長男が幼稚園年長さんの2学期が始まってすぐ、あるお母さんから習い事に誘われた。
長男5歳8ヶ月、それまで何一つ習い事はしていなかった。
ピアノ、学研、公文、英語、音楽教室、スイミング、体操と、長男が興味を示すたびにいろいろと検討してきたものの、なかなか通わせるまでには至らなかった。
赤ちゃんの頃は、「子供が行きたい」って言うまで待とう。その代わり、行きたいと言ったことは絶対やらせてあげよう」と私は夢のようにそう思っていた。
そう、それは夢だった。
長男は幼稚園に入ってから、まず英語教室に行きたいと言った。
その頃仲良しの子が通っていたから。
その次は体操教室。これもまた別の仲良しの子が通っていたから。
検討した結果、そのどちらも行くことはなかった。
「子供が行きたいと言っているのだから・・・」と私はそのたびに心を動かされはしたものの、どれもパパのお許しが得られなかったのは大きい。
パパはコストパフォーマンスをとても重視するのだ。
週一回のお稽古事で身に付くのか? しかも結構なお金を払って。
月○千円、一回につきいくら、金額に見合った内容なのか?
相場と言えばそこまでだけど、わが家の家計事情は決して楽ではない。
それまでパパの厳しい「コストパフォーマンスチェック」に阻まれ、それまで長男の習い事とは縁がなかったのだ。
話を元に戻そう。
長男と同じクラスの仲良くしている男の子のお母さんが、「これから始めるんだけど、男の子が少ないから良かったら一緒に始めない?」と誘ってくれたのだ。
それは「こうひつ」。
週一回で月1500円はリーズナブル。
パパも「字はきれいな方が得だ」と賛成してくれたのだ。
長男も行きたいというので即決まった。
最初の2,3回は待ちきれない様子だった。
でも、長男が通うこうひつは宿題が出るのだ。しかも4ページくらい。多いときは5ページも。
一日1ページやらせても4、5日かかるという、幼稚園児には結構キツイ。
最初の頃は毎日宿題に誘うのが嫌で、長男のやる気のあるときになるべく多く進むように色々な手を使って宿題をやらせた。
まずは誉める作戦。
長男が字を書くたびに、「先生とそっくりに書けたねー」と大げさに驚いてみせる。
その手も何週間かで効き目が無くなった。
今度はサイコロ作戦。
すごろくの要領で、サイコロを振って出た目の数だけ書いていき、それを何度も繰り返す。
これは長男はお気に入りで、うまくいった方である。
「この子は小学校になっても宿題をすぐにしないタイプかも・・・宿題させるの手こずりそうだなぁ」とちょっと先を見据えて落ち込みもしながら(笑)
2ヶ月を過ぎた頃、長男が軽い肺炎と診断され、3週間ほど休んだあたりから長男の様子が変わった。
行く直前になると、「行きたくない」と泣き出すようになったのだ。
幼稚園と違って親がこうひつの先生とお話しする機会はほとんどない。
小学生も一緒にするだけあって先生は厳しい時もあるらしい。
私は挨拶しかしたことがなく、幼稚園の先生みたいに気さくに優しく話すタイプでもなさそうな印象を受けていた。
そんな先生に慣れていない幼稚園児にはキツイのかもしれない。
その先生は、仕事の傍ら週1,2回こうしつとお習字を子供達に教えているようで、入会金なども取らずに電話一本で生徒を受け入れているらしい。
休むときも特に連絡をしなくていい。
誘ってくれたお母さんは先生とお知り合いだったようで、長男が入ることはそのお母さんが話してくれただけで、私は一度も面識も電話でさえもお話ししたことがないまま長男を通わせていたのだ。
でもそれが幸いした。やめようにも先生の連絡先さえ私は知らなかったのだ。
連絡先がわかったとしても、いきなりやめる電話なんて私にはとても勇気がない。まして始めてたった3ヶ月でやめるなんて恥ずかしいというか、怒られそうな気さえしたから。
長男には、「じゃあせめて3月までがんばろう」と励まし続けた。
「せっかく始めたんだから続けてみようよ」と言いながら、私がやめる電話をしたくなかっただけのことだった(笑)
毎回嫌がる長男に、ある日私もとうとう長男の前で泣き出してしまった。
長男は私の涙に驚き、ハッと我に返ったかのように、それから長男は「行かない」とは言わなくなった。
でも、こうしつの間中外で待っててという条件を出してきた。
家から車で2分ほどの所だから終わってから迎えに来てもいいはずなのに、しばらくは長男の言うとおり待った。(本当は時間を見計らって前で待っていたんでけど)
