2000.4.30

(今日は主人公は「」。)
僕が前田真三さんの作品と初めて出遭ったのはS63年の夏のことである。
僕は職場の人達と、上高地旅行に出掛けた。
初めて訪れた上高地の梓川の清流と穂高。山を知らない僕だってひとめで虜になってしまった。
僕が知っている、北海道の自然よりもきれいな風景だった。
素直にそう思った。
カメラを持っていなかった僕はその時、自分へ絵はがきのお土産を買った。

時間は半年ほど流れて、僕は北海道の真ん中で働いていた。
店には丘に立つポプラのテレホンカードが売られていた。
一緒に働いていた先輩女性が「それって○○さんの写真よね。」と、話してくれた。
誰の名前を言ったのかは聞き取れなかった。

いつの事だったろう。僕が○○さんが「前田真三」さんだと気が付いたのは。
多分、道産子といっても道南しか知らなかった僕が、
道央を知るために買ったガイドブックでかも知れない。
いつか拓真館に
それが僕の夢になった。

ある雨上がりの日に、僕は愛犬プリンとドライブに出た。
目的地は美瑛町。美馬牛目指して車を走らせた。
美馬牛の駅から拓真館までの曲がりくねった道を勘と看板とで何とかたどり着くことが出来た。
季節はずれのためか、観光客は多くはなかった。
小心者の僕は自分の上着の中にプリンを入れて建物の中に入っていった。

コーヒーのいい匂いがした
明るいきれいなポピーが僕を出迎え、愛すべき北海道の景色が目の前に広がっていた。
階段を上り、一通りの作品を見て回ってから僕は庭に出て、
プリンと一緒に白樺の回廊を散歩した。

それから何年かの月日がまた経ち、僕は今度は札幌で資格を取るために働きながら学校に行っていた。
中富良野の出身の方が「今度遊びにおいで。」と誘ってくれた。
四人で電車を乗り継いで僕たちは富良野へと向かった。
中富良野の富田ファームの近くの売店でポストカードを売っており、
迷わず僕は前田さんの写真を選んだ。
そして気づいた。
S63年に上高地で買ったものとレイアウトがそっくりであることを。
家に戻り、上高地のポストカードを探した。そして僕は、やっとそれも前田さんの作品であったことに気が付いた。

病気に落ち込む患者さんの気持ちを和ませられればと、前田さんの写真集を送り、
希望に胸ふくらませる別れゆく人には「春の大地」という写真集を送った。
僕自身、何かに疲れたときには故郷を思い出すように、前田さんの写真集をめくっている。

トップに戻る

前回までの話に戻る