アストローナ暦170年 5月
レジスタンス本部より返事をもらった。どうやら、オレ達の旅に同行してくれると言う仲間が3人も居たという。 シーフの弥都波、クレリックのしーな、そして機械兵のDDという3人だ。しかも、弥都波としーなは、同じこのルシアールのレジスタンスに居るという。
翌日、早速、弥都波としーなと会うことにした。会ってみると、二人とも驚くほどに若い女の子だった。そして、二人とも可愛いなと、素直に感じた。
弥都波はいかにも元気な女の子といった様子だ、年齢は20歳より少し前と言った所だろう。彼女の持つ変わった武器が気になり、聞いてみるとある特殊な武器で、射程はかなり広いのだという、初めて見るものだ。
しーなはこれが本名では無いらしいが、名前以外にもあまり多くは語らない、物静かな娘だった。年齢は弥都波と同じくらいか若干下だと思う。17くらいだろうか? 寡黙で真面目そうなクレリックらしい雰囲気を感じる。
二人とも、オレ達の旅に同行してくれることに快諾してもらえた。もしかすると、彼女らも何かディアス国に対して因縁が有るのだろうか、と根拠はないがどこかそう感じた。
あと残る仲間はDDだ。彼はアレンのレジスタンスからの紹介らしい。フェルの街で待ちあわせをする、と連絡には有った。4人パーティとなったオレ達は、DDと会うため、フェルの街へと向かうことにした。
アストローナ暦170年 6月
あと残る仲間は機械兵のDDと名乗る男だ、オレもこの通り名以外、彼については何も知らない。オレ達は、彼との待ち合わせ場所であるフェルに向かうことにした。
フェルに行くには、この大陸のメインストリートを通れば良いので道に迷う心配は無いだろう。しかしその反面、おたずねものや野盗まがいの連中が頻繁に出没する事で有名な道でもある。自然とパーティに緊張が高まる。何事も無ければ良いが・・・
ルシアールを出発して2日目、モンスターと遭遇した。ドリアード、ウォーム、ボーグルが1匹ずつ。割とよく見かける基本的なモンスター達だ。みんなの技がモンスターに炸裂する!オレ達に襲いかかったのが運の尽きだぜ、悪く思うなよ。この戦いでのMVPはオレの見た限りではセレーネだろうか。特に大きな傷を負うこともなく、勝利した。
ルシアールを出発して一週間、再びモンスターと遭遇した。オーク、スケルトン、ヒートバタフライだ。オークとヒートバタフライはともかく、スケルトンは・・・今のオレ達では正直、一人一人の力では勝てるかどうか自信はない、厄介な相手だ。 まずはオレとしーながスケルトンの相手を、弥都波とセレーネがオークとドリアードと闘う構図となった。 まずはオレの攻撃!スケルトンに斬りかかる・・・ダメだ、全く効果は無いよだ、やはりオレには無理なのか?更にしーながスケルトンに攻撃、しかし、これも効いた気配はない。バランスを崩したしーなにスケルトンの斬撃が!
辛うじてしてしーなをスケルトンの攻撃からガード、さらに不意をついてスケルトンにカウンターをお見舞いする。やった!これはさすがに効いた様子だ。 自然にオレとスケルトンが向かい合い、みんなにオークとドリアードを任せる陣形へと変化した。 オレは猛然と連続でスケルトンに斬りかかる・・が、ダメだ、全く効果はない。それどころかその隙に逆に手痛いダメージを被る。まずい、このままでは・・・
その時、突然スケルトンに氷が襲いかかり、スケルトンがひるむ。セレーネの烈氷陣だ。どうやら、みんな無事に他のモンスターを片づけたらしい。更に、オレの体を暖かい光が包む、しーなの回復魔法だ、助かったぜ! 弥都波が攻撃をスケルトンに叩き込み、セレーネが魔法でそれを援護している。・・・と、突然、スケルトンが苦痛の表情を浮かべ、倒れて動かなくなった。 スケルトンの足下を見ると、いつのまに仕掛けたのか、弥都波のトラップが有った。なるほど・・・二人とも攻撃しながらこのトラップへとスケルトンを誘導していたらしい、見事な連携攻撃にオレは見ている事しか出来なかった・・・。今回のMVPは弥都波だと思う。
もっと強くならなければ・・・
