し不安そうにしている長男に、園長先生に言われた通りに言いました。
幼稚園に行くと、担任の先生やクラスの子たちが出迎えてくれて、園長先生も声をかけてくださいました。
その日から毎日担任の先生は出来る限り長男の園での様子を私に話してくれます。園長先生も毎朝長男に声をかけてくれています。
ただ不信感を抱いているより、嫌な保護者になったとしても、とことん先生方と話し合ってこそ信頼して子供を預けることが出来るんだと思いました。
そして何より、長男が心のサインを表してくれて本当に良かった。
私たちの子育てを見直すいい機会になりました。
あれから長男は、時々幼稚園を嫌がりながらもなんとか通っています。
嫌がっても、私の励ましや、長女の無邪気な振る舞いによって、気持ちが明るくなるようです。
叩いていた子は、相変わらずまだいろんなお友達を叩いているそうです。
長男の登園拒否は、まだ完全に直ったわけではありません。
まだまだ油断大敵です。
でも安心しきってしまうより、少し心配しながらの方が私にはいい薬になります。