そのうち寒いからと車の中で待つことを許してもらい、一度家に帰るけどすごく早めに来て車で待ってるからと徐々に条件を緩めてもらった。
幸い、その教室は日曜日の朝がほとんどなのでパパに長女を預け、車の中で漫画の本や子育ての本、通販のカタログなどを見ながら待つことが出来るのだ。
その時間がいつの間にか私のお気に入りの時間になっている。
ゆっくり本を読める時間なんてなかなかない。一人の時間が持てた気がしてなかなか好きなのだ。
そして長男は小学生になり、4月になってもやめずに続けている。
2年生からは自動的にお習字になるので楽しみにしている。
愛想がなさそうな先生とも時々しゃべっているみたいだし、宿題も一日1ページをほぼ守っている。
時には「今日はしたくない。明日2ページするから・・・」と言う長男の申し出も信じて受け入れられるようになった。
ではこうひつの成果はというと・・・
長男はもともと文字に興味があってひらがなをよく書いていたけど、先生に習うと全く違う。
止める、はらうが全然違うし、うまく書ける分一年生になってこくごの時間も楽しいような気もする。
ただ、こうひつに通わなくてもこくごの授業で教えてくれるのでご安心を。
例えば、こうひつの教室ではいまいちうまく書けなかった字が、学校の先生のアドバイスですぐうまく書けるようになったこともある。
私の字にまでケチをつけるようになった長男が、こうひつだけのおかげではないこともお知らせしておこう。
長女は宿題のある長男が羨ましくてたまらないらしく、まだうまく書けないひらがなを絵でも描くかのようにマネをしている。
長男がひらがなを書き始めたときは親ばか丸出しで、「すごーいっ」と思っていたけど、いずれきちんと習うなら勝手に覚えずにその時になって正しく書けるようになればいいと思うようになり、長女には「まだやらなくていいよ」と言ってしまう(笑)
長女が幼稚園に入って落ち着いたら、そのうち長女念願のこうひつに行かせるつもりでいる。
行きたがっていた長女もきっと「行くの嫌だ」と言う時期は必ずあるだろう。
またいろんな作戦を考えなければ(笑)
そして長男の習い事が増えるときがやってきた。一年生になった5月、私はある提案をした。
「そろばん教室に行ってみない?」
実はこれは幼稚園の年長さんになった頃から何度となく長男に言ってきたのだが、こうひつを選び、こうひつ通いの辛さか決して行くとは言わなかった。
小さい頃から数字に異常なまでの興味を示していた長男にそろばんは向いているような気がしたのも理由の一つ。
おしゃべりするのは遅かったのに、大好きな車のナンバープレートを何台も覚えてしまうのをそろばんにいかせないかと思ったのだ(笑)
一度は「今日からお願いします」と電話までしていたのに、行く直前になって長男が嫌だと言いだしキャンセルしたこともある。
でも一年生になった長男がやる気に満ちあふれている感じだったのを見て、長男にもう一度そろばんを勧めてみたのだ。
この日は長男が2度目に「うん、行く」と言った。
「じゃあ、学校が終わってからまた聞くからね」と私は長男に言った。
いつまた気が変わると思うと、教室には電話もせずに長男の帰りを待った。
帰ってきた長男に最終確認をすると、「行くよ」と言ったので慌てて電話をして初日を迎えたのだ。
何故そろばんかというと、私が高校時代に通ったそろばん塾に行かせてみたかったのもこれまた理由の一つ。
私は小学生の頃、母にそろばんを教えてもらった。好きですぐに覚えた。田舎だから塾もなかったし。
そして田舎から出てきた高校時代に通い、残念ながら1級までに少し届かなかったけど、2級まで取れた。
その頃は簡単な暗算も手を動かすだけで出来たのだ。
長男にも、お勉強に関係なく、暗算ができたら便利だろうなぁというくらいの気持ちで通わせてみたかったのだ。
そろばんもパパのお許しはすぐにもらえた。
月謝は他の習い事と変わらないけど、週3回なので単価にすると安い(笑)
私が通っていた頃の先生がそのままだったのには笑ってしまったくらい。私のことも覚えていてくれた。
家族でそろばん塾と進学塾をやっていて、私が習った先生は多分高校時代に20代後半だったと思う。
その頃はものすごく大人に見えて、ちょっとおじさんだとさえ思っていたけど、今考えると10歳も違わない先生だったんだなぁ。
全問正解したときに書いてくれるキティちゃんの絵まで同じなのだ。
教室の雰囲気も、先生の厳しくおもしろい所も変わっていないことに安心して長男を通わせられると思った。
通い始めて間もないけど、今のところ長男はそれほど嫌がらずに通っている。
学校の宿題でもさんすうのプリントの時はさりげなく机に置くだけでいつの間にかやってるという、数字好きはやはりそろばん向きだと私は勝手に解釈している。
これで週4日も習い事・・・ もう限界だと思っていた矢先、大変な事態が・・・
長男がスイミングに通いたいと言い出したのだ。
実はそろばんに行く前、「そろばんかスイミングかどっちか行こうよ」と誘ったら、即答「そろばん」と答えたので決まったことだった。
しかも長男は「スイミング」どころか顔に水がかかるのが嫌で、幼稚園のプール遊びもほとんどやっていない。
自分で顔を洗うこともできないのに・・・
私もパパも始めは冗談かと思った。でも長男の意志は思った以上に堅かった。
「どうして行きたいと思ったの?」と聞いた私たちに、「だって泳げるようになりたいから・・・」と言った長男の意見を尊重することにした。
うまくならなくていいから、自分の命を守れる程度になればいいかと通わせることにした。
コストパフォーマンスは・・・ 納得いってる訳じゃないけど、温水プールの維持費とインストラクターの人数を考えるとまぁ納得かな?(笑)
でも長男のやる気は数回ともたなかった。
いきなりの顔付けが嫌で休みたがるようになったのだ。
私もパパも早く長男が顔をつけられるようにとお風呂で潜って見せたり顔付けの練習をやらせて長男の頑張りに喜び誉めていた。
でも私たちは少し急ぎすぎたようだ。
長男は「潜るのが嫌だからスイミング行かない」と言い出したのだ。
私は反省し長男にこう言った。
「じゃあ無理に潜らなくていいよ。今日は潜らなくていいよ。先生に潜れませんって言えばいいからね。パパもママもちょっと急ぎすぎたね。できないことはできなくていいんだよ」
長男は納得し、絶対潜らないと心に誓ったかのようにその日のレッスンに行った。
いつもはゴーグルをつけるのに、みんなが潜り始めてもゴーグルをつけようとしない長男。これは意志が固そうだ。
「ゴーグルつけて」と言う先生に、「潜れません!」と言い切ってる。何度も。
先生はわかったという感じで長男にゴーグルをつけさせ、他の子とは少し違うことを始めた。
先生が水中で指を何本立てたか長男に当てさせるのだ。
長男は先生にうまくのせられ、あんなに潜らないと決めたはずなのに先生のクイズに何度も答えてるのだ(笑)
長男はその日、「おもしろかった」とプールから出てきた。
それからはそれほど嫌がりはしない。私はお風呂での特訓もやめてプロであるコーチに全てお任せしている。
きっと顔付けできないのは長男だけではないはず、それを乗り越えた子供達をコーチは今まで何人も見てきたはずだと気楽に信じることにしている。
幼稚園時代にはほとんど習い事をしなかったわが家にもとうとう習い事通いの日々がやってきたのである。
子供も大変だけど親も大変。
お金がかかるのはもちろん、送り迎えに時間を取られることもある。
おかげで携帯電話さえ持っていなかった私もiモードを買った。さらなる出費だったけど長男の習い事で家を空けることが増えたのでやはりあると便利。
習い事に通うに当たって、パパにも協力を求めている。
習い事がない日はなるべくサイクリングに出かけたりしてパパも気をつけているようである。
忙しくなった長男との時間を大切にしたいと思うようになった。
長男はまだまだやりたいことがたくさんあるし、私もパパも時間がもっとあるなら長男のやりたいことは応援したい。
きっと今の時期が長男のやりたいことがあふれている時期なんだと思う。
その時期は一人一人みんな違っていて、一概に遅いとか早いとかは言えないと思う。
今思うと、そろばんより先にスイミングを選んでいたら、そろばんはさせていなかったと思う。
運が良かったのか悪かったのか・・・
習い事がたくさんできるのは低学年のうちだけかもしれない。
少年サッカーや少年野球を始めたらとてもじゃないけどこんなにできないはずだ。
友達と遊ぶのもまだあまりない低学年のうちだけだけかもしれない。
私は決して教育ママではないし、将来スポーツ選手にしたいとかも考えていない。
とりあえず今は長男のやる気を大切にしてやりたい。
習い事を通して、続けていくことの大変さ、大切さがわかるだけでもいいと思う。
私の実家の母は60を過ぎてるけど、踊り、パソコン教室、社交ダンスと習い事を次々と始めている。
昔から色々なことに凝ってきた人だけど、それは今の長男のパワーに似ている。
長男と母を見ていると、私も負けずに何かやってみようとさえ思えてくる。
もちろん、コストパフォーマンスも考えながら(笑)