フェルまでは地図によるとあと半分といったところだろうか。もうDDは街で待っている頃だろう、急がなければ。
アストローナ暦170年 7月
何事も無く、オレ達はフェルの街に着くことができた。 着いたのは夜のとばりが降り始めた頃だったが、それでもにぎわいを見せる大通りが見える。第一印象はなかなか活気の有る街だと思った。どうやらこの大陸の中央を流れる大河を利用して盛んに貿易が行われているらしく、様々な人々がメインストリートを歩き、その両側には露店が所狭しと建ち並び国際色豊かな品物が並んでいた。 だが、途中、傭兵風の男とすれ違った。満身創痍といった風貌で、至る所に包帯が巻かれている・・・戦争の影響だろうか? とりあえず、俺達は宿を確保してこの街でDDという男を探すために逗留する事を決めた。 旅支度はもちろんだが、これほどの流通の栄えた街ならば何か良い武器や防具がみつかるかもしれない。
アストローナ暦170年 8月
フェルに着いた翌日・・・、DDとの待ち合わせの時間までは自由行動にする事にした。しーなはこの街の教会に用があると朝早くから出かけている。セレーネは宿で留守番して居ると言っていた。オレはしーなに装備を見繕っておくように頼まれていたので、弥都波を誘って市場に足を運んでみた。商業の発展した街だけあり、さすがに良い武器や防具が目に付く・・・が、オレ達の所持金ではとてもでは無いが手が出るような物ではなく、仕方なくオレ達は食料品の買いだしだけを済ませると後は適当に街を散策し宿に戻ることにした。
その夜、オレ達は4人で、街のある一角の酒場へと足を運んだ。ここがレジスタンスから話に有ったDDと会う約束の場所である。足を踏み入れた途端、酒場独特の匂いが立ちこめている。僧侶職のしーなにとっては少々苦手そうな場所だと内心思い、苦笑した。 辺りを見回してみると、冒険者のパーティらしい集団や異国風の剣士の姿や、酒場の娘にうるさく言い寄るいかにも遊び人風の派手な服装の者が居るのが目に入る。
オレ達はとりあえず手近な空いているテーブルに陣取りマスターにそれぞれ注文をする。そして「マスター、フェルにはまだ狐は居るのかい?」と小声で訪ねる、「森の方にはまだ居るよ」とだけ答え、奥に引っ込んでいく。レジスタンスで聞いた合い言葉通りの答えが返って来た、やはりこの酒場に間違いないと確認して再び店を見回してみる、どれがDDだろうか・・・。しばらくして注文が来た時、マスターがカウンターに居る男がDDだと教えてくれた、そして「とっととあの男を連れていってくれないか」とも・・・、オレはDDという男が予想より遥かにかけ離れた人物で有る事実を知り、言葉を失った。さっきから店の奥でうるさく娘に言い寄っていた男がDDだった。
向こうもオレ達に気付いたのか、DDらしい男がオレ達のテーブルに近寄ってきた。「よお、このテーブルは華やかだな、俺も混ぜてくれない?」とおどけた調子で話し掛けてきて、こちらが返答する前にはすでにテーブルに座っていた。外見からはオレより幾分年は上だろう、細身のいかにも伊達男といった感じで、真っ白のスーツ上下に同色のパナマ帽、中には赤いYシャツを着こんでおりどう見ても冒険者という風貌には見えない。「やっ、俺はDirtyDragonって言うんだ、DDって呼んでくれ。よろしくなお嬢さん方・・とそこの兄ちゃん。」 オレ達は一通り自己紹介を済ませたが、その間もDDはあまり興味はなさそうだ、他の仲間の表情にも怪訝そうな雰囲気が伺える。おそらく皆もこの男を掴みかねているのだろうと思った。しかも、先ほどの酒場の娘に声をかけたりしている。
「お前、本気でディア・・・奴らと戦う気があるのか!?」 思わず声を荒げてオレはDDに言った。
「ま、死なない程度にテキトーにはな」 と、首をすくめてDDはおどけて答える。
「……お前はっ!」
「約束を果たすまでは…死ねないさ……」
真剣な眼差しでDDはオレの言葉を遮り答える。その時のDDの瞳を見たとき、オレは言葉が続かなかった。オレはふと思った、『この男の瞳はどこかしらオレに似た”何か”宿している』